世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
「いやー、黒髭どこにいるのかなぁ…?」
「さぁ…?」
波に揺られて船が進む。狙いの海賊船の為に前進する中、立香が質問してきた。
「あと、気のせいならいいんだけど…必要以上にドレイクさんのこと警戒してる?」
鋭い。想像よりも速いタイミングで聞いてきたことから彼女の思考能力を少しだけ上方修正して辺りを確認する。
(別にまぁ聞かれても構わないっちゃ構わないんだけどね…マシュが今いない以上、ちょっと無茶をするのは急ぎすぎかな)
誰もいないことを確認してから立香の質問に答える。
「うん。能力以外は基本的に警戒してる」
「あっさり認めちゃうんだ…なんで?」
「っと、それを話すなら世界史だね。立香にゃわかんないかもよ?」
「私だってちゃんと勉強してるから。どんな問題でもバッチこいだよ」
少しだけ軽口を叩いてから、コートを破って切れ端に爪で簡易的な世界地図を書く。学生としてこういう話も悪くない。
「単純な話だけどさ、今って1573年くらいじゃん」
「大航海時代だよね。世界一周のあたりだから…こしょうとか求めて向かってたんだっけ」
「そ。最初に思いつくのがコロンブス。彼は結果としてアメリカ大陸を見つけたけれど、インドの航路を目指して進んでいったんだ」
アメリカ大陸とスペインの間に爪で線を引く。ここがコロンブスの航路だ。
「それで、ええと…インドのほうはカエルみたいな人が見つけたんだっけ?」
「ポルトガルのバスコ・ダ・ガマだね。大航海時代の中だとコロンブスより先なんだけど…よくも悪くもコロンブスより逸話が少ないからね」
ため息をつきながらポルトガルからインドまでうにょうにょとした線を書く。
「当時の船は一日の航行距離も決まってるし、こうやって細かく沿岸に寄っていた。病気にかかった瞬間隔離して燃やす感じだから一々命懸けだね」
「ふえぇ…そんな恐ろしかったんだ…」
「ワンピースとかそこらへん読むとよくわかるよ。80巻までならちゃんと海賊の勉強にはなる─少し話が逸れた」
トントン、と指でよりかかっている手すりを叩く。
「じゃあここで問題。フランシス・ドレイクは世界一周を初めて成し遂げた人物である─これは、ドクターからも言われていることだ」
「そうだよね」
「しかし世界史では大航海時代ではマゼランのほうが世界一周と聞かれた際に出てくる。なんでドレイクは教科書にいなかったんだと思う?」
うーんと首を傾げながら悩む立香。ここテストに出てたか覚えてないけど聞かれがちじゃないかな。
「……わかんないや!フーくん答えちょうだい!」
「はいはい。結論から言えば、『計画を最初に立てたのはマゼラン』だ。ただしその世界一周をしている最中で本人は死んでしまった」
「生きて世界一周を達成した初めての人がドレイクさん…ってことかぁ…」
納得したかのように空を見上げる立香。すぐにハッとした表情に戻ると、こちら側に顔を近づけてきた。
「…でもフーくんがドレイクさんを警戒する理由にはならないよね?」
「バレた?」
「フーくんがごまかすときは大体それっぽい知識で煙に巻くって知ってるもん」
「騙されなかったか…」
切れ端を裏にして図を書き直す。アフリカ大陸とアメリカ大陸とヨーロッパ─随分と簡易的に書いたが間違って考えることはない。
「まぁフランシス・ドレイクを警戒している理由はもっと単純だよ」
「単純?」
「実のところ、彼女の人柄やら能力に関しては間違いなく一級品であることに疑いはないんだ」
一旦口を閉じて喋るのを止める。間髪入れずに話し続けると彼女がパンクしてしまうから。
「現代なら昔の制度って言ってしまえば簡単なんだけどさ、俺らのいる特異点の環境じゃそれが常識なんだ。実際に価値のある立香やマシュは狙われているし」
「え、ちょっと待って、うしろ!砲弾、砲弾!」
「俺が彼女を警戒しなきゃいけない理由、それは─」
口を開こうとした瞬間、横から砲弾。ノールックで風香は蹴り返して海上へと水柱が立った。
「…話の途中だが海賊船だな。しかもお目当ての黒髭」
文字をそのまま書き連ねて立香へと渡す。ついでにタロットで補強しようとしたら止められた。
「他人に引かせちゃダメなんでしょ?」
「俺が引く分には制御できるし…そもそもあんなデカさで聖杯出てくるのは想定外だし…」
「てことは聖杯出るのは想定内ってこと?」
「………」
ヒュッとカードが風を切る。当たったのは『死神』の『正位置』。意味は区切り、覚悟…よしちょうどいいや。
「無言でタロット引かない!というか声出さなくてもやっぱり使えるじゃんそれ!」
「しょうがないじゃん、強いんだから…ってか俺のサーヴァントとして進化したのって身体能力とこのタロット効果くらいだよ?」
「充分だからね?」
「まあいっちょやってきますかぁ。立香は大人しくここで待ってて」
望遠鏡を覗いている敵船へと向けてゆっくりと手を掲げた。
「ねぇ、ちょっと…っていない!?」
それだけで─俺の姿は立香から見えなくなった。
「野郎ども!総員戦闘の準備しろ!」
エドワードの船では既に砲撃後から戦闘態勢へと入っていた。本来ならいたはずのアルテミスやオリオンがいないせいか、どことなく考えに余裕が産まれている。
(BBAに興味はないからとっととエウリュアレちゃんの顔を拝みに行きたいものですなぁwデュフフw…あぁ、あと警戒するべきなのはあの白コートだな)
ちょうど視界に入ってきた白いそれを見て思い出し─瞬間、叫び始めた。
「来るぞオマエラ!サーヴァントだ!」
周辺に散開されて殺す目論見が外れる。仕方がないので安全に着地することを彼は目標にした。
「…ったく、行動が速すぎない?別にまぁいいことなんだけど…」
銃が当たらないように雷光を纏いながら甲板に降り立つ。そのままフードを被ったまま、目の前の黒髭に宣戦布告。
「聖杯、奪いに来たよ。…白髪のロリだったら譲ってくれてた?」
「拙者、そんなジト目ロリがいたら一緒にアバンチュールでもしたいものですなぁwもしかして降参したらやらせてくれる?」
「そんなわけないでしょ、エドワード。そもそもメアリーがいるじゃない」
「そう。僕ならそこのマスターのお願いなら何度でもきいたげる。…いや、僕たちだね」
「ええ。わたくしも望まれるならこの体を捧げる覚悟は出来てますの」
カトラスをダランと垂れ下げるその姿は、少なからず敵意のないように見受けられた。そして風香も正体を察する。
(だからどうした、って話なんだけどな)
笑みを浮かべずに使っていた武器を取り出す。シンプルな双剣─その威力に関して二人は文字通り知っていた。
「色男はムカつきますなwwwとっとと答えてくれよガキンチョ」
「…あえて言ってやるよ」
風香は三人に向けて宣言する。エドワードは知らないだろうが、おそらくは2周目の彼女たちは聞いたことがある言葉。
「奪えるもんなら奪ってみろ。
笑いながら構えて突進。メアリーのカトラスを捉えて鍔迫り合い。
「そうだね─勝ったらずーっと僕たちのもの。負けちゃった僕たちにもチャンスを与えるなんて、優しいんだね」
「アホか。寝過ぎて寝言を言うようになったのか?」
メアリーの重心を崩してからアンとエドワードの銃弾を弾く。即座に後ろから突き刺そうとするヘクトールの不意打ちを同士討ちの形となるように避けていく。
「生け捕りになりたきゃいつでも言いなぁ!拙者、それなりに本気出すでござるよ!」
「へっ、やってみせろよ…!」
アンとメアリーは知っている。彼がどんな旅路を辿ってきたかを。
彼は間違いなくこちらを殺せるだろう─だからといって、挑まない理由がない。
「「覚悟してね。マスター!」」
サーヴァント複数を前にしながら、なおも彼は笑った。
どちらに軍配が上がったかは─言うまでもないだろう。
小話:風香は元からこんな風にサーヴァントと戦ってたわけじゃないです。オルレアンまでは普通にサーヴァントを駆使してました。
セプテムからはもう前線に普通に立ってマシュを救出しようとかやってた。まともな人じゃなくても救いに行かなきゃいけないって虚しいよね。