世界を救え?できらぁ!   作:星5すり抜けとNTRは悪い文明

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追記:誤字修正しました。上梨 ツイナさんありがとうございます。


第12話

 

悪魔のカードで呼ばれたサーヴァントのアテシは、そのあとちょくちょくリリンを適当に飛ばしたりマスター本人の感情をふんわりと読んで大体のことを把握していた。

 

「死神…新たな可能性、あるいは区切り。アテシにはちょうどいい合図だったわけだ」

 

あのトーヘンボクなマスターに人の心はわかるまい。わかるなら悪魔のカードを引いたタイミングでアテシの名前を呼ぶからだ。

 

(いやまぁ、なんとなーく呼ぼうとしてた気がするんだけどね?『修羅場になるから避けよう』って甘い考えはもう通じないってわかってんでしょ?)

 

そもそもアテシみたいな聞き分けの良さを他のサーヴァントに期待するのは無理だ。

片方は見た目に反してめっちゃ頭いいし、もう片方は見た目に反してめちゃくちゃ甘やかそうとしてた。

 

アテシが要領良くまとめてたことにマスターは気づいてたみたいだし、いっぱい褒めてくれたのは嬉しかったけど。

 

「さてさてさぁて、アテシをわざわざ呼んだ理由は簡単だよね。いつもやってたことだし」

 

ぐいーっと上方向に伸びをしてから標的(ターゲット)を確認する。顕現してからずっと見ていた顔だ─間違えて他の人を守るなんてヘマもしない。

 

(そりゃまあ、中に絡みついてたし?アテシの野良状態とも意識を接続したから当然のことなんだけどサ?)

 

後ろにトタッと着地。わざわざ空の見える場所で待ってくれていたから堂々と翼を使える。

 

「はぁい、立香ちゃん。バーサーカーのアテシが味方しに来たよん♪」

 

「誰!?」

 

そりゃそっか、と思いながら前の世界にはいなかった彼女を見る。純粋なのはわかっていたけど、どうにも魂の形がマスターに似てる。

 

(守りたいからって隠してる札(アテシ)をあっさり切ったのはダメなんじゃないかな、マスター?)

 

それでピンチになったことのないマスターだからこそそうしているのかもしれない。ある意味では楽観的、ある意味では間違いない強さ。

 

『ちょっと風香…ってもう肝心なときにいないじゃない!』

 

『というかよく見たら黒髭と戦闘…ってか若干押してる!?特異点解決しようとしたからレフからの刺客が来たのか?ごめん管制室でも混乱してる!』

 

ひゅう、っと口笛を吹いてしまった。マスターに呼ばれたと思ったから会いに来たというのにいないのだもん。予想外なのはこっちもだ、と言っても話は進まないだろう。

 

(この海でキリエライト救ったときは違かったじゃん!せめてこっちに相談しろってんだ、けっ)

 

まぁ彼からしてみりゃアテシが来ていることが予想外なんだろうけどね。

体は繋がってない清く健全なお付き合い。ちゃんと墓まで一緒に入ったからには少しくらいついてきてくれるかもなって期待してもいいんじゃないかな?

 

『戸惑ってないでとっとと喋りなさい!』

 

聞いたことのない声。しかも職員の嬌声を無理矢理照合しても多分合わない─知らない人間の声。

 

(もしかしたら知らない信用できる人なのかねー…でもマスターが増やすとは思えないし…)

 

もしやアレか?女の子みたいな顔と見た目と声なのに男とかいうタイプだからアテシが知らないとかそんな感じ?

 

ともかく会ってから判断、と結論を出しながらハサミの上に腰かける。射線通ってるけど問題なーし、回避はもうつけてる。

 

「あのー、アテシ人理修復の味方って言ったら信じてくれる?」

 

『なんで人理修復知ってるのかしら!?てことは敵?敵?敵でいいのね?』

 

「凄い混乱してる…とりあえず、話を聞いてもいい?」

 

「オッケイ。ちゃんと話が通じないとアテシのマスターにも怒られちゃうからねー」

 

『なんかものすっごい怪しいんだけど倒したほうが…あ、ダメだ立香ちゃん!このサーヴァントなんかグランドサーヴァントと変わんない霊基になってる!』

 

アテシがマスターと旅をしていたときよりもずいぶん成長したかもね。もしかしたら最初から成長してたけど、気づけてなかったとか?

 

(ま、気にすることでもないかなぁ。アテシが強くなってるのはマスターのタロットのお陰もあるし)

 

思考を打ち切って目の前の彼女に軽く言い放つ。

 

「てことで立香ちゃん、奴隷になりたくなかったらとっととこの船脱出しよ☆」

 

「…え?」

 

「ちょっと待ってマジでマスターなにやってんだろ?」

 

さてはあのマスター、自分だけで終わると踏んで前回の説明なんにもしてないだろうね。一人でしょい込むのが一番ダメだから三人でやろーって言った話忘れてるんかな。

 

(あーもしかして前回の時との状況が違いすぎたのかな)

 

ちょーっと計画修正とかのレベルじゃないミス多すぎない?アテシたちに対するよりは軽い感情だからってどこまで信用してないの?

 

「…えー、ちょっとタンマってあり?」

 

「いいけど…?」

 

『所長がわけがわからなさすぎて倒れた!グランドのサーヴァントだから誰なのかとかわかってないからしょうがないんだけど!』

 

「わーわー大変なことなってら。原因は間違いなくトーヘンボクマスターのせいだけど」

 

困ってるけど流石にマスターの特徴まで出せば納得してくれるっしょ。

 

今んところ原因は間違いなくあのマスターの情報共有不足。徹底的なワンマンで特異点解決してたことが裏目に出てら。

 

「…とりあえずさ、タロット使うマスターって言えば依頼主わかる?」

 

「じゃあフーくんだね」

 

「ヨシ!てなわけで詳しい説明を吐かせにゴーゴー!…ということで船はこちら!船酔いキツイかもしんないから気をつけてね!」

 

ということで用意したのはアテシの嵐にたまたま引っかかった哀れな海賊船。既に持っていた聖杯のリソースを使ってクルーズ船にまで改造してあるよん。

 

『ねぇまた聖杯の気配が観測されてるんだけど!?説明しなさいよ!』

 

あー凄い慌ててる声が聞こえる。ぶっちゃけそんなに聖杯に対してどうこうって言うものかと思っちゃうんだけどね。

 

(あっちの世界じゃ職員に使われるのを避けるためにジャンジャン使ってたからなー…)

 

そもそも小特異点と特異点の区別なしに解決し続けてカルデアにすらいなかった。もしかしたらいた時間はキッチン特異点のほうが長いんじゃないかな。

 

「どうせアテシ聖杯15個持ってるし。一個使い切るまでは気にしなくていいっしょ」

 

「 」

 

『その りくつは おかしい』

 

「ありゃりゃ、そんな驚かなくてもいいって。コレでもアテシが聖杯持ってる数が一番少ないんだよ?」

 

隠すつもりはないけど牽制とかそこらへんの細かいやり取りはアテシにはできない。

 

(ぜーんぶマスターに任せっきりだったからねぇ。本当に普通の高校生なのか疑わしすぎるんだよなぁ…)

 

とりあえず場をひっかき回したら全部マスターに押しつけちゃいますか。お守りなんて一人でやらせるべきじゃないってのが常識なんだぜ?

 

「ゴーゴーカルデアレッツゴーカルデア!」

 

『もうやだ…このサーヴァントなんなの…』

 

嘆いていてももう遅い。海賊船めがけて突撃だー!

 


 

 

 

 

 

 

 

 

 

バーサーカー。そう名乗ったサーヴァントは誘拐してきた理由を簡潔に話す。

 

「マスターが警戒してる理由は『ドレイク船長が奴隷貿易の船長だから』ってコト。おわかり?」

 

「え、でも世界一周した海賊だって…」

 

「ノンノン。立香ちゃんの言ってることも事実だし、マスターが考えてることも事実」

 

チッチッチッ、と指を振りながら芝居がかった仕草で言葉を並べる彼女。

 

「れいせーになって考えてみ?英霊ってのは複数の逸話があるんだからおかしなことはどこにもないよ?」

 

『そういうことね。海賊としてのドレイクと奴隷貿易の船長としてのドレイクが同居してる、と』

 

「うんうん。そんでもって船の種類がわかんないから後者の要素のほうが強いんだよね」

 

解像結果出してー、と軽い気持ちでカルデアへとサインを送る。気軽に確認するために見せられたその船は、違和感もない普通の船に見えた。

 

「宝具名にもなってるはずの船の名前─黄金鹿(ゴールデンハインド)。海賊って名乗るからにはやっぱりその程度誇示しないとおかしいんだよね」

 

『むむむ…確かに言われてみれば納得できるけど…』

 

「オマケに立香ちゃんとキリエライトをマスターから引き剥がしてから誘拐しようとしてた。マスターの指示って要するに【自分がいない時に立香が誘拐されないように気をつけろ】ってことだと思う」

 

実際にそんな意図があったかはさておいて、風香にとっては誘拐なんて地雷。された瞬間に特異点解決なんてまどろっこしいことはしないで元凶だけぶっ飛ばす。

 

「まーそんな話もありますし、味方ってことでいいよね。文句あるならマスターに言ってほしいな」

 

はいこれ、と出されたのはカツ丼。ご丁寧に箸まで添えてある日本食らしきもの。

 

「エウリュアレちゃんとアステリオスくんも食べれるっしょ!ほらほら、食った食った!」

 

ドルルン、とエンジン音が軽く唸る。

 

目的地である彼のところまではまだ時間がかかるだろう。

 

船室で食べる時間もあるし彼が警戒していた理由もわかった。

 

立香は束の間の休憩をとろうとしたとき、少しだけ彼女が手招きしているのが見えた。

 

(なんだろう…?)

 

不安に思いながらも、彼女は味方だとわかっている。

 

立香は─その部屋で、何を聞いたのか。

 

出てきた後の彼女の顔が、妙に決意に満ちていたことだけは確かだった。

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