世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
「結局負けることはなかったな」
黒髭の聖杯を盗まれはしたけど、それより他のサーヴァントを殺すほうを優先した。
(黒幕に繋がる情報がちゃんと出てくるようにしないと疑われるからな)
海賊船は既に廃船と変わらないくらいには傷ついた。残っている船員はアンとメアリーだけ。それももう長くはない。
「ふふ…まだ負けてませんわよ…」
「そーそー。僕たち、今度こそは最後まで戦うって決めてたから」
ボロボロの装備でこちらを睨んでくる二人はもう限界を越しているだろう。放っておいても死ぬのは明白。
(…はぁ、なんとなくわかってたけどコイツらに対してどんな思い出があったっけ?)
どんなサーヴァントだったっけ、というのすら朧気な二人。片方のビデオは送られてきていたけど、もう片方は送られてなかったか。
「曖昧だしどうでもいいや…」
最後の猛攻と言わんばかりに二人で特攻してくる。同時に俺へと重なる位置だし、避けるのは容易な攻撃ではある。
(…ま、いいか)
前から迫ってくるアンに対して刺突。そこから後ろにいるはずのメアリーのカトラスを腕でぶっ壊すプランを立てた。
「マスターならそうしてくれると思ってましたわ…」
「!」
特攻覚悟。自らでそう考えたのにも関わらず、アンに腕を取られる。力で振りほどくことは可能だけれどメアリーに対応する時間はない。
せめてもの抵抗として背中を固めた。
「…やっと話せるよ。ふふ、マスターに抱きつくの久しぶりだね」
「…は?」
思考が止まる。殺されてもおかしくないのに頭の回転が鈍くなって固まっていく感覚がある。
「覚えてなくてもいいけどさ、僕たちで宝物を探したよね。あのときからマスターのこと好きなんだ」
「………、だから、どうした」
アンの名残惜しそうな顔から腕を引き剥がしつつ、メアリーへと刺すために体を捻る。しかし当てられるような位置にいない。
「僕は忘れたくなかっただけ。ずっと純潔だった─信じられないだろうけどね」
「うるさい、うるさい!うるさい!!」
嘘だと叫べないまま彼女を押し倒して首を絞める。場合によって脅しているようにしか見えないが、見栄えよりもこいつを殺すことのほうが最優先だ。
程なくして動きが止まったのを確認し、手を離して息を整える。
「…速く、合流しないと」
気持ち悪い。血まみれだからとかじゃなくて、何かが気持ち悪い。ズルズルと引きずる前に、立香たちのところに戻らなければならない。
─無実のサーヴァントを殺したという可能性から目を逸らしたくて。
トントン、と誰かのノック音。その前から聞こえてた足音は間違いなく彼だ。
「あいあーい。ハサミ構えるからちょっと斬られる準備してねー」
ジャキンジャキンジャキンと威嚇の音を出して牽制しておく。マスターなのはわかっていてもここから催眠を仕掛けてくる可能性だってあっからね。
「…普通に『準備ができてない』でいいだろ。しかもこの匂い…カツ丼作った後だな」
呆れた声音と見知った体。本当だったら死んだはずの彼が今、そこにいる。当然ながらアテシは無言になる他なかった。
「………」
「そんな困惑して猫目になるほどのことでもないだろ。開いた口がふさがらないのは両方一緒だ」
いつも通りのぶっきらぼうな口調で、アテシの隣で包丁を握る。ア、と声を出す前に彼は食材の前に立った。
「悪いけど一緒に作ってくれるか。腹が減ってしょうがないんだ」
キョトンとしているアタシにお願いしてくるマスター。共同作業どうこうも久しぶり過ぎてわかんなかった。
(いやまぁ、そっか。求めてるものは日常だもんね)
彼にとっての最後の晩餐と同じようなことをやっているのは、それすらも『ありふれたもの』として消化したいのかもしれない。
「えっとさ、なんか声かけたほうがいい?」
「うんまぁ、言ってほしい言葉はあるかな…いつも通りの言葉」
予め二人分揚げておいたトンカツを卵で綴じ、米を盛った丼に乗っける。ホカホカと湯気を立てているのがとてもおいしそうだ。
「我ながらうまくいったと思うんだよね、アタシ」
「そうだな。小特異点でありゃよかったけど…ま、こういう部屋で作りたてを食べるのも悪くない」
二人揃ってテーブルにつき、同じタイミングで手を叩いていただきますをする。普段通りの他愛のない話より先に、口に出てきた言葉があった。
「おかえり、マスター。もっかい人理、救っちゃおうぜ」
気恥ずかしそうに─けど、どうにも嬉しそうに彼は笑う。
「…ったく、リリス。現状を説明しながらのご飯は嫌なんだけど」
「アタシもだよ。だからさ、二度目の日常を教えてほしいな」
あの子に執着する理由も、アテシに話してたやりたい日常も、全部全部聞きたいんだ。
そんな本音を隠して、マスターに話を促した。
「このカツ丼、やっぱあったかいね」
「うん。塩気抑えたからちょうどいいっしょ?」
久しぶりに作ったカツ丼は、妙に重ったるくて箸が中々進まなかった。
「へー、1000人もこの作品をお気に入り登録してる人がいるんだ。そんなに多く読んでもらえてるのビックリだよ。
…ありがとね、皆!アテシも頑張ってマスターをがんじがらめにする!」