世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
とりあえず間違えて同じ話を投稿してしまい申し訳ありません。
教えてくださった草薙 翔 さんとシノビガミさんに深い感謝を。
立香の部屋へと向かおうとしたとき、なぜか背中から燃え上がるような感覚を覚えた。
(なんだ…?この船で後ろから攻撃されることもないと思うが…)
触ったところで異常もないし、一瞬だけ感じただけなので気のせいなのだろう。判断もそこそこに立香の部屋へとノックをする。
「俺だ、風香だ…っと」
コンコンと音がした瞬間にガチャっと外開きのドアが勢いよく開く。後ろに一歩引いてなんとか激突しないようにしたが、立香に対応するのまではムリだった。
(何も言わないで行ったからなぁ…)
思いっきり抱きついてきて腕のなかでわんわん泣く立香の頭を撫でる。普段なら子供扱いしたとかなんとか言って払い除けてくる手はそのままだった。
「フーくん…なんであんな無茶したの…!」
「別に立香が大砲に当たるよりは前に出て止めるほうがマシって判断しただけだよ。船内はある程度危険とはいえバーサーカーに対応させれば問題なかったし」
「…全部言ってよ!?わからないから!」
怒りながら泣いている立香の言いたいこともわかるけど、いかんせん魔術の監視とか考えると言いにくいしなぁ。
「つっても海で立香をお姫様抱っこするのは流石に無茶が過ぎたし…」
「というかあのバーサーカーの人ってなに?『マスターとは人生を一緒にいたから』って言われたんだけど!」
「否定しにくい言い方しやがったな…」
実際に死ぬまで一緒だったせいで否定できる材料がない。適当にごまかしても通用しないしリリスを嘘つきにするのも気が引ける。
「…サーヴァントの中身のことだろ、どうせ。俺もよくわかってないからそこから話が出てるのかもしれない」
迷ったうえに雑な返しである。納得するかどうかは運に任せるしかない。
「…………………わかった」
めちゃくちゃ不満気に見られたって過去は変わんないし立香より先に知り合ったことは事実。
(つっても立香のほうが長く見てるんだよなぁ…)
そんなことを言ったところでそうじゃないと言われるのは目に見えているので別のことで意識をそらす。
「で、この特異点の敵が大体理解できた。具体的にはギリシャ神話のヘクトールとイアソン─まあ、アルゴーなんちゃらだったはず」
「なんでそんなの知ってるの…とか、聞いても無駄だよねぇ」
「いつも通りとしかな。…まぁこの後立香が思うよりも無茶でもしようかなって思ってる」
ぴくっと彼女の体が反応する。確かに危険な感じにはなるのかもしれないけどなんとかなるはず。
「…無茶?」
「うん。もし一緒に乗り込むってならやらないけど、そうじゃなきゃとっとと聖杯だけでも回収しちゃおうかなって」
リリスがいるなら船ごと沈めてからゆっくり回収すればよさそうだし、前よりは少ない損害で済む。
(どうせ聖杯がどこにあるかはなんとなくで探れば見つかるだろ)
そんな軽い考えの提案だが、拒まれた時のプランもあるし問題ないだろう。
「…フーくんはまた見えなくなるの?」
「うん…まぁ…そうなるけど…安全を考えるとコレが一番安定するんだよね…」
前回は兄貴に偵察と突撃をお願いしてリリスと俺で超遠距離から精密にかっさらうほうが多かった。もちろん戦闘もしたが、ソロモンがしかけていた七つくらいだけだったと思う。
(大体原因がマシュ・キリエライトだったからなぁ…おっと思考がそれた)
立香は口を開くか開かないかのギリギリで何度も何度も声を出そうとしていた。悩んでいるところをわざわざ急がせる理由もないし、そのまま待っていよう。
「うん。…聞いていい?」
「いくらでも」
「─私も、連れてって」
前の特異点解決のときではあり得なかった晴天。雲で隠れていない眩しい星空のなか。
クルーズのテラスで風香とリリス、そして立香が聖杯を取るために準備していた。
「バーサーカー、私もついていくけどいいよね?」
「いいけど…アテシ守るの苦手だから死んでも知らないよん」
立香の同行に快く頷くリリス。マスターの近くにいた方がサーヴァントのパフォーマンスが上がるのは事実だ。
(どうせならサーヴァントの戦闘がどんなものか、ってのも経験してほしいしね。うまいことできたら暗殺できちゃうし…でも無難に守ってやりますかぁ)
風香を絶望させるにはまだ時期尚早。そう判断したからにはきっちりと守れるように動こうとリリスは決めた。
「バーサーカーに防御は期待してない。寧ろ攻撃が足りなくなるからそっちを頼みたい」
「あいあい。…キリエライトは持っていかないよね?」
ふと思い出したかのように付け加える。もともと来たとしたら手のひらを返すかもしれないくらいには嫌っている女。
(アテシのマスターを傷つけて笑ってた一番のサーヴァント。あと被害者を増やしたクズ)
とあるギリシャの一団を自殺に追い込んだマシュを根底から嫌っている─そして、仮に転生したところで許せるはずがないというのがリリスの立ち位置だった。
「いや、流石に無理だ。…言いたいことはわかるだろ?」
「そうだよね。さっすがマスター、わかってる!」
バサリと翼を彼女は広げる。呼応するかのように風香のコートが盛り上がって翼となる。
「そんなことできるの?」
「できる…というか見せてなかったな、さっき」
少し疑問げに思っている立香の腰へと左手を添え、横抱きにする。俗に言うお姫様抱っこだ。
「一番安定する。どうせサーヴァント同士の戦闘になったときに俺が盾になることを考えたら最適解はこれだ」
「でもフーくんの顔真っ赤だよ?」
フードの下がよく見える特等席の少女に指摘されるとパタッと何かが縮こまって閉じる音。
「ヒュウ。マスターったら大胆なことやりますなぁ…あとでアテシにもやってよ?」
「はっ、言ってろ。変な真似したら殺してやるよ」
リリスはその言葉の意味をわかっている。最初の時と違うのは彼の手は震えていないし、持っているのは剣ではなく愛している人、ということ。
(ハハッ、挑発だなんてウチのマスターも隅に置けないなぁ。…もしかしたら嫉妬してほしいのかな?)
いずれにしてもなんて返せばいいか決めかねていたところに立香が声を出す。
「ほら、フーくん!そんなこと言ってないで速く行くよ!バーサーカーも!」
「…はいはい」「オッケー」
ヒュウ、と一陣の風が吹いたと思えば、もう既にその場所に三人はいなかった。