世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
「とりあえず立香守りながらだから死ぬほどかかるな」
「おじさんの攻撃を足技だけで凌ぐつもりか?だとしたら随分と舐められたもんだねぇ」
槍の猛攻を足で避ける。多少体に被弾するのはいいので立香への一撃だけは徹底的に避ける。
「大丈夫?掠ったりとかしてない?」
「してないけど…ちょっ、前、前!?」
前からやってきた魔弾も蹴りでなんとかする。片足だけで避けないと移動がしにくいから難しいんだよなあ。
(っと、危ない)
やってきた煙を二人して吸わないように回転蹴りで吹き飛ばす。そのまま無理に追撃はしないで軽く距離を取る。
「チッ…煙を吹き飛ばしたところで何の意味もないはずだが…」
「そもそも名乗るくらいしてくれませんかねぇ?人数不利で片足とかいうふざけた縛りプレイなんだけど?」
「それでギリシャ神話のアルゴー号を相手できているサーヴァントに言われてもな。我が船体がこの程度の低級に負けるなんて恥をつけられても困るのだよ」
援護のように剣が軽く飛んでくるけど当たる場所にないので無視。というかアルゴー号にヘクトールはいないことをツッコむのは野暮なのだろうか。
「というか本当に蹴りだけしか使わないねぇ!おじさん達にも真名を教えてほしいんだけどな!?」
狙いすまされたその一突きに乗るように飛び、その勢いでイアソンのところへと立香を置く。
「おいイアソン。そいつに手を出したら動けないからな?」
「バカなことを言うね。交換条件として成立してないが?」
「でもフーくん、この人倒して聖杯を手に入れたほうが速くない?」
確かになぁ、なんて思ったけどやれない。というかあの化物がまだ見つからない時点でどんな作戦を立てているか容易に想像がつく。
(…というか他の奴らが動いてない時点で怪しいからな)
しょうがないので適当に四本のメスを正方形になるように投げ、結界らしきものが見えるようにしておく。
「今そこを結界にした。どっちの大将も一歩たりとて離れない─で、先にその陣営が中に入ったら負けな?俺が入ったらイアソンの勝ち、イアソン陣営が入ったら俺の勝ち」
一方的にルールを告げて無理矢理契約したことにする。これで両陣営ともルールを遵守しなきゃいけない。
「おいおい…ってことはアレか?ゲームをするってことか?」
「そうそう。別に全員倒しても勝ちな。…ってことで始めようか」
結界を更に強化してワンルームに変えておく。サーヴァントの宝具一回くらいなら防げる程度の強度しかないがまぁ、いけるだろ。
そんな楽観的な観測と共にヘラクレスが襲いかかってきた。
船の中から現れた巨漢に襲われる彼を見て、二人は対照的な反応を見せた。
「フーくん…?」
「あっはっはっは!まさか本当に手札を全部出した状態から戦いに来るバカがいるんけないだろう!」
大爆笑しているイアソンは、涙を拭いながら隣の人類最後のマスターへと嗤う。
「アイツはヘラクレスと言ってな、狂化したんだが俺の命令を聞く友人だ。十三回殺さないといけない─どこの馬の骨ともしれない奴が勝てるような存在ではないんだ」
いつの間にかあった酒へと手を伸ばす。勝ちが決まっている戦とはいえ、安全な場所にしてくれたのだから気兼ねなく酒を飲めるのだった。
(…うん。フーくんなら大丈夫)
一方、立香は唇を強くかみながら彼を強く凝視していた。彼がどれだけ強いのかは底が知れないから信じることしかできない。
「安心しろよ立香!この程度じゃ曲芸する余裕まである!」
「おじさんたちを忘れないでほしいねぇ!」
「治療させてもらおう!その体質には興味がある!」
槍が、拳が、魔弾が、蛇が。
ありとあらゆる一撃をもって殺しにかかるが、ソレが全て届かない。そして華麗に避けているのを見ていると、立香はあることに気づいた。
「なんで端に…?」
船べりにわざわざ寄っていくのだ。自らのやり方が回避なのに避けるスペースを減らしている理由はなぜか。
「あっぶね!?前からヘラクレスが!?」
「さらっと一回殺しやがったな?もうその攻撃は効かないからなぁ!はっはっは!」
雷撃で殺した瞬間に蘇り、一瞬で襲いかかるヘラクレス。それを平然と風香は躱して海へと突き落とす。
「本当なら何回も殺したかったがな。溺死のほうが可能だと判断した─っと、それはやらせない」
助けようとした魔術を徹底的に妨害し、戦闘のセオリー通りに遠距離攻撃のメディア・リリィを狙う。
「あとなぁ、忘れてないかイアソン。全滅させる義務はないんだ」
「お前、まさか─「もうおせぇよ」」
思いっきりイアソンへと投げられる彼女。戦闘ではなくゲームである─そう制限した理由が、はっきりとわかった。
バチンと結界が壊れる音。呆然としているイアソンを横目に見る立香は、速く駆け寄りたい気持ちでいっぱいだった。
「立香!
離脱させる意図。それがわからぬとも妨害。一瞬で判断したヘクトールの槍が彼の脇腹を裂くが止められない。
「あばよ!あとはよろしく、バーサーカー!」
声と共に暴雨が吹き荒れる。星空に黒雲がかかり、雷鳴が轟いていく。
其れは海賊の時代において最も畏れられた時間。その状況を再現するのに充分な権能を持つ彼女は、悪魔の角と爪を隠そうともしない。
ワイルドハント。嵐の夜を示すその名を関する悪魔。
「嵐と夜に勝てるわけないっしょ?まあどっちもアテシだけどさ」
─真名、リリス。
またの名を、