世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
─「」は、貰えなかったものを求めた。
自らがサーヴァントになった際、知らなかったのは『■』だった。
喚ばれたときから、『■』を望んだ。『■』について知りたい理由も、今となっては朧気だ。
「しょうがない…あんまり期待するんじゃねぇぞ」
どこまでも厳しくて優しかった。握っていた武器を思わず取り落としてしまうほどに。
それから彼は、『■』がどのようなものかを教えてくれた。
たくさんの『■』を見てきた。『■』と言い張る悍ましいものを見てきた。その全てにおいて、『■』の熱はとても大きかった。
「だからこそ」
だからこそ、と言った。わざわざ彼が無意識の内に切った言葉。
その機微がわかるほど成熟した「」は言葉の続きをしっかりと焼き付けることにした。
「人は誤る。『□』は盲目、とはよく言うものだ」
その言葉を吐いたきり、彼はこの話をやめた。なんどせがんだとしても、『■』について語ることを頑なに嫌った。
それがなぜなのかは、「」も覚えていない事柄だ。しかし「」は他の─限りなく汚れていない味方の─誰かへと聞いた記憶がある。
リリスと呼ばれた彼女は、自らの感情を隠そうともせずに笑いながら言っていた。
「『■』かぁ。いまのアテシは『□』に生きてるけど…マスターが言わなかったなら言わないほうがいいかもね」
寄り添ってきていたというその『■』。「」には与えられない、安らかなもの。
「」はわからなかった。自分がなぜそこまでして『■』を渇望しているのかを。
『■』を知った自分は、世界には存在できないからだ。
自分がそれを伝える手段とは、一つしか知らなかった。人を傷つけることでしか、伝えられなかった。
それから「」は、数々の旅路を経験した。彼が『■』を持っている少女は誰彼構わず襲われることを悦んでいて、他から知った『■』のやり方とはまた異なることに嫌悪感を抱いた。
そんなとき、自分の『■』を探すことにつきあってくれていた人から伝えられた。
「テメェの願いは叶えてやる。…こんな人間に叶えられる、というのは嫌かもしれないがな」
なにか反論しただろうか。自分が嫌だと思ったのかもしれないだろうか。それとも嬉しさを隠そうとしたのだろうか。
いずれにせよ、その言葉を聞いてから廊下を走ってしまったのを覚えている。
「」はこの施設が狂っていることを理解していた。女の一人歩きがどうなるかなんて予想できていた。
しかし、どうしようもなかった。幼い見た目だろうと情欲をぶつけるには充分だと言わんばかりに獣に限りなく近い人間に覆いかぶされた。
悲鳴を何度もあげた。襲われたくないからと必死に抵抗した。それでも離れようともせず、寧ろスパイスとして愉しんでいた。
「…ったく、だから離れるなって言ったのに」
「」が普段使っていた武器を片手に、彼は近づいてきた。あっという間に一人の人間が弾け飛んで肉塊となった。
「まーまー、マスターだって乙女心を理解できてなかったってことでしょ」
なだめるかのようにハサミで周囲を囲むリリス。「」は見た目相応に─あるいは、普段のときを考えたら過剰に幼いように、泣いてしまった。
「…悪いな」
彼が震える手で抱きかかえてくれる。トクン、と心臓の中で軽やかに跳ねる血流の音がとても心地よい。
自らが知らなかったはずの『■』は、彼からもたらされた。
「」が、自覚することはなかったが。
現在。彼に最初に呼ばれたロンドンで、周囲の敵を殺していく。
「」は彼から渡されたナイフをとてもとても気に入っていた。それこそ、自らの霊基の中へと刻み込むほどに。
故に、「」は笑う。誰よりも可憐な笑顔で、誰よりも美しい肢体で、誰よりも『■』のことを知って。
『愛』に飢えていた自らが満たされてしまったこと。
『恋』をするべきではなかった自分がそうなったこと。
─ロンドンにて、恋の始まりを。
今ならきっと、もっと伝えられるから。
礼装獲得!
『それと知らずに宿るもの』
マスターが彼女へと手渡した双剣。本来ならナイフだったり矢であるべきものではなく、最も手に隠しやすい凶器として渡した武器。
変質しても用途は変化しない。敵を切り裂くにしても、愛で惑わすにしても、最終的に相手を殺すのだから。