世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
戦闘そのものは長期戦になるがじわじわと決着がつくことはわかっていた。─相手の勝利で、という注釈がつくが。
「やりにくいにもほどがあるんだよ…」
相手の剣と剣戟を交えようにも抜けてしまう。頭へ剣を突き刺したところで通り抜ける。だというのに相手の攻撃だけが当たるのだ。
それに加えて奇襲で失った片方の影響はやはり大きかった。軸が傾いて剣を支える力がない。血が足元に垂れるにつれ、技の精細を欠いていく。
「……」
沈黙した騎士はそのまま襲いかかり、剣そのものを彼へとつきつける。狙いは間違いなく喉元。
横へと咄嗟に彼が回避する。特殊な技能も何も使わない二人の戦闘は静謐で、どこか厳粛で─だからこそ、オルガマリーは立香へと口を出す。
『立香!今のうちにガンドとかで支援しなさい!今の状況じゃ負けるわよ!?』
「…でも、フーくんがそれに気づいてたら何か言ってこないかな」
慎重に、慎重に。立香よりも場馴れしているような風香が言わなかったということは、対抗策として支援は選べなかったということ。
(考えてもしょうがないかも、なんだけどね)
片方へと回り込む動きだけを徹底する鎧のサーヴァントは、あからさまに影がブレるほどの速さだ。丸い物体がかすかに見えるくらいしか立香には捉えられない。
(…待って、
先ほどから戦っている鎧は角が生えているようなデザイン。風香は基本的に動いてないから影も同じ。
「フーくん!胸のあたりを狙って!」
「…あいよ!口の支援だけでいい!」
言葉通りに狙われた剣閃が相手の行動を変化させる。大袈裟と言っていいほどに回避し、バク転しながら距離を取る。
【バレタカ】
沈黙の騎士の声は美声ではなく、ボイスチェンジャーを使用したような奇妙な声だった。聞こえてもどこにも残らないような音。
「随分と打ち合えなくて当然だな。こりゃ戦いにくい」
振り回していた大剣を地面へと突き刺し、残っている腕を前へと突き出す。
「子供かなんかの小ささのサーヴァントなら大剣より拳のほうが使い勝手がいい。試してみるか?」
【ザンネン。ジカンギレダ】
爆発音と共に鎧の騎士が退く。煙が晴れた先にはとある青年が悪魔を伴って現れた。
「ご苦労です、セイバー。無理はせずに休んでいてください」
【アァ】
霧と同化するかのように消え去った鎧に目もくれず、風香はそっと立香のもとへと駆けつける。
「それで、なんのようだ?生憎サーヴァントなら俺一人で事足りてるからな─敵として出てるって宣言してもらわないと困る」
「おやおや、随分と急ぎますね。最も手を斬り落としていたらそう思うのも当然ですが」
やれやれと息をつくジェスチャーと共に橋が爆破される音。わざとらしい力の誇示に対して内心恐怖があるが、それを気にすることなく気丈に振る舞う。
「…とりあえず、どうするつもりだ?どうせ誰がどう思おうが殺せるからな?」
「はぁ…いえ、せっかくなのでご挨拶を、と思いましてね。英国紳士たるもの、それくらいはしませんと」
「どこに隠れてるのか本拠地教えなって話だ。じゃなきゃ地下諸共焼き尽くすぞ?」
風香は地下と場所を絞った。わかっていると脅しをかけた。
「ははっ、残念ながら私は彼女から言い含められてまして。くれぐれも伝言だけして帰るように、と」
だからこそ、外れた顔は明らかに予想外と出てしまった。
「『鐘のなるところで待つ』─とのことです。準備を整えてから来ていただけると…あぁ、でももしかしたらその傷を負ったままのほうが彼女は興奮するかもしれませんね」
笑うわけもない。どちらかといえば憐れみだ。
「ではさようなら。くれぐれも死なないでほしいですね─人類最後のマスターさん?」
そう言って去っていく彼に一言もかけずに、風香は地面へと座り込む。彼の言った言葉は間違いなく自分に向けたものだとわかっていても流石に辛かった。
「…リリス、立香を頼んだ」
ぐらりと倒れる寸前の言葉は、リリスを見なかった。
その直後、風香の意識は途切れた。
私生活で熱中症になりました。
ちょっと体調戻したいから日曜まで休みます。申し訳ありません…