世界を救え?できらぁ!   作:星5すり抜けとNTRは悪い文明

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第30話

リリスの叫び声が反響する中、妙に覚えのある匂いが嗅覚を捉えた。

 

おかあさん(マスター)?どうしたの?」

 

「…とりあえず治してくれ。応急処置してくれないと動きにくい」

 

まぁ動けないなら動けないなりに行動を考えればいいだけの話だが、今は警戒に思考を割きたい。

 

渡した双剣を刺しながら治療しているジャックを見つつ、一度はっきりと匂いを嗅ぎ分ける。人間じゃないならなんとか見つけられるはず。

 

霧の中で水が充満する匂い。ジャックから感じる鉄錆の匂い。その大きく匂わせる二つとは違う妙な匂いは俺が一度皮膚感覚で知っているものだ。

 

「…ちょっと待ってくれないか?生憎弱った体じゃ王様へのもてなしも何もできないもんでね」

 

「ほう、王とまで見抜けるとはな。そもわかっていて当然だろうが」

 

石畳の上を滑る彼は、魔術師としての風格を漂わせている。警鐘を脳内で鳴らすつもりもないし、片手間に俺を殺せるほど今の状態では警戒もしていないはずだ。

 

「んで、ソロモン王ともあろうお方がこんな木っ端サーヴァントにどんな用で?まさかとは思うけど労いだのなんだのとは無縁だろう?」

 

頭では話しつつ、冷静にジャックの治療が終わる時間を見積もる。速度は変わってないことから、なんとか一分稼げばよさそうなレベルだ。

 

(最悪宝具を開帳すりゃいけるかね…?)

 

とりあえずは時間稼ぎ。終わらなければ宝具。方針さえ固めれば後の動きは決めなくともいい─今、ここに予測ができないイレギュラーはないのだから。

 

「ふっ、もう何もかもわかっているとはな。レフと喧嘩別れしたのも含めた演技ならば、随分と人間に近づいたようだな。それで一手は妙に婉曲的で狡猾」

 

「持ち上げるほど大したことはしてねぇんだよ、だから。伝えたいことが労いだけじゃねぇならとっとと治して行かなきゃいけねぇんだよ」

 

ソロモンからの言葉が妙におかしい。何もやってないのに持ち上げられている。

 

(リリスが何をやったのか本格的に調べたほうがいいかもしれないな…)

 

勘違いで話が続くのなら好都合。今の段階で敵と認められてないならたったと帰ればいい話だ。

 

「藤丸風香。どんな因果でお前がサーヴァントとして現界しているかはわかっているようで何よりだ。オルレアンに聖杯を集めたことはまぁ…いいだろう。人理は詰むと決まった時点でふざける程度は立役者の行動として目をつむる」

 

「………」

 

オルレアン。ワイバーンの穴倉となった、恐らく彼女がいる場所。

 

「ただ、最後の仕上げまで忘れずに行えよ?人理の焼却における計算が狂ってしまっては元も子もないからな」

 

フッ、と幻覚のように消えていくソロモンを見送る。体の傷はある程度動けるようになるまで回復している。

 

最後までソロモンに触れられることがなかった少女は

 

「…ジャック。おおよそでいいから嘘ついていたかどうかわかる?」

 

「嘘はなんにもついてないよ。本当に褒めてる感じ─でも、ちょっと何かに似てる」

 

「そっか。寝るからやばそうなら」

 

その何かについて聞けるような体力はなかった。もう既にジャックを助けるために血を流したから眠くてしょうがない。

 

「…任せて」

 

ふわりと笑った彼女を横目に、眠りに落ちた。

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