世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
一段落した雰囲気の後、メタトロンは気怠そうに手を振りながらこう言った。
「いっかい自分の目であそこを見てきたら?別にここに戻ってくるぶんには問題ないし、まさか風香がついてて死ぬことはないでしょ」
雑に放り投げられた先は、どうやらさっき話していた空間のいずれかだろう。そう判断しながら風香は慌てずに空中で姿勢を立て直す。
「こりゃ随分とまぁ雑な転送なことで…」
とっとと立香を捕まえ、クッションになりそうな木へと和傘で殴りながら着地する。そこからミシミシとなる音はあったが、立香の体には傷一つない。
「大丈夫?一応ここ特異点だからぼーっとしてるとやられちゃうよ?」
「いや、その…なんかこう、自然に武器取り出してるよね…?」
ポーチの中から取り出されているものが明らかにサイズと見合ってない。今も平然と傘を出したが、普通に収まるわけがない。
「まぁこの特異点との相性はいいからね。立香も使いたいなら渡すよ?」
「うん…できれば一回木の上から降りたいなぁ…って…」
降り立った地点は密林の端。骨の龍の頭だけが闊歩している恐ろしい場所だが、風香はカルデアの制服に袖を通して呑気に鼻歌までしていた。現界しているときから羽織っている白いコートは持ってこれなかったのだろうか。
「はいよ。下に多分エネミーいるから注意して」
いつの間にか手元に置いてある玉を投げれば煙幕として機能する。ひょいっと抱え上げられた後にその煙の中へと飛び込むと、隣をカギ爪が横切る。
「!?」
「竜でしょ。あんなでかい化物が闊歩している中だし何かそういう神秘的な存在がいてもおかしくない」
立香の隣で解説をしつつ、片手にアクセサリーとして首にかけていた笛を持つ。明らかに奇妙なそれは、どこか凄い神秘を立香に感じさせた。
「とりあえずどうする?倒さなくても進めるならすすんじゃうけど」
「…なら、倒さないでほしいかな」
「はいよー。霧で安全確保しつつ動きましょ。『
周囲にジャックの宝具を発動して進み始める風香。手を繋いでも晴れないようなしっとりとした霧は守りの要素を多分に含んでいるように感じる。
「ちなみに今不死じゃないから死なないように立ち回るぞ」
「えっ?」
「あの白いコートにいろいろとかけてたからね。別にカルデア制服でも問題ないんだけど、こっちだとリリスとかジャックは呼べないから不便」
意識は繋がってるような気がするんだけどなぁ、なんて呟く彼。手でくるくると小さな笛を回している様子は見るからに楽観的だ。
(フーくんならなんとかなる…のかなあ?)
正直何をしたって驚くことでもない。彼の才能と肉体は本格的に人から外れているし、滅多なことでは死なないはずだと立香はこの前からとっくのとうに知っている。
「とりあえず行こっか!うん!」
気まずい雰囲気を払拭するように立香は前へと進もうとする。しかし、どうにも前へと進めない。
「あれ…?入れない…?」
「ん〜…よいしょっと」
風香は悩む。悩んだ末に風香はピーッと大きく笛を鳴らす。唐突すぎて立香は咄嗟に反応できない。
「ちょっと!?」
「いやせっかくだから第二スキル使おうかなって。果たされぬ契約ばっか使ってると悪用されるかもしれないし」
悪用って何─そう聞く前に、笛から妙な音楽が鳴り始める。和の楽器から出る音としては理解不能で、でも立香が普段聞いたことのあるような曲。
「ボカロ…?」
呟いた途端、一気に笛の音量が大きくなる。
「…ま、そう思うならそうなんじゃない?」
立香の質問に曖昧な返答をし、笛の音に彼は身を任せる。
見上げた空に 君の声を聞いた
異質であるがどこか遠くまで響くように澄んだ音色。密林と合わないはずのソレが常に鳴っているような違和感。
募る想いは 地平を越え郷を巡る風
「一応、これが果たされぬ契約以外のスキルってことになるかな。使うときにジャックとリリスがいると変なこと起きるし」
紫色に染まった笛をポケットの中にしまいながら風香が言い切ると、地響きが二人の体を揺らし始める。
「第二スキル、強いてつけるなら『獣の道は獣』ってとこかな。弱い獣は他の獣を呼ぶしか能がないしね」
そう自嘲しながら呟く彼の目を見ることができれば、立香は何かに気づけたかもしれない。
例えば、例えば─
藤丸風香がビーストである、とか。
─なんて、気づけるはずがないのにね。
『獣の道は獣 EX』
ありとあらゆる近似を引き寄せるスキル。どの形式でも何らかの主軸に沿って複数の疑似宝具を展開したり、自らの見知ったサーヴァントを口寄せすることができたりする。
ただし制約として『必ず一貫性のあるもの』しか使えない。彼は笛にこのスキルを紐づけることによって『笛を変える=能力が変わる』の式が成り立つようにしている。
ただし、周囲に自らと関係性の深いものがいた場合はそうとは限らない。