世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
ゾンビを蹴散らしながら辿り着いた先は白亜の城。遠くで見たときにはわからなかったが、いざ近くで見るとあからさまな違和感があることに気づいた。
(…っとに、趣味ワリィ…)
この白亜の城は要するにパンドラの箱だ。入った瞬間、サーヴァントが全員襲いかかるように設計してある。
「どうする、風香?ボク一人でもいけるよ」
「んなことするわけないだろうが。貴重な戦力をわざわざ無駄に死なせるのもバカらしい」
軽く弾丸を放ったが壊れる気配はない。結界として機能している城とは戦えるとは到底思えなかった。
「…一旦少し離れて作戦を立てるぞ。どうせマシュ・キリエライト専用の対策も立てなきゃいけない」
わざわざ城門の前で話して敵に情報を流すような間抜けではない。念のために宝具を使い切ってから近くの水場へと行くことにした。
水場につき、安全を確認してからメアリーへと話しかける。どうせ彼女が戦力としてどう使えるかをもう一度考えなければならない。
「…で、メアリー。やっぱりアンがいないと戦いにくいか?」
「……うん。やっぱり片方を任せちゃってたから思いっきり空いちゃうね」
「そうか。じゃあこの宝具じゃないほうがいいな」
適当に別の笛へと入れ替え、できる限り荒々しく音を吹こうとする。銃はしまっているし別に何も問題はない。
(…でも待てよ、今回のやつなら…)
繋げれば大した問題じゃあるまい。大量にあった宝具のうちから最も今の状況に合うものを展開していく。
「疑似宝具展開─
爪が伸びる。狼に近い体つきは近接として英霊と殴り合うには充分だろう。
「…ねぇ、本当にそれ宝具なの?」
「さぁな。ジャックに渡したやつの片割れ以外は俺が持ってたものじゃないし、こういう肉体系の疑似宝具ってなると中に色々残るんだよな」
肩をすくめながら近くにあった湖を叩く。水面に波紋が広がるのを見てだいたいの力加減を理解する。
「で、魔力探知的にいるサーヴァントは七騎くらい。全員碌な思い出がないから殺していいと思う」
ルーラー─ジャンヌ・ダルク。
バーサーカー─ナイチンゲール。
ランサー─エレシュキガル。
アーチャー─カラミティ・ジェーン。
ライダー─プーディカ。
バーサーカー─清姫。
最後にシールダー─マシュ・キリエライト。
「ちなみにだけど聖杯を持ってるのはマシュ・キリエライトで間違いない。あのシールダーの盾の機能にしまい込むってのがあったはずだ」
そうでなくとも怪しい。
言葉にはしなかったけれど、デミサーヴァントであるマシュがこの場に聖杯を持たないで顕現できるのはおかしいのだ。
「なるほど。じゃあボクはどんな風に動くのを求められてるのかな?」
「メアリーは対マシュ・キリエライト用。…自分しか守るものがないシールダーなんて弱いけど」
どんな変化を経たかは知らないが、あの世界にいたマシュ・キリエライトはなぜか武器の使い方が上手い。
「そんなに強いかなぁ。正直風香のほうがよほど厄介だけど」
「まぁ身一つで生存しなきゃいけないってことも生前はあったからな。サーヴァントと戦うならよほどのことがなければ勝てる」
くぁ、と小さく喉を鳴らすアクビ。メアリーやジャックとの戦闘から若干昔のときと癖を変えた。
「あとワガママだけど殺し合い中に当てるかもしれない。銃ならともかく近接はどこにいるかわかりにくい」
「いいよ。ボクも当たるかもしれないし恨みっこなしだ」
「じゃあそういうことで。仮に死なれたら困るからある程度は生かすつもりでやるけど」
最も、あくまで形だけだ。わざわざ味方を傷つけるような真似なんてできるはずがない。
(ま、俺の勝手な復讐だからな)
チャラチャラと軽い爪の音が手のなかで鳴る。
「どうせさっさと行かないと俺も襲いそうになるし速く行こうぜ。あんな白亜の城、壊したくてたまらない」
「…うん。陽動はボクもやるから二人でかき回そうね」
笑ってくれたメアリーに、どんな顔をして返したのかはわからない。
「殺しに行くぞ」
どんな思いだとしても、きっと醜くて愚かな怒りに満ちた顔には違いない。
…立香には、見せたくないな。