世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
誰しもが思い出したくない記憶があるものだろう。
最も辛かった大学の受験のときとか。
部活の大会で僅かに勝てなかったときとか。
大切な人に裏切られたときとか。
ソレらの多くは夢の中で悪夢として見ることができる。普段から見る機会はないけれど、見たことは十分十二分にあり得る。
「…だからといって、再現する必要はないと思うんだがな」
知っているけど既視感のない天井。
まだ汚れていないベッド。
白紙のまま放置されていたレポート。
世界各国の歴史や神話について書かれていた本。
ここがなんなのかなんて考えずともわかる。前世で死ぬような経験をして最後に死ぬきっかけとなった場所。
「カルデアか」
左手に令呪が残る体であるのを踏まえると一周目だろう。アレを殺したから苦手意識が無くなったのかもしれない。
『あら、そうなの?てっきしアンタはカルデアについて何にも思ってないのかと考えていたのだけれど』
声が聞こえる。無遠慮で人にズカズカと踏み込んでくる声。
「一応死ぬ原因になった場所だぞ。覚えてないほうが無理がある」
『それもそうね。まぁいいわ、黒い扉を開けて次の場所に行ったら?』
「そうするよ」
ベッドから腰を上げて禍々しい黒い扉を開ける。声に従うことを躊躇する理由も特になかった。
続いていた場所は廊下ではなくローマの早朝。似つかわしくない赤黒い血の血溜まりと硝煙の匂いと倒れ伏した黒い影が大量にある。
「始めて人を殺した場所か」
オルレアンはゾンビだと割り切っていた。けれどセプテムでは別だ。
マシュ・キリエライトが攫われた。他のサーヴァントを呼べるほどの魔力量もなかった。
『サーヴァントの代わりに戦闘を行うなんてバカ、少なくともここで死んでいてもおかしくなかったわね』
「よく生き残ったよなあ」
我ながら死線を潜り抜けるということに対してのブレーキが効かなくなったのはこのせいだろう。
使ったのは爆弾だっけ、なんて思いながら地面にこびりついた目玉に睨まれる。
『でも喜んでなかったでしょう?』
「生き残ったことを喜んでいいかはまた別でな。こっからあの地獄は始まったわけだし─自分の幸せのためなら死んだほうがいいな」
人類最後のマスターなんて普通の一般的な高校生には過ぎた肩書きだ。
それを覚悟もなしに背負わされた。
『でも逃げるなんてことはできなかった、でしょ?』
「…言わないでほしかったなぁ、本当」
複数のサーヴァントのコミュニケーション。エネミーとの相性を考えたうえでの最低限の作戦指示。
令呪の切る場所。特異点における法則と黒幕の目的を探りながら解決。
「全部やらないと皆死ぬんだろ、ってそんな理由でやってたな」
「バカよね。皆救うなんて真似、元の私でもやろうなんか思わないわよ」
後ろから声。この古代に似つかわしくないローファーの足音。
振り返って彼女を見る。誰なのかはわかりきっていたから。
「久しぶりね。共犯者に選んだ風香」
そう笑った学生服の彼女、
全く表情を変えずに、俺を燃やした。