世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
彼に心はない。
そう気づけたのは私の作った特異点だ。
(尽く「正解の選択肢」を選べるのよねえ)
たとえそれがどんなに残酷であろうと、彼は無機質に数字の数だけを選択していた。
愛している者とか殺さなきゃいけない仇敵とか関係ない。ただ命だけで判別する狂気じみた人間。
「私は嫌よ。あんな英雄みたいな精神、間違いなく
その精神は高尚で立派で賞賛される─ソレが、人としての自我と混ざらなければ。
過去の英霊が証明している。
在りし日のクー・フーリンのごとく、
あるいは元のジャンヌ・ダルクのように誰も恨むことのない状態を気持ち悪いと思えないのと同じ。
(最初に私の特異点を解決したのは、マシだったのかもね)
あの頃はまだいきいきとして英霊とも楽しそうに話していたし、どこか余裕があるように立ち回っていた。
私が本当の特異点の主として送り込まれた理由はとてつもなくシンプルだった。
『ねぇさ、邪ンヌっち?オルレアンの記録の頃のマスターに戻してくんね?』
呼び戻されたら唐突に言われた言葉に戸惑ったのを今でも覚えている。特異点とは歪みであり、それを解決したら黒幕の私が死ぬのは確実だ。
『バッカじゃないの。そんなことをわざわざする理由なんて─』
『でもできるんだよね?マスターをどうにかして修復する程度にできるのは』
猫の目が私を貫く。彼女は至極まっとうに、彼を助けろと伝えてくる。私が応じるかどうかなんてわかってないのに。
『…お願い。アタシのできる範囲で対価は用意する』
『………』
考えてみれば悪い条件ではない。アヴェンジャーとして彼に復讐できる。
『どんな特異点にすればいいの?』
『え!』
『勘違いしないで。アンタの条件は満たす。その代わりにマスターが死んでも自己責任─どう?受ける?』
『…ふふっ、モチのロンっしょ!アテシのマスターが負けることなんてないんだから!』
彼女の要望通りに特異点を作成した。
腐り落ちたゾンビが集まる城。
龍や獣が蔓延る密林。
常に一撃で死ぬリスクの伴う研究所。
これらを乗り越えた先に─絶望以外の選択肢のない学園生活を。記憶がない一般人がまさか生き残るなんてそんなはずがあるまい。
趣味が多分に含まれていたとしても、彼にとって新鮮な刺激さえ与えられればそれでよかった─『生きたい』でも『殺したい』でも何か一つだけ感情を作り出せばいいとは彼女の弁だ。
「…皮肉なことよねぇ。夢の世界で常に変わる条件下に適応することで神秘をまとったんだから」
考えてみれば当然のことだった。リリスから見せられた資料にさえ兵士を殺しきって尚涼しい表情を浮かべる剣士として見れたのだ。
(ったく、特異点を解決してる感覚ですらなかったのかもね。ゲームに寄せていたのは事実だし)
時にはポリゴンに振り切れば気づくのではないかと考えたが、それは舐め腐ってると考えられるのが関の山だろう。
「ねぇ。あんたはどう思ってたのかしら?」
最後の総仕上げ。彼は恐ろしい方法で特異点を終わらせた。
四回目の裁判。共犯者が一人だけ他に生き残れる条件下で、彼は─
「自殺して、挙句の果てに黒幕の共犯者である私だけ生き残らせた。その理由も聞けなかったのよね」
目の前で燃やしたせいで困惑している彼に文句を突きつける。守ってくれていたから悪い人間とは思わない。
(風香。私はね、許せないの。見届けることしかできなかった私が)
彼の瞳から涙に等しい黒い水がこぼれ落ちる。本音かどうかなんて考える意味もない。
─だって、心の中だから。
「理由?んなもん覚えてない時点で大したことねえよ。消しゴム貸してくれたとかそんな程度だろ」
そんな程度だと、彼は笑った。
人に助けられることを当然と思わない。
人を助けることを当然としか思えない。
(…やっぱり、手遅れだったのかしらね?)
彼女が頼んできた時にはもう手遅れだった、そう判断するのはまだ速いと感じていた。
あくまでまだ間に合うのだ─ただし、一歩踏み出すだけで戻れなくなる崖の上という状態だが。
「まあいいわ。わざわざアンタを燃やしてまで
「選択?」
いまだに流れ落ちるものを拭うこともしないで彼は聞き返す。
「そうよ。少なからずアンタには選択する権利があるの」
一回目と同じような死を選択するか。
より狡猾で残忍な人理の救済を選択するか。
はたまた全てを捨てて私たちに縋って泡沫の夢に浸るか。
「どれを選んだところで碌な結末なんてないでしょうね。アンタはただでさえ死ぬ未来を覆し続けてしまったのだから」
複数の武器が浮かぶ。それぞれの未来を暗示した武器。
「後悔はしないで。これは、アンタの選んだ未来だから」
もうちょっとで作品終わりまーす(唐突)
手を出した武器は─
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ツギハギになった「一枚のカード」
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穏やかで傷ついた「紫色の鎖鎌」
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甘美で罪深い「黄金のリンゴ」
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自らを燃やし尽くす「黒い旗」