世界を救え?できらぁ! 作:星5すり抜けとNTRは悪い文明
バイキングから航海図を奪い取り、エウリュアレとアステリオスと合流した日の夜。
「嵐が吹いてくるからここで待機。ってわけで今日はアステリオスとエウリュアレの編入に乾杯だ!」
「「ウォォォォ!」」
当然ながら酒盛りをまたやっている。海賊とは昼に奪い、夕方に与え、夜は飲むもの。役職としての行動は常に正しい。普段は見ることがないがゆえの特有の荒々しさに立香はちょっと引いていた。
「なんだい?酒でも飲むかい?」
そうこうしているとドレイク船長がやってくる。手元には聖杯をジョッキ代わりにして随分とご機嫌だ。
「え、あ、その…」
「ほら、遠慮すんなって!キャプテンの酒が飲めないってことはないだろ?」
未成年だから、という言い訳は現代でしか通用しない。宗教上の理由と断るのも日本では見ないこともあって彼女は押し切られそうだった。
「ごめんドレイク船長、立香と二人きりで相談しなきゃいけないことがあるから」
後ろからそっと手を握られる。顔を見ずとも声だけで誰なのかわかるので安心して引っ張られていく。
「あ、えっと、機会があったら!」
「おう。若い二人で楽しんできなー!」
スタスタと連れて行かれたのは美しい星空と海辺。後ろでは振り回されて疲れたのかアステリオスが丸まっており、その横で寄り添うかのようにエウリュアレが寝ていた。
「どう?都会じゃ中々こんな場所は見られないだろう?」
「わぁ…!」
満天の星空なんか林間学校でしか見れないようなところだ。そして立香は諸事情でろくな思い出がなく、記憶に残っているのは二人で見ていた空だけだった。
「すごいすごい!マシュにも見せてあげたい!」
「…というかそこにいるだろ」
ピンとピコピコハンマーを投げた先にいるマシュ。盾で咄嗟に防ぐと顔の前で紙吹雪が。
「なんですか、これは…」
「ただのパーティーグッズ。あっちの宴会みたいに酒を使うわけじゃないけど軽く騒げないかと思って」
シラフでそんなことを言い、緩慢な動作で立香へとピコピコハンマーを投げる。緩い放物線を描いたソレがあたるまえにマシュは盾で弾き返した。
「…っし、コレでアンタは『俺より先にマスターを守った』わけだ。嫌といっても特異点解決はしてもらうからよろしく」
『なんなの風香!?結局なにがしたいの??』
「占い」
何の悪びれもなくタロットを用意する彼は笑いながら自分の周りに集めていく。トリックなしの魔術の無駄遣い、というのは立香にはわからなかった。
『絶対関係ないことしかしてないよね?マシュに喧嘩腰になる必要は?』
「ないですが何か?」
『『じゃあやらないでよ!!』』
「肝心なときに誰かいないとやらないってなるよりはマシでしょう?」
普段通りふざけているだけなのになぁ、と立香は思う。混乱する周りを見て笑って─そこから自分の敵を見抜くのが彼の常だった。
(今もそう、ってことかな…?)
いったい何を警戒しているのかはわからないけれど、彼にくっついておくのが最も安全な手段であるというのは確かだ。
「さて、立香。俺は気づいてるよ」
「ふぇ!?な、なにかな!?」
「迷ってるでしょ。…正確には自分の指示が正しいかどうか」
彼は普段よりも淡い笑みを浮かべ、タロットのカードは更に回転していく。紙と空気の擦れる音が変な緊張感をもたらす。
「いやね、俺も気持ちはわかるよ。唐突に巻き込まれて不安な中で唯一の知り合いがアホみたいに変わってんだもん」
そりゃ不安だよね、と心の中を当てていく。これも立香にとってはいつものことだった。
「だから気休めかもしんないけど占うよ。今のやっていたことはどうなのか─こうやっていいと決断するためのアドバイスみたいな感じでいいから、さ」
目の前のタロット。どれが正位置なのか、逆位置なのか。効果なんて何度やっても覚えきれない。
(教えてください。フーくんと一緒にいるために─どうするべきなのか)
息を吸う。吐く。もう一度吸う。そして回るカードの中から一枚だけを引き抜く。
「─汝の運命を告げる」
一瞬だけ、いつもの彼から離れて神聖な雰囲気を纏う。厳かで、優しくて、それでいて人智を越えた王の気配。
「女教皇─正位置」
その言葉と共に元の彼に戻る。
「意味は卓越した直感、内なる声に従う、冷静さ」
「…だから自分の思うがままに行動していいってさ。判断に関して間違えたとしても結局はいいところへと向かう」
選ばれなかった札を器用にしまいながら風香はそう宣う。
ある意味で無責任。
ただ、それくらいのほうが立香には心地よかった。
「…そうだもんね!なるようになれー!」
そんなふうに決意を固めると、祝福と言わんばかりに星空に流れ星がかかる。
そんな綺麗な雰囲気の中、カルデアから見ている二人に変な緊張が走る。
『ねぇロマニ。私いま計器の不調を疑ってるんだけど…』
『奇遇だね。僕も今唐突におかしなものが視界に入っているから現実を疑っているところだ』
「…恐らく事実だと思います。マスター、後ろを見てください」
マシュが後ろを振り返るのを促すと素直に彼女は振り返る。なんか妙に後ろが暗いな、なんて思いながら。
「どう、した、の…」
後ろにはとてつもなく大きな女教皇の像。先程見ていたあのタロットにそっくりだ。
『倒れ込んできたりもしない…というか中に聖杯入ってるんだけど!?』
「やべっ、今壊すわ」
パチンと指がなるのと同時に頭から灰になっていき、数十秒で聖杯と灰だけが残った。
『風香!今後戦闘以外でタロット使わないで!自分で引いたならともかく他人に引かせたら制御できてないし!』
「はいはい。じゃあこの聖杯は特異点が終わったらカルデアに渡すよ」
「…ふふ、しまらないなぁ」
彼を見ると、上には『属性:混沌・悪』と書かれていた。
(あれ…?あんな文字、書いてあったっけ?)
疑問を持つが眠気が勝った。
砂の上で倒れそうになると、どうやらとても柔らかい砂とシートが挟まった。
(心配性だなぁ、フーくんは)
真名が見えなかったのは─果たしてなにが原因なのか。
いずれにせよ、正解だったのだろう。
彼はきっと、嫌がるのだから。