愛しのシロちゃんを舐め回す   作:宇田川

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 公式からの供給も止まり、シロチャニウム不足が続く情勢に、ハーメルンの愉悦王であるあのお方がいらっしゃらない現在。我々にとってのスエズ運河、パナマ運河が封鎖された状況で何をするか。そう、自分の手でシロチャニウムを作り出すしかないのである。

 という事で初めまして、こんにちは。
 人生で始めての二次創作はBLEACHでデビューしたいと思っていたので嬉しいです。

 本当なら偉大なるあのお方の創造物まんまを書きたいのですが、如何せん私にはそんな能力も無ければ想像力も無いので、新たにシロちゃんを愛でる小説を書きました。愉悦要素は私の技量が足りず、美しく書ききれない可能性がありますので愉悦求めて読もうとしている方はご注意ください。

 また、私自身の欲望を注ぎ込んでいるので、苦手な方はご注意ください。


追記:この回ではシロちゃんまだ出てきません。


原作開始前
俺自身がこの世に生を受ける事だ…


 尸魂界には五大貴族と呼ばれる家紋がある。

 

 1つは朽木家。世界を盤石とするために規律を求めた者たちである。

 

 2つめは四楓院家。停滞した世界を前に進める為には、更に大きな循環の形を求めた者たちである。

 

 3つ目は綱彌代家。尸魂界の「過去」を管理する役割を持ち、全ての歴史の記録を求めた者たちである。

 

 4つ目は志波家。心を持つ虚を滅却ではなく浄化する道を探る者たちである。

 

 そして、5つ目は——

 

「当主様! ご息女がご誕生なされました!!」

 

「……女か、まぁいい、見せてみろ」

 

「そ、それが、誰も近づけないのです、母親であるリン様も、お倒れになられてしまい…!」

 

「なに……?」

 

 その時、屋敷に膨大で高密度の霊圧か満ちた。周囲の使用人達は皆息が詰まるように倒れ、当主自身も重苦しい重厚な霊圧に気圧されていた。

 

「うっ…あ……あなた……」

 

「リン! その子は、一体……」

 

 泣きもせず、最初から呼吸の仕方など知っていたかのように口を開き息を吸う。その赤子の瞼が開かれ、まるで黒曜石を散りばめたような青紫色の瞳で当主を見据えた時、まるで彼は自身がジリジリと焼け焦げるような錯覚を覚えた。

 

「……はは、なんという、化け物が生まれてしまったのだ」

 

 ——五大貴族の5つ目の家、王途川(おうとがわ)家は地獄と呼ばれることになる世界を抑える蓋となる世界を求めた者たちである。

 

 その日、王途川家本家にて、一人の赤子が、格という言葉で表するには生ぬるい、圧倒的な王者としての霊圧を以てして誕生した。

 

 ——————————

 

 

 気がついたらBLEACHの世界だった。

 

 いや、正直言うとすぐに分かった訳じゃない。私は今可憐なる少女としての生を全う中であり、良いと言えるか微妙な感じの家庭環境の中ですくすくと育っていた。

 

 きっかけは私が熱を出してぶっ倒れた事だった。急に頭がキリキリと痛くなったと思ったら、意識を失ってしまって、目が覚めたら医者に顔を覗き込まれていた。

 

 前世の記憶を思い出してからは1ヶ月間程は頭痛が続き、濁流のように流れ込んでくる数々の情報。

 

 おかげでその間は錯乱状態になってしまい、気が狂ったと思われて祈祷師なんかも呼ばれてしまった。

 

 何とか落ち着いた時、この家は貴族なのだという事を知った。それも五大貴族のうちの1家であるらしく、代々魂葬礼祭等地獄に関する業務を執行する家紋らしい。

 

 ……そんなの原作にあったっけ?

 

 私の記憶では、五大貴族のうちの1つはまだ明かされていなかった筈である。獄頤鳴鳴篇でこれから地獄についてが始まる!?のか!?という所で死んだのだろう。私の記憶は途切れており、こんな情報はなかった筈だ。

 

「つまり? 異世界転生で? ネタバレを食らったってことっすかねぇ……?」

 

 まさかのまさかである。聞いた事もないようなネタバレのされ方で、叶うならば師匠の漫画かQ&Aで事実を知りたかった…。

 

 しかし転生してしまったものは仕方がない、私は王途川家で一人娘として何とかやっていくしかないのである。

 

「リサお嬢様、こちらが本日の修練予定でございます」

 

「ありがとうね」

 

 私はスケジュール表を受け取る。そこには朝から晩まで鍛錬内容がビッシリで、食事の時間さえも分単位で決まっている。

 

 貴族の女の子なのだから、もっと花よ蝶よと育てられるのかと思っていたが、どうやら私には死神の素質があるらしく、こうして緻密なスケジュールで毎日バシバシ扱かれているという事だ。

 

 うちの家、王途川家は本来は裏方に属する事が多く、あまり表には出てこないのだそう。しかし、私という存在が生まれた事で、一気に方針転換して「これからはうちも表に出ていこう」と決めたらしい。

 

 中でも私はその筆頭らしく、今後は霊術院に入学して死神になる事が決定づけられている。

 

「君臨者よ、血肉の仮面、万象、羽搏き、ヒトの名を冠す者よ、焦熱と争乱、海隔て逆巻き南へと歩を進めよ——破道の三十一、赤火砲!!」

 

 私の両手の前から霊圧から成る灼熱の火の玉が放たれ、的に命中する。

 

「お嬢様は鬼道には十分長けていらっしゃいますが、白打と剣術がてんで出来ませんね。瞬歩は辛うじて出来るようですが」

 

「うぅ、分かってるよぉ、師匠……」

 

 そう、私は斬拳走鬼のうち、斬術、白打がダメダメという死神見習いとしてあるまじきステータスをしていた。理由は単純明快で、膂力が全くないからである。しかし筋力がないという訳ではないらしく、瞬歩はそこそこできる。

 

 その分、神様が付けてくれた転生特典なのかは知らないが、鬼道が圧倒的に天才級だった。師匠に教えてもらった鬼道は全て使えるようになったし、そこはもう一般隊士に比べても遜色ないという自負がある。

 

 ちなみに師匠には霊圧の閉じ方を教えてもらったりと、死神としての基本的な技術は全部この人から教えて貰っている。

 

 霊圧を自分で閉じられるようになるまでだいぶ時間がかかったが、それでもちゃんと出来るようになったのはこの人のおかげである。それまで使用人はおろか、両親でさえ気軽に私に近づけないという事態が発生してしまっていたのだ。

 

「ちゃんと毎日白打の鍛錬やってます?」

 

「やってるやってる! ほんとだよ!」

 

 うーん、ここまで頑張っていて1ミリも膂力のパワーアップを感じたことがないので、ここまでくると最早呪いの類なのでは?

 

「おーい、リサ〜」

 

「あ! お父様!」

 

「頑張ってるか〜? はは、相変わらず可愛いなぁ」

 

「え〜? へへ」

 

 ちなみに実の父親とも関係は良好である。本来はめちゃくちゃ厳しいタイプの当主だったらしいのだが、娘可愛さにこんなんになってしまったらしい。

 

 私の可愛さは、罪なのか……!

 

「次の当主はリサを据えるつもりだからな、頑張って強くなれよ」

 

「はいっ! お父様っ!!」

 

 だが私とて愛想を尽かされては困るので、一応きゅるきゅる可愛い娘モードで対応しておく。

 

「……」

 

 おい、師匠、呆れた顔をするな。

 

「今日の鍛錬は終わりなので、もう帰っていいですよ」

 

 この空気に当てられて投げやりになるな、師匠。

 

 師匠に挨拶をした後、お父様に手を引かれて屋敷へと戻っていく。屋敷に着いたら夕餉まで時間があるとの事なので、自室に一度戻ることにした。

 

「はぁー、今日も疲れた」

 

 私は座布団に座りながらふぅと息を吐く。

 

 ちなみにだが、私は無類のBLEACHファンである。

 

 原作も最後まで読んではいたが、アニメの方は最終クールが放送される前に死んで転生してしまった。え?私の前世は何してたかって? つまらない前世なんて死んだ今1ミリも気にならねーよ。

 

 そして鰤の世界に来たら何をするか、ファンなら骨の髄まで楽しみ尽くすに決まっているだろう。

 

 鬼道、斬魄刀、霊圧、護廷十三隊、星十字騎士団、霊王等々、かっこいいものを上げたらキリがない、全てが厨二病心をくすぐるオサレ師匠の素晴らしき世界。そして、魅力的なキャラクター達。

 

 私にはその中でも死ぬほど好きなキャラクターがいる。そう、十番隊隊長・日番谷冬獅郎である。

 

 133cmという身長から、子供隊長と言われる事もあるが、その見た目とは裏腹に氷雪系最強の斬魄刀を持つというギャップ。

 

 歴代最年少隊長であり、何かと噛ませ犬イベントも多いが作品中の戦績はトップレベルという、作中でも数を争う超人気キャラクターである。

 

 日番谷冬獅郎を舐め回したい。出汁を取れるだけ搾り取り、二郎系のような濃厚スープに仕立て上げて存分に味わいたい。

 

「まずは、原作通りのBLEACHを楽しみつつ、日番谷冬獅郎をネットリ味わいこの手に収める事を目標にしたいな」

 

 そのためにやらなければならない事は沢山ある。

 

「護廷十三隊に入隊するのは必須だよね。これはまぁ貴族として、霊術院への入学確約があるから確実だとして……というかまずはシロちゃんを私の恋愛の土俵に引き摺り出す事をしなきゃならないのか」

 

 原作で日番谷冬獅郎、もといシロちゃんは雛森桃と幼なじみ関係であったが故に藍染に対し激情を向けていた。が、その激情の出処は恋から来る物、というよりは昔からの縁または友情によるものだと思う……と仮定することにする。

 

 あの乙女ゲーの主人公とも称される美少女フェイスの雛森桃や、シロちゃん隊長の副官を務めたナイスバディ乱菊に恋に落ちていない(公式情報)という事ならば、彼のガードはかなり手強い。

 

「そうなると幼なじみや長年の同僚よりも別の関係性が必要なのか……」

 

 私も見た目は悪い方ではない。使用人や家族にはまるで美術品のように扱われるし、鏡で自分の姿を確認してみたらかなりの美少女ではあった。が、それで落ちるならもうとっくに彼の心は雛森桃の物である。

 

「親友、家族、仇、上司、部下……んー、どの関係でも難そうだなぁ……伴侶、ソウルメイトとか?あー、ダメだ、思いつかない……」

 

 もう行き詰まってしまった。頓挫までが早すぎてRTAみたい。

 ……いや、もしかして

 

「ソウルメイト作戦、割とアリなのでは……?」

 

 ソウルメイトとは、魂の深いレベルで結ばれた「魂の伴侶」のことである。前世から深いつながりがあり、出会った瞬間に懐かしさを覚えたり、言葉にしなくてもお互いを理解し合えたりする特別な存在の事だ。

 

 シロちゃんは流魂街から死神になった、いわば一般死神である。そして、流魂街に行く魂は現世で魂葬された霊力の高い魂であり、その理論で行けばシロちゃんは現世組。

 

 おそらく早いうちに死んでしまったのだろう。でなければあの幼さには説明がつかない。

 

「じゃあ現世でシロちゃんを探し出して深い関係になれば……なんかこう、魂の繋がりを感じて恋に落ちてくれるんじゃないか!?」

 

 よし、これで行こう。名付けて「ソウルメイト作戦」だ。名前安直すぎとか言うなよ。

 

 シロちゃんは推定160歳と言われていた。それならギリギリ江戸時代くらいに現世で探せばいるんじゃないかなぁ?

 

 それに彼は銀髪に翡翠の目という明らかに日本人ではない顔立ちである。黒髪黒目の日本人からそのような奇抜なカラーが生まれてくる事はほぼ0%に近いので、外国の血が間違いなく入っているだろう。

 

 恐らくは1854年の日本開国に伴う日米和親条約や、その後の列強諸国と結んだ条約により開港された函館、新潟、横浜、兵庫、長崎の5港のいずれの場所である。そこを集中的に捜索すればいい。

 

 当時の日本は外国人ともなれば相当目立つし、仮に日本人と結婚していたら大きな話題にもなる。

 

「問題は護廷十三隊として働きながら現世にシロちゃんと仲良くしに行かなきゃならないという所だけど……まぁ後で考えればいっか!」

 

 また、今が原作開始から160年以内であればこの計画は破綻する。だってもうシロちゃんこの尸魂界にいることになっちゃうもんね。

 

 あとは護廷十三隊での私のムーブを考えなければならない。

 

「まずは、原作知識ある事をどう活かすかだよなぁ」

 

 私は周りからの認識からわかる通り、そこそこ強いので、原作知識があれば平子達仮面組や、亡くなったキャラの救済、果てにはユーハバッハの野望だって止めることも不可能では無いかもしれない。が、私はそんな事には興味がない。

 

 私が心血を注ぐのはシロちゃんに関する事のみ。シロちゃんが全てであり、シロちゃんを舐め回しBLEACHの世界を楽しむ為にこの人生を使う。

 

「それはそれとして鰤世界は楽しみ切りたいよね、実際にこの目で劇を見れるようなものだし! よし、基本的に原作知識はイベント鑑賞と、シロちゃん追っかけ回す為だけに使おう 」

 

「あとは護廷十三隊でどういう立ち位置を目指すか、だよね。私はあくまで鰤世界をリアルに楽しみたいだけだから影の立役者ポジとか…? とりあえず、お父様は私を当主にしてくれるみたいだから、王途川家当主と隊長を目指しちゃう!?ふふ、四楓院家とか朽木家みたいに、当主との兼任ってのも強キャラ感出てオサレだもんね!」

 

 これにて私の今後の方向性はあらかた決定した。

 

「とりあえず今が何年か調べなきゃだよね」

 

 私はその日、お父様に今は誰が護廷十三隊の隊長を務めているのかを尋ねた。すると、

 

「今隊長なのは京楽春水と浮竹十四郎、卯ノ花烈に平子真子、曳舟桐生が居たかな。総隊長は変わらずだよ」

 

 との事。さらに、五番隊の副隊長も藍染惣右介ではなく別の死神が担当しているらしいので、魂魄消失事件よりもずっと前な事が確定した。

 

 

————————

 

「あー! 私も入学式出たかったなぁ」

 

 私は必要最低限の荷物を持って、真央霊術院の門をくぐる。

 

 本来なら三週間前に霊術院に入学する予定だったのだが、家庭の事情により都合が合わなくなり、一応名前としては入学しているものの本体はあとからの入学という事になった。さすがは五大貴族、そんな融通も効くんですね。

 

 お父様から家の方針として、王途川家として、初代護廷十三隊である王途川雨緒紀(おうとがわふるおき)以来の隊長になるようにと言われているので重圧はある。しかし私はこの厨二病感溢れる世界に胸を高鳴らせていた。

 

 図書室とか行ってみたいな、そこで鬼道の本とか読み漁りたい…鬼道は実に奥が深いので、研究のやり甲斐があるというものだ。いつか自分のオリジナル鬼道とか作りたいな。

 

「王途川さんは1組です。本来ならばあなたが首席なのですが、遅れての入学なので次席となっていますからね」

 

「はい、分かりました」

 

 真央霊術院には2つクラスがある。特進クラスの1組と、普通クラスの2組だ。家で師匠と鍛錬を積み重ねたお陰で、私は特進クラスに入れたようである。

 

「皆さん、新しいクラスメイトを紹介しますね、家庭の事情で入学式から今まで霊術院には来ていませんでしたが、これからは皆さんと同じ仲間です。では、どうぞ」

 

「はい」

 

 私は皆の前に立って、きちんと姿勢を伸ばして人あたりの良い笑みを浮かべる。

 

「王途川リサです、よろしく」

 

 にこりと微笑み、教師から案内された席へと着席する。

 

 ふぅ、ちょっと緊張したけど一言言うだけで終わっちゃったよ。そういえば私って繰り下げ?で次席になったって言ってたな、首席って誰だ?

 

 どうやら教室内の席は入学時の成績順で窓側前から順に席が決まっているらしい。なので私は窓側から2列目の1番前の席に座っている。

 

 ということは隣のヤツが繰り上げで首席になった運の良い奴なのかと、私は顔を拝んでやろうとそちらに向いた瞬間、私の体は氷のように固まってしまった。

 

 見間違える筈もない、茶褐色でふわふわとした髪を持ち、栗色の澄んだ瞳は光を宿していない。

 

 いや、見間違えというか、人違いかもしれないという淡い期待を込め、震える声を何とか正しながら、私は隣の席へと声をかけた。

 

「私は王途川リサ、よろしくね。君の名前は?」

 

「僕は、藍染惣右介だ」

 

 その時、私の心はバリンバリンと砕け散った。

 

 ————————

 

「見よろ、あんなに霊圧でかいのに女の子だぜ」

 

「しかもめっちゃ可愛い…」

 

「五大貴族の王途川家なんだろ? 話しかけられねーよな……」

 

 私はそんなクラスメイトからの尊望を集めながら教室の扉を手に掛け、横に引く。

 

 あれから1週間が経ったのに誰も友達が出来ていない。ま、まぁ女子の割合とか少ないし?仕方ないんじゃないかな?

 

 私はそんな言い訳を考えながら、隣の席に声をかける。

 

「おはよう、藍染」

 

「…………」

 

 これは、もはや毎日の習慣となった藍染への声かけである。動機は至って単純。ヨン様と仲良くなれたら面白そうだし、霊術院時代から関係作れる機会があるならそらやるよなぁ!?という話である。

 

 最初こそは「ラスボスになんてお気軽に話しかけられねぇ」とビビっていたが、今の彼は小学生の可愛らしいショタそのもの。無愛想な所はあるものの、そんな所は私の心が燃えるポイントだ。

 

 見た目は少し長めのふわふわの茶髪に、栗色の丸い瞳、おまけに身長も今の私と大して変わらない。声変わりが来ていない事もあり声もまた高かったりと、ショタ好きとしては…その…うふ、えふふふふ………。

 

 しかし、こちらは何度も声をかけているものの、彼は全くこちらの言葉に反応してくれない。多少する時はあるにはある、が、かなり稀であった。

 

 周囲をかなり拒絶し、見下している上に、放ち続ける圧倒的な霊圧。果敢にも彼に話しかけるのは私くらいだった。

 

 だが拒絶されればされるほど燃えるというもの。前世ではストーカーとして訴えられそうな気もするが、この世界にはそんな法律はないし、これはあくまで挨拶なのだ。そう言い聞かせて日々声がけに励んでいる。

 

 ————————

 

 

 そんなこんなで入学から数ヶ月が経過した頃。私は教室に入り荷物を机に掛け、隣の席の藍染におはようと声をかける。

 

 相変わらず反応は薄いが今は慣れたものである。

 

 そう、成果が出たのだ。なんと彼は返事を返してくれるようになった。私からすればとてつもなく大きな進歩だった。

 

 私は藍染の横に座りつつ口を開く。

 

「今日は鬼道の実戦授業だよね、藍染は自信ある?」

 

「あるに決まっているだろう」

 

 彼は本を開いたままこちらに目もくれず答えた。

 

「そりゃそうかー、そういえばね、今日は自慢したい事あるの!ふふ、楽しみにしといてねー」

 

「………………。」

 

 私はフフンと自慢げに笑う。この日の為に毎日努力を重ねてきたのだ。少しくらい驚いて貰わねば困る。

 

 藍染はもうこの時点で、他とは桁違いの強さをもっていた。

 

 彼の家もまた貴族の家のため礼儀作法は勿論の事、私の家と同様に家庭教師を雇って培った死神になるための下地も十分あり、他の生徒より頭ひとつ抜けていたのだ。

 

 恐らく今年の1回生で誰が強いかを話し合えば一番の座は藍染か私の名前が喧嘩をするだろう。

 

 私はというと、自分の有り余る霊力という力の使い方を学ぶのは楽しかったし、この体はスペックが良く覚えも良いようで1度学んだ事はスポンジのように吸収してくれる。

 

 前世では出来なかった厨二病ごっこに私は完全に夢中になっていた。

 

——————

 

「君臨者よ、血肉の仮面・万象・羽搏き・ヒトの名を冠す者よ、焦熱と争乱、海隔て逆巻き南へと歩を進めよ。―――破道の三十一、赤火砲。」

 

 藍染の放った赤い火の玉が的に的中する。

 

「流石首席ですね。藍染、合格」

 

「ありがとうございます」

 

 今は鬼道の実践授業中である。そして私はというと……

 

「破道の三十一、赤火砲!」

 

「1回生で詠唱破棄とは……見事です、王途川合格」

 

「ありがとうございます!」

 

  見たか……藍染!!

 

 私は彼に思い切りドヤ顔をかます。が、藍染はこちらを微妙な顔で見つめ、ふいと顔を逸らす。

 

 あれ?思ったより反応薄いな?私はこの為に毎日夜遅くまで訓練場に1人籠り、詠唱破棄の特訓をしたというのに……。

 

 声をかけてみようと私は藍染に駆け寄る。

 

「藍染! 見た見た!? 詠唱破棄だよ!」

 

「朝言っていたのはこれか。全く、詠唱破棄でそこまで自慢気になられても困る」

 

「君は出来ない癖にーっ、藍染が三十番代の詠唱破棄が出来るようになった頃には、私は五十番台の詠唱破棄が出来るだろーね」

 

 私が煽るように言うと藍染がこちらを向いた。

 

「ふ……僕も明日には可能にするさ、今に見ていればいい」

 

「えっ、今笑った!? 初めてじゃない!? 笑った、藍染がちょっとニコッとした!!」

 

「縛道の四、這縄」

 

「ぐぇっ」

 

「そこ、遊ばない!」

 

 私は巻き添えで教師にピシャリと怒られ少ししゅんとする。藍染はそっぽを向いたまま、手をパンパンと払う。

 

「……それに君はいくら鬼道が上手いとは言え白打は全くじゃないか」

 

「え、そんなに私の事見てたの?照れるなぁ」

 

「都合が悪いと誤魔化すのやめなさい。うさぎと亀で表すと僕が寝ないウサギで君は寝る亀なんだから、もっと努力したらどうだい?」

 

「なにその原作改変! というかサボってる訳じゃないもーん!」

 

 その通り、私は斬拳走鬼の内、白打が大の苦手だ。理由は膂力がほとんど無いからである。身長は143cmまで伸びたが、鍛え始めてから今現在まで自分の膂力向上を感じた事がないので、恐らく今後も殆ど伸びないと感じる。霊力でカバーも出来はするが、そのお陰でやっと試合成立になるという異常なまでの膂力の無さだ。

 

 最近なんて担任から、白打だけは2組に行ってみてはどうかと打診される程であった。底辺でごめんなさい…

 

 剣術も微妙。そりゃあ力がなくて刀が握れないんだから当然ではあるけどね。でも白打に比べ、技術で何とかなる部分が多いから少しは何とかしようがあるというのは救いである。成長スピードはマジで遅いけどね。

 

 瞬歩に関しては、膂力は無くても多少は脚力があった私は、持て余す霊力をとことん使い、授業でも上位にくい込んでいる。

 

 鬼道は言わずもがな。私にとって最大限の強みであり、有り余る霊力を存分に発揮出来るのもあり一番得意だ。授業では毎回好成績だし、学長からも直々に「霊術院開校以来の鬼道の天才」とまで呼ばれてしまった。

 

 そして私はこれら才能にかまけることなく、霊力操作の向上として、寝てる間に自分の身体の上に霊力の玉を作り浮かび上がらせるトレーニングをしている。

 

 最初は1つから。霊力操作が眠りにより鈍ると自分に玉が直撃し痛みで目が覚める。

 

 これを毎夜繰り返し、今では13個に増やすことが出来た。そのお陰で無意識下の霊力操作と霊力の正確性が高まり、精密な霊力操作が可能になった。最小限の力で最大限の力を行使するというのが何の科目においても必須だからね。

 

「はい、今日の実習はここまで。皆来週までに振り返り文章を書いてくること、以上」

 

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 

 

——————

 

 

 

 食欲の秋、芸術の秋、武術の秋……。霊術院の木の葉も枯れ落ちた頃……

 

「ロンダニーニの黒犬は、そもそもロンダニーニというのはイタリアのロンダニーニのピエタ像から取っていると私は思うの。あれは未完成の作品だから、完成まで彫刻を守るという意味での黒犬なんじゃないかな」

 

「黒犬はそもそも外国では不吉な動物扱いなのだろう。未完成だからこそ、作者が怨念として犬に成ったという解釈も出来る」

 

「確かに、それありそう! となると、対象を捕縛する赤い光は怨念ってことかな、面白いねー」

 

 このように……ちょっとだけ、?藍染と仲良くなりました!!

 

 ここまで色んな苦労がありました……話しかけても無視されたりあしらわれたり。でもまぁ、最終的には私に友好的になってくれて良かった良かった。

 

 藍染は中々面白い奴で、話していて楽しいし、教養の深さをとても感じる。それに、持ち前の戦闘能力の高さで一緒に訓練していて非常にお互いを高めあえるのだ。

 

 そして今、私達は図書室で鬼道の本を開いていた。ここには現世の様々な本や、尸魂界の本、武術に関する本まで様々なものがある。

 

 なかでもお気に入りは鬼道コーナー。鬼道の歴史や成り立ち、果ては開発者の自伝等本当に沢山の蔵書があり全く飽きない。

 

 最初は私だけが図書館に通っていたのだが、いつの間にか藍染も現れるようになり、こうして今も話しているという訳だ。

 

 まぁ藍染も何だかんだ楽しそうなので…ヨシ!

 

「そういえばこの前の現世実習、楽しかったね! 現世ってあんな感じなんだ、尸魂界とあまり変わらないね」

 

「特に事故も無かったからね。先輩達が僕らよりも弱いものだから、こちらがヒヤヒヤしていたよ」

 

「しー、聞こえたらどうすんの」

 

「ふふふ、事実だろう?」

 

 なんていう奴だ藍染惣右介、本当に聞こえていたら上級生からシバかれるぞ。

 

「そういえばこの前、お父様からお金使いすぎって叱られちゃってさ」

 

「君は鬼道に関する書物に浪費し過ぎだ。その類は大抵値が張るのだから、少しは控えなさい。死神になれば給料も多く貰えるから、それまでの辛抱だ」

 

 えーん悲しいよう。でもどの本も面白すぎるし解釈とか学びになる事ばっかでつい色々買っちゃうんだよね。

 

「うーん、そうだね。副隊長にでもなればお父様も私のこともっと認めてくれるだろうし! よし、今から浅打の対話に挑戦してくる! 今ならなんか出来る気がする!」

 

「えぇ…」

 

 私は藍染に手を振り図書館を後にする。

 

 腰にぶら下げている1本の刀を撫でる。これは、つい先々週程に私達1回生へ配られた1人1本の浅打である。

 

 そもそも浅打というのは、鰤に登場する斬魄刀の形態の1つである。零番隊の刀神、二枚屋王悦が創り出した斬魄刀の原型であり、全ての死神が最初に手にする刀だ。

 

 この浅打を己の斬魄刀に創り上げるには、浅打と寝食を共にし、己の魂を写し出さなければならないため、私は常に帯刀していた。

 

 自室の扉をパタンと閉め、荷物を全て机の上に置き布団の上に座り、座禅を組んでその上に浅打を乗せて意識を集中させる。

 

 姿勢を正し、他のことの一切が気にならないほどに深く、何よりも深く集中していく。

 深く深く、膝の上の浅打1本に心を絞る。

 

 ————————

 

「…………ダメだっ、全然出来ない!!」

 

 坐禅を組み4時間程経過しただろうか、私は変わらない自室の景色に悪態をつく。

 

「なんでダメなんだろう、愛が足りてないのかなぁ。浅打ちゃぁーん、返事をしておくれー」

 

「浅打ん、早くその姿を見せてくれ〜」

 

 頬を擦り付けても反応は無いようだ。

 

 全く、これを与えられてからというもの毎日のように一緒にいて今日の出来事を話しているというのに。

 

 「あ、今日はね、藍染と図書館で鬼道の解釈してたんだ。やっぱり鬼道ってのはロマンがあるよね、知れば知る程奥が深いし、先達の凄さが分かるっていうか…あ、そういえば私、オリジナル鬼道挑戦しようとしてるんだ。前世にあったアニメの技とか使いたいじゃん? 再現しようと思って」

 

 私は反応のない浅打にベラベラと喋りかける。

 

 「でね、その授業ウトウトして居眠りしちゃってさ〜っ、そしたら藍染が起こしてくれたの。今度お礼しなきゃね。あ〜あ、藍染がシロちゃんだったら良かったのになぁ。あ、シロちゃんてのは日番谷冬獅郎って人で、まだこの世界には居ないけど私の1番好きな人! 霊術院に入学する前から卍解が使えちゃうんだよ!」

 

 まずい、シロちゃんについて語り出すと止まらない。明日も授業がある私は浅打との対話を切り上げ、寝る支度をする。

 

 もちろん浅打と一緒に寝る。

 

 寝ながら霊玉を浮かび上がらせるトレーニングも安定してきており、最近は霊子で寝台を作りその上に寝るトレーニングも追加した。

 

「おやすみ、浅打ん」

 

————————

 

「なにこれ」

 

 意識がはっきりとしているのに、夢と自覚出来るのに、匂いも音も触覚もあるのに、

 

「私の部屋じゃない?」

 

 私は自室とは全く違う場所にいた。

 

 立ち上がって歩いてみると、景色が高い。どうやら高い塔の中にいるようだった。

 

 おまけに塔の内部は赤を基調とされており、所々金や緑の装飾、工芸品が飾られている。

そして…

 

「おい」

 

 ……なんか女の子いるんですけど?

 

「おれがあんたの斬魄刀だよ」

 

「…え?」

 

 ちょっと待て、斬魄刀?——まさかこれ……

 

「斬魄刀との対話、成功しちゃった…?」

 

 まさかのまさかである。

 

「おれはあんたの心の半身だからな。お前の事は何でも知ってるぜ、転生者な事も、この世界が創作な事も、あんたが前世で友達がいなくて漫画にのめり込んで——」

 

「ちょちょちょ、それは言わなくていいから!」

 

 私はまさかのタイミングで掘り起こされた思い出したくもない前世の記憶をカミングアウトされ、これ以上思い出す前にと全力で口を塞ぎにかかる。

 

「んごごごごっ」

 

「あ、ごめんごめん」

 

 口を塞ぎすぎてしまったようで、顔が真っ赤になってしまった幼女。いや、幼女?一人称はおれだし、でも見た目は可愛らしい女の子。跳ねっ気のある黒髪に、私よりも随分小さな身長。険しい顔をしているが、笑顔で黙っていれば美少女と称される類のものだろう。

 

「っふぅ、っはー。あんた、おれの名前聞きに来たんだろ?」

 

「あ、そうそう! まさか寝てる間に会えるとは思わなかったよ〜」

 

「あ? あ〜、まぁそれはたまたまだ。毎回出来る訳じゃねェから気をつけろよ」

 

「へぇー」

 

 幼女は私の手を振り払い、腕を組みながら目を細めて、冷たい視線を私に送る。

 

「別におれの名は教えてやっても良い。何なら卍解させてやっても良い……が、お前、そんな精神状態でこの世界生きていけると思ってんのか?」

 

「え、名前に卍解まで! って、精神状態?」

 

「あぁ……だが、そろそろ時間みてぇだな」

 

 幼女が下に視線をやったので私も見てみると、黒い水が湧き出て、どんどん水位があがっていっていた。

 

「え、なにこれっ、ちょ、溺れるー!!」

 

 口の辺りまで水位が上がり、とうとう息が出来ず目を瞑ると辺りの音は全て消え、無音の世界となり。

 

「っ!! っはぁ、はぁっ、はぁっ」

 

 私はいつの間にか、元いた自室の布団の上にいた。手を額にやるとびっしょりと汗をかいており、水浴びしなければ今日の授業に出れないことは確実だった。

 

「これって、対話成功で、いいんだよね……?」

 

 当然その自問自答に返事は帰ってこず、朝の静けさが残るのみ。それにしても精神状態とは何だろうか、そんな疑問を浮かべつつ、水浴びをする。タオルで髪の毛までよく拭いたら、いそいそと授業の支度をし、自室を出る。

 

 もうその頃には悪夢のような精神世界体験よりも、斬魄刀との対話が成功した事の喜びが勝っており、鼻歌を歌いながら廊下を歩く。

 

 私は昨日の出来事は必ず藍染に自慢しようと心に決めながら教室に入る……前に、職員室に寄り担任に精神世界へ行けた事を報告しておく。こういうのも成績の評価に関わってきたりするのだ。

 

 ちなみに、私たちの時代には飛び級制度はまだない。精々あるのは卒業後の席官確約制度くらい。

 

 報告を終え、私は教室に1歩足を入れると、そこには既に着席し、背筋を伸ばして文庫本を読む藍染の姿があった。

 

「おはよう、藍染」

 

 声をかけると藍染は本をパタンと閉じ、相変わらずの無表情でこちらに顔を向けた。

 

「おはよう。で、昨日は精神世界に行けたのかい?」

 

「ふふん、聞いて驚いてよね」

 

 私が椅子を引いて座りながらドヤ顔でそう枕詞を置くと、藍染は少し目を開く。

 

「まさか、」

 

「斬魄刀ちゃんと対話成功しましたー!」

 

「…はぁ、君がそんな顔をするから、名前まで聞けたのかと思ったよ」

 

 藍染は少し期待はずれという風に口をへの字に曲げた。

 

「でもおめでとう、これで始解への1歩だね」

 

「なんでそんな呆れ顔なの! 藍染はまだ精神世界すら行けてない癖に!」

 

「僕もそのうち出来るよ、すぐに君を追い抜く」

 

 少し会話のボリュームが大きかったようで、私の発言した「精神世界に行けた」という事でクラスメイトがざわざわしだす。

 

 ちなみに霊術院1回生で斬魄刀との対話に成功するというのはかなり早い部類である。

 

 シロちゃんや市丸は霊術院生でありながら卍解に成功した事で飛び級をしたし、檜佐木は始解が出来たので卒業後の席官の座も約束されていた。が、そんな人物は極々ひと握りであり、実際大半の生徒が斬魄刀との対話に成功する事なく霊術院を卒業していく。

 

「これ、1回生で1番の速さだよ。さ、首席の座は明け渡して頂こうか」

 

「筆記試験万年次席が何を言うんだ、おまけにそれ以外も万年次席じゃないか」

 

「鬼道は私の方が上ですー、鬼道次席サンは斬魄刀と対話してから口をお開きくださーい」

 

「…浅打を持て、今から修練場に行こうじゃないか」

 

「望む所だよ、私の方が上って事を知らしめてあげるよ」

 

 まさに一触即発、お互いの視線に火花が散るが、

 

「はい、授業始めるよー」

 

 教師が教室内に入ってきた事により、そのピリついた空気は一瞬で解けた。

 

 ちなみに授業後に対戦したら負けました。……これが分からせ?

 

——————

 

「久しぶりーっ、幼女ちゃん」

 

「そんなに久しいか? あとおれは幼女ちゃんじゃなくてちゃんと名前があるっての……はぁ」

 

 何せ今私は霊術院4回生。1度目の対話成功から3年間、1ミリたりとも会えなかったのだ。そりゃ久しいだろうが。

 

「だいぶ前すぎて若干忘れてるんだけどさ、私の精神状態が何だって?」

 

「あんたの精神状態な。まず、前提としてあんたは転生者だろ?」

 

「そうだね」

 

「普通なら、この世界でも元いた世界と同じように人間関係が構築できるんだ。友人や恋人が出来、別れがあり、そこに涙することや悲しむだろう……だが、あんたは違う」

 

「……?」

 

「あんたはこの世界を本物だと思っていない、いや、思えない。友人が出来ても、それはどこまで行っても物語の登場人物だし、恋人に送る感情に至っては独占欲の化身になるだろうな。そこに恋愛感情など1mmも芽生えない……まぁ、何が原因かって言ったら、前世であんたはずっと入院生活で1人きり。思想を拗らせに拗らせた——」

 

「だーかーらー! 前世の事はいいの! 忘れろ!」

 

「っおお、すまんすまん。で、あんたは言わば異常者だ。あんたがこの世界でどこまでやって行けるか、おれは見物するとするよ」

 

「えっ、ちょ、君の名前はなんなのよ、まだ消えないで!」

 

 だんだんと姿が薄れ透明になっていく幼女を、手をブンブンと振り回し呼び戻そうとする。

 

「そうだったな、おれの名前は水滸伝。孤独で友達がいなかった前世のあんたが作った——」

 

 空虚な英雄達(お仲間さん)の集まりだよ。

 

 ————————

 

 拝啓、前世の私へ

 桜が咲き、風が暖かくなる頃。なんやかんやありまして、本日、霊術院を、卒業、します!!

 これで私は確実にシロちゃん攻略RTA人生を歩む事が出来ますね…。

 

 ちなみに霊術院でこれまでにあったことは藍染バーン!始解ドゥーン!卒業イェーイ!、以上!

 

 本当にこれ以上に特筆すべき点はない。

 

 まず初めの藍染について。

 

 彼は、4回生の時精神世界に行き、名前を一発で聞き、始解習得を完了させていた。

 

 能力を聞いてみたら——

「僕の斬魄刀は鏡花水月と言ってね、流水系の斬魄刀で、霧と水流の乱反射により敵を撹乱させ同士討ちにさせる能力を持つんだ」

 と言われた。こ、こいつ…嘘ついてやがるぜィ!!

 

 彼の代名詞でもある鏡花水月。

 

 実際はそんな生ぬるい代物ではなく、解放の瞬間を一度でも見た相手の五感・霊感等を支配し、以降解放の度に何度でも相手を支配していくことが出来る「完全催眠」という能力を持つ恐ろしい斬魄刀である。が、どうやら私にも隠し通す気らしい。

 

 藍染はいつの間にか身長も伸び、声変わりもし、一人称も僕から私へと変化していたし、冷酷なショタから柔和な好青年へと成長していた。

 もうショタじゃない……可愛くない……っ

 

 一方私はというと、対話成功が1回生なのに対し、4回生でやっと始解を習得する事が出来た。

 

 その際、私の精神状態がどうのこうのと色々言われたが、今はそんなに違和感を感じる事はないので放置している。

 

 また、始解習得に併せて鬼道衆からの打診と、席官の確約も来た。

 

 私の鬼道が見込まれて、鬼道衆からは割と良い席を用意してもらったので、鬼道衆1本で行こうかと思っていたのだが、七番隊の愛川隊長から「兼任でも良いから…!」と12席のポストを頂いたのだ。

 

 それならとお言葉に甘えさせて頂いて、私はこの兼任体制を選んだのである。

 

 何故兼任でも良いから席官のオファーを出したのか1度聞いてみた所、今の七番隊はあまり席官が充実出来ていなかったらしい。そこで、白打や剣術等に不安はあるものの、鬼道に関してはギンギラギンでピカイチの私に白羽の矢が立ったという事らしい。

 

 藍染も同様に、平子隊長から16席の確約を貰っていた。

 

 以前私より立場が低い事を弄ったら、

「僕は目先の利益に飛びつく君とは違って隊を選んだからね」

 との事。ちなみに、五番隊を選んだ理由はあまり教えてくれなかった。

 

 回想はこの辺りにしておいて……死神は歳を取らないとはいえもう卒業、ついに護廷十三隊入隊である。

 

「卒業生代表、藍染惣右介」

 

「はい」

 

 藍染はずっと強かった。原作でも度々語られていたが、彼は本当に全てを満遍なく完璧に鍛え上げる努力家であった。

 

 正確に言えば鬼道分野では私が圧倒出来たが、それ以外、私は全て次席。私なんか白打分野は毎回補習で、教師から本当に残念な生き物を見るような目で見られる程ダメダメだった。

 

 しかしまぁ思い返してみると、ラスボスと過ごす青春も中々面白いものだったように感じる。

 

 最初こそは冷たくあしらわれ若干辛かったが、少しずつ心を開いてくれるようになったので恋愛ゲームみたいで楽しかった。

 

 今ではよく訓練を共にする仲だし、たまに外食にも行く。ちなみに3回に2回は奢ってくれるゾ!

 

 それにしても彼はここ数年で全く変わった。完全に自分を取り繕っているというか、皆の理想の姿を演じるようになった。彼は周りの人間全てを、息をするように騙すことができるし、本人も自然とやってのけるのだから天性の才能だろう。

 

 鏡花水月は、そんな心の写し身だからこそあの能力なのだと納得できる。もし、私にも本音を隠し続けているのだとしたら少し悲しいな、とは思うが。

 

「——王途川、卒業おめでとう」

 

「藍染も、卒業おめでとう!」

 

 こちらに向かって砂利を踏む音が聞こえたので振り返ると藍染に声をかけられた。

 

 いつもの見慣れた霊術院の制服ではなく、護廷十三隊の黒い着物の袖に手を通した藍染はにこりと笑っていた。

 

「そういえば、藍染は1回生の頃からだいぶ変わったよね」

 

 私は藍染が何を目指してるのかは知っているが、その心の内は全く知らない。

 

「———頑張ってね」

 

 原作再現の為の悪役ムーブ、頑張れよな!!(心の声)

 

「あ、入隊してからも仲良くしようね。私達、友達なんだからさ!」

 

 私は藍染に手を振って、その場から走って離れる。

 

 これから瀞霊廷内にある席官ハウスにお引越しなんだから早めに移動しないと不味い、ささ、準備するぞー!




 一応、原作開始までは執筆し終えておりますので、お試しという事で投稿してみました。

 ただ、原作開始(一護登場)まで10万文字以上の文章量がありますので、本作では中々主人公達は登場してくれません。


 あとアニメめちゃくちゃかっこいいですね、特に浦原喜助がめちゃくちゃかっこよくなっていて惚れました。来週はシロちゃんが活躍するそうなので楽しみです。

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