本日投稿2話目、前話の続きから。
「すいか美味しいね〜、持ってきて良かったー!」
「美味しいが、種が多いな」
「じゃあ私が食べてるのいる?これ種少ないよ、はい、あーん」
「…っ! や、やめろ!! ったく……」
ここは天国なのでしょうか、いや現世ですね。
私は今幸せの絶頂期にいます。いえ、ずっといますね。
現世に来てから約5年。大好きなシロちゃんといっぱい会話できるし、シロちゃん見れるし、シロちゃんの吐いた息吸えるし…ここはやっぱり天国ですね。
ちなみに私が幽霊が見える体質である事は早々にカミングアウトした。どうやら私の予想道りシロちゃんも資質があるのか、何となく幽霊が見えるのだそう。
私が打ち明けた時のシロちゃんの顔はもうすごかった。まさかいるとは思わなかった同類に目を輝かせ、その体質であるからの愚痴大会が始まってしまった程であった。
また、私は前世の知識を活かして彼を落とす事に全力を尽くすべく、数々の恋愛心理学を利用した。
まず1つ目が初頭効果だ。
初頭効果とは、第一印象がその後の印象や相手に対する態度に強く影響することである。第一印象で与えたイメージは、時間が経ってもなかなか変わらないからね。
そのため、ファースト接触はとにかく気を張った。年頃の女の子らしく、かつ優しく話しかけ名前呼びまてわ成功させた。
2つ目は単純接触効果だ。
これは名前の通り、何度も彼と接触するようにした。要するに会う回数をとにかく増やしたという訳だ。というのも、人は同じ相手を何度も目にしているうちに親近感や好意を抱き始めるものだからである。
3つ目は、ウィンザー効果である。
ウィンザー効果とは、本人から直接聞くアピールよりも、第三者を経由して聞いた情報の方が、信憑性や好感度が高まる心理現象の事だ。これを利用し、私は女中の鈴木さんにとにかく話しかけた(媚びを売ったとも言う)。
おかげで鈴木さんからも私の名前が出て余計シロちゃんは私の事を意識するはずである。
4つ目は認知的不協和である。
人間という生き物は、自分を助けてくれた相手ではなく、自分が助けた相手に好意を持つ。
そりゃあ、どうでもいい相手なんて助けるわけないとみんな思っているからね。
だから、人はその矛盾をなくすために「自分があの人を助けたのは好意を持っているからだ」と思い込もうとする。
私はシロちゃんに教えてもらったコマ回し然り、幾つも自分のピンチを自作自演し、その度に彼に助けてもらうまたは教えてもらう事を意識した。
これ以外にも利用した恋愛心理学は山ほどある。が、挙げるとキリがないのでこれぐらいにしておいて…。で、今日は吊り橋効果を狙うべく夏祭りに行ってくる。
「じゃ、私は家に戻って浴衣にきがえて来るから。ふふ、楽しみにしといてね」
「誰がお前の浴衣を楽しみにするかよバーーカ」
「え? 夏祭りが楽しみなんじゃないの?」
「…ッ!! さっさと行ってこい!!」
「はーい!」
あぁ、顔を真っ赤にしたシロちゃんはなんて可愛いのでしょう。
私は思わず口角が危ない角度に上がる、が、顔の筋肉を総動員して何とか抑える。
私の5年間程の血涙モノの努力により、シロちゃんは無事私の事を意識するようになってくれたようです。あな、うれしからや………
「じゃあ、鈴木さんもまたね!」
「はい、待ってますよ」
私は現在養って貰っている家に戻る。
なぜ私の寄生先もとい養父の三津田家にここまで良くしてもらっているか、その理由は私が死を偽装したあの日まで遡る。
私はあの日、大虚と戦う前に1度尸魂界に戻り、万が一の為にと現世への任務の際コツコツと集めていた金貨を回収し、大虚と戦った。
その数120枚。前世における現代のお金に換算すると約3〜4000万円だろうか、1人の女の子を成人まで養うのに十分な額と一筆添えた手紙を用意した。
そして、1週間かけて手紙の内容を信じてくれそうな家主の家を選んだ。
手紙の内容はこうだ。
「この少女は幸運の女子なり。不当に扱えば不運が降りかかり、手厚く養えばたちまち幸運が舞い降りる」
竹の籠に入れられた私と、沢山の金貨と共にあったこの手紙を信じた三津田家主人は思惑通り私を養子として迎え入れ、無事私は安泰な暮らしを手に入れたという訳である。
幸運というのは私の前世における現代知識のことである。私は歴史が得意で自信があったので悉く言うことが当たり、予言者みたい崇められてしまった。あんまりこの人たちに話しすぎて正史を変えないようにしないとね。
とまぁこのようにしていい暮らしを手に入れた訳で。
「おかえりなさいませ、リサお嬢様。浴衣の準備は出来ておりますよ」
「ありがとうね、着付けもお願いしていいかな」
「勿論でございます、お嬢様」
うーんチヤホヤされるこの生活最高!もう尸魂界戻らなくていいかな…。そういえば藍染どうなった?貰った髪飾りは未だに付けてるけど…まぁ彼の事だし私の事とか思いっきり忘れてそうだなぁ。まーいっか!
「冬獅郎くん、お待たせっ!」
「お、おう、遅かったな」
私は浴衣姿でシロちゃんの前に現れる。
どうやらシロちゃんも浴衣姿で気合いを入れてきたようだ。か、かわいいしかっこいい〜…っっ!!
「今日は港の方のお祭りだからね、外国の人とかもいっぱい来るから見た事ない食べ物がいっぱいあるかも! 楽しみだねーっ」
「楽しみな所そこかよ、花火とかもあるだろ」
「花火も楽しみだし、全部楽しみ! あ、あと冬獅郎くん」
「ん?なんだ?」
「浴衣似合ってる! かっこいいね」
「お、お前、軽々しくそういう事言うんじゃねぇっ!」
「ねね、私は私は〜?」
「は、はぁ!?」
私はその場でくるりと一回転してみせる。赤を基調としており、白やピンク、黄色の牡丹柄がよく映える中々良い反物をこの日の為に仕立てて貰ったのだ。
「……………………まぁ、いいんじゃねーの」
彼は顔をそっぽに向け、耳を真っ赤にしながら消えるような声で褒め言葉を口にする。
「ほんと!嬉しい、ありがとう! ふふふ」
「おい、抱きつくなっ! 暑いだろーがっ!!」
「あ、ごめんね」
私はぱっと手を離す。こういうのは程々が丁度良いのである。
「じゃ、行こっか!」
「おう、迷子になるなよ」
「冬獅郎くんこそ! じゃ、鈴木さん、いってきまーす」
「ふふふ、行ってらっしゃい」
————————
「あいつどこ行った…」
日番谷は屋台で綺麗な簪を売っているのを見つけ、少し考え事に耽っていた。果たして似合うかどうか、ふとリサに目をやるとそこには誰もいない。
要するに、2人ははぐれてしまっていた。
勿論リサはそんな事をやらかす筈はない。明らかにわざとやった事であるのだが、ここにその事実を知るものは誰もいなかった。
「……くそっ、だから夏祭りは嫌なんだ」
彼は思わず悪態をつく。だが聞き入れてくれる者はいない。
日番谷はとりあえず人混みから抜けだすべく、屋台街から外れ少し暗いところへ移動する。
石の上に座りすこし休憩していると、そんな彼に声をかける存在がいた。
「なんだーコイツ、随分身なりのいいガキじゃねぇの」
「しかも真っ白の髪で目も色が違ぇな、おかーちゃんとはぐれちゃいましたかー? ぶははははっ」
「珍しい奴ァ高値で売れる。顔には傷つけんなよ」
明らかに夏祭りを楽しみに来た格好ではない、荒くれた3人の大柄な男。日番谷は幼いながらもこれが危険な者と一瞬でわかった。
「な、なんだお前ら!! 助けだってすぐ……うっ」
日番谷は立ち上がり吠えるが、その言葉は言い終わらないうちに男が腹に蹴りを入れる。
「ぁあ? うるせーな、ちったぁ黙っとれ。腕くらいなら切り落としたってェいいんだぜ」
「お、おい…さすがにそれはやり過ぎじゃあ」
「うるせぇ! おめぇも黙ってろ!!」
男は鞘から刀を抜く。暗いものの、日番谷にもその抜刀の音は届き、月光によって照らされた鉄は正しく恐怖そのものであった。
「ーーっっ!!」
まさに絶体絶命のピンチ。その時であった。
「おりゃー!!!」
「がッッ!」
「ウッ!!」
「な、どうしたお前ら!! なんだテメー!! ぐぁっ、痛えっっ!!!」
月光を背に木刀を持った1人の浴衣姿の女の子が現れる。
「冬獅郎くん、助けに来たよ!」
「…! り、リサ…!」
「冬獅郎くん! これを!」
そう言って宇田川は日番谷に木刀を差し出す。正直どこから持ってきたのかは分からないが今は気にする事ではない。
「…っオォーイ、誰だか知らねーが許さねェぞォ」
のそのそと先程リサにやられた男達は立ち上がる。
「冬獅郎くん、戦える?」
「……こんな事は初めてだが、出来る事はする」
「よし、じゃあいくよ!!」
リサは地面を蹴り男の鳩尾に木刀を突き刺し、流れるようにもう一人にも振りかざし男が倒れる。
だが彼女は気づいていなかった、リーダー格の男が刀を構えて振り下ろそうとしている所を。
「貰ったァァっ!!」
「え、えっ!? キャー!!」
「り、リサ!! くっ、何とかなれーー!!!」
日番谷は渾身の力を振り絞り、生まれて初めて握った木刀を男の鳩尾目掛けて突き刺す。
「ぐぁぁぁっっ!!あ、あ、あ」
男は目を見開き、刀を持つ手で自らの腹を抑え、相当痛かったようでバタリとその場に倒れる。
「っふ、っふ、っはァっ…」
「と、冬獅郎くん…」
アドレナリンが出て一時的な興奮状態の日番谷とリサの目が合う。その瞬間彼女の瞳に涙が溜まり。
「うわーーん、怖かったよー!!! ありがとう冬獅郎くん!! えーーん」
「な、泣くなよ…そっちこそ、助けてくれてありがとう。俺もリサが無事で良かった」
思い切りリサは日番谷に抱きつく。身長差はそこそこあるもののピンチを切り抜けた当人同士にとっては何ら気にならない。
「ううん、冬獅郎くんがやられちゃうと思うとすごく怖かった、それに私1人じゃ無理だった。助けてくれてありがとね」
宇田川は頬を染め瞳から涙を落としながら笑顔で日番谷に向き合う。泣いてはいるがあまりに綺麗なその顔に、彼が思わず見とれていたその時。
——バーーーン、ヒュー、……バーーン
「わ、花火始まっちゃった。とりあえずここから逃げて、どこか丘の上で見ようか」
「……そうだな」
「あ! 見てみて、あの花火冬獅郎に似てる! あれは鈴木さん!」
「なーにが花火に似てる! だ!! 花火に例えんな!」
「ふふふ、やっぱり冬獅郎くんと来れて良かった! ね、あそこに座って一緒に見よ!」
「ふーん、まぁ丁度良さそうだな」
「でしょー」
2人は先程の殺伐とした雰囲気から一転、和やかな雰囲気のまま歩き、リサが見つけた場所に向かう。その小高い丘には人がちらほらいるものの、人は少なく絶好の穴場スポットであった。
丁度いい石の上に腰掛け、花火を見つめる。
「なぁ、リサ」
「……ん?」
リサの内に渦巻くドス黒い期待など1ミリも知らず、日番谷は思ったことを口にする。
「来年もまた、花火見に来ような。俺強くなるから」
「!! うん! また、来年も一緒に来ようね!」
——————————
私はシロちゃんと花火を見て、シロちゃんと別れた後1人路地裏に立っていた。
「君たち中々良い演技だったよ、また何かあればよろしく」
「ありがとうございます、リサ様」
そう、今回の襲撃は全て自作自演である。シロちゃんに私を助けたという輝かしい成功体験を積ませる為だけに用意した劇場だったのだ。
「それにしても…あの方がリサ様が探す天の神子なのですか?」
「お、おい、お前」
「あぁ、そうだよ。正確に言うと彼はまだ特別な存在へと至れている訳ではないが、こういった経験により20を越えればあの子に天の神子が舞い降りる。その時私達は救われるのだ」
「おお、さすがです、先見の明に感服いたします」
私が頬を染めてそう演説をすると、彼らから感嘆の声が上がる。
私はシロちゃんに会ってから何もしなかった訳ではない。尸魂界に戻った時回道をより効率的に行う為に医学書を読み漁ったり、こうして宗教紛いな事をして信奉者を増やしたりしていた。
彼ら信奉者達は私が尸魂界に帰る時が来ればもう用済みなのでかなり適当な世界観の宗教にしてしまったが。
私は未だにキラキラと目を輝かせる彼らに別れを告げ、ヒラヒラと手を振りながら帰路に着く。
「今日の夕餉は豪華らしいから、早く帰ろーっと」
王「我を崇めよ」
皆さん、お気に入り登録&高評価ありがとうございます。
正直あんま反応無かったら投稿するの辞めようと思っていたのでめちゃくちゃ嬉しかったです。
あと、投稿している所はまだまだ原作が始まる気配は全くありませんが、今私が書いている所は丁度王途川と黒崎一護が相対しました。
掲示板形式とかもチャレンジしてみようかな…なんて思っていたり。
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