アンケートの投票で票がダントツだった20時投稿を始めました。
私が現世で雲隠れしてから早4年程、今年は私が祝う4回目の彼の誕生日だ。
「冬獅郎くんお誕生日おめでとー! はい、これ贈り物」
「おう、ありがとな。ん、万年筆か」
「見てみて、ここにね、名前を英語で刻印して貰ったんだよ」
「へぇ、すごいな……しかも書きやすい」
さらに、今日はお誕生日会という事でお泊まり会である。
鈴木さんが私たちにご飯が出来たと呼びかけたので、二人でそちらに向かい、作ってくれたご飯にいただきますと言って食べ始める。
もうシロちゃんは14歳。スクスクと育っていてお姉ちゃん嬉しいよ…なお身長はあまり伸びていない模様。
「そういえば、今後の進路はどうするの?」
「今の所教師になろうかと思ってる。もう顔も覚えてねぇ親父からは毎月お金は送られてる来るものの、いつ止められるかわかんねぇからな。先生が言うには成績も十分あるし、師範学校行けるってさ」
「へぇ〜、師範学校かぁ」
「師範学校なら学費もかからないし、卒業後は教師としての就職も確約されてる」
私はご飯をもぐもぐと食べながら、ふと気になった事を口にする。
「先生になるのかっこいいけど、師範学校があるのは東京だよね」
「あぁ、東京で寮生活だ」
「じゃああと2年もしたら冬獅郎くんとお別れかぁ、寂しくなるね」
「ばーか、まだ入学できるなんて決まってる訳じゃねーんだぞ」
「そりゃあそうだけども……」
シロちゃんはまだ見た目は子供だけど、毎年少しずつ成長して原作で樹林案にいた時の姿に近づいていた。
そろそろ彼は死んで尸魂界に行くのだろうが、未だにその死の原因に遭遇していない。
もし私が今ここにいることによりバタフライエフェクト的に死が回避されているならば、かなり不味い。
シロちゃんには尸魂界で氷の王子様張って貰わねば困るのだ、主に私が。
「「ご馳走様でしたー」」
「はい、お粗末さまでした」
「じゃ、ランプの石油も勿体ないしお布団引いちゃおっか」
私が自分の布団を敷いているとシロちゃんがこっちを見て口を開いた。
「そういえばリサも頭良かったよな、ならないのか? 教師とか」
「んー、私はお父様のお仕事の手伝いする事になってるから。養って貰ってる恩もあるしね」
「ふーん、そういうモンなのか」
お仕事のお手伝いという名の贅沢暮らし&居候ですね。
もし今の家を追い出されたら本格的に教祖業でも始めますよ、生憎信奉者はこの数年でかなり増えてくれたからね。私ってもしかして教祖的な才能ある!?
「石油ランプ消しますよー」
「「はーい」」
カチリという音と共に辺りが真っ暗になる。
「おやすみ、日番谷くん」
「……おやすみ」
なんか無愛想だなと思って横をチラ見したら耳真っ赤じゃないですか。思春期真っ盛りにこんな美少女と共に夜を過ごすなんて体験、そりゃあドキドキしちゃうよなぁ!!
そっぽを向いたままのシロちゃんをしばらく見つめていると、すやすやと寝息が聞こえてきた。寝てしまったという事は見放題ですね、では、いただきます。
私がシロちゃんをずっと見続けること2時間程だろうか。私もそろそろ寝ようかと目を閉じたその時。
「…おお、これは」
私は久々に感じた虚の霊圧に飛び起きる。
しかし、今の私はルキアに会う前の無力な黒崎一護みたいな感じだ。虚は視認できても倒すことはできない。
「しかも……この霊圧、近いね」
私は即座に起き上がり、日番谷家から飛び出す。するとそこには——
「グァァァッッ!!」
虚は辺りの木をバタバタとなぎ倒しながらこちらへ向かってきていた。
私は、騒音で目が覚めランプを手にした鈴木さんと、目が覚めたもののまだ寝ぼけているシロちゃんに手刀を叩き込み気絶させ両腕で抱え込み即座に家から離れる。
「とりあえず人の多い所に…! 斬魄刀も鬼道も扱えない今の私じゃあ残るのは純粋なフィジカルだけ。それじゃあ太刀打ちできない」
私は重い2人を抱えながらも必死に虚から逃げる。
純粋なフィジカルだけが残っているとは言え、並の護廷隊士位はある。虚から逃げ切るなど造作もない。
「ふぅ、ここまで来れば安心かな? 誰が派遣されるかでも見るとしますか」
私は2人を下ろし、地面に腰をかけ霊圧を探る。
だが、待てども待てども引っかかるのは虚の霊圧のみで時間は経過するだけ。この間に犠牲者が何人出ている事であろうか。
「お、やっと来たな…全く、こういう死神の対応の遅さは滅却師が怒るのも納得ですわ。さて、誰が来たのかな」
その時私は目を見開く。馴染みのある霊圧、忘れるはずがない。これはあの——
「藍染やないですか…こんな雑魚で出てくる奴じゃないでしょ…」
————————
「ふぅ」
虚を討伐し一息つく。
ここ6年で彼は順調に出世街道を歩んでいた。席次は3席に上がり、隊の中でも一目置かれる存在として同期や部下からも慕われていた。それなのに——
「なぜ出てこない、王途川」
藍染は、王途川を探し続けていた。今はもう尸魂界で彼女は死んだとされており、葬式も執り行われた上に墓まで用意されている。毎年命日には彼女と仲の良かった同僚や、女性死神協会の仲間が墓参りに来ていた。
今はもう、生存を信じている者など彼ただ一人。今回は消失した日に現世で得た確信の元に、任務をわざわざ七番隊から引っ張ってきたのだ。
「この辺りは王途川が失踪した付近だ、もう少し探してみるか」
高く跳躍し横浜の夜の街を飛び回る。霊力探知をしながら目視でも捜索するがいくら見回っても居ない。
藍染は深くため息をつき、穿界門を開く。
「……君は、どこまで僕を試すつもりなんだい」
————————————
虚出たと思ったらなんか藍染が討伐してくれてオールハッピーなRTA、はーじまーるよー
私は一息つき、両腕に鈴木さんとシロちゃんを抱え直して日番谷家に戻る。2人を寝室に戻し布団をかけてあげ、私もいそいそと布団の中に入る。
幸い被害があったのは森の木が薙ぎ倒されてしまった程度なので、これくらいならば翌朝2人が怪しむことはないだろうと思い瞼を閉じる。
「はぁー、私がいなきゃシロちゃん死んでたかもだよ〜……ん? まてよ…?」
私が居なきゃ死んでた、つまり、私が死ぬ原因を取り除いてしまったのだとしたら。
私の顔から血の気がサーっと引く。
「まずいまずいまずい! いや、生きてるから嬉しいっちゃ嬉しいけど、このままだとシロちゃんが尸魂界に来なくなっちゃう!!」
私はがばりと飛び起きる。今のうちに殺しておくか?いや、それだと私に恨みを持ったまま死なせてしまう。なにが穏便かつ私への想いをMAXにさせたまま死なせる方法は……。
そういえばアニメで浦原さんが言ってたな、尸魂界に来た死神で現世の記憶がある奴はいないって。
でもそれだと茶渡泰虎に救われたシバタinインコはどうだ?あいつは記憶を保ったまま尸魂界に来ていた。
アニメは制作陣がやりたい放題しているから中々師匠の意向が反映されてないって聞いた事があるな。もしそうならば特定の条件を踏むことさえ出来れば記憶を保ったまま死神になれるのだろうか。
「考えろ……考えろ私………。そういえば、朽木姉妹はどうなっていた…?」
朽木ルキアと彼女の姉、朽木緋真は何故、記憶を失っているにも関わらずお互いを姉妹と認識していた!?
「シバタinインコと朽木姉妹の点から考察するに、死んで尸魂界に行っても暫くは記憶を保っているのかな」
それらの記憶は数年で消えて無くなる。が、朽木緋真のように「姉妹である」事を覚え続けようとした物のみが記憶を保てるのだろうか?
「いや、何かを見落としている………人間は皆肉体に魂魄を持っている。器が死ねば魂魄は霊体として彷徨い、死神に魂葬して貰わねば尸魂界には行けず、虚となる」
原作で描写されていた、霊体となっているシバタと茶渡との記憶が、もしシバタは茶渡の事しか覚えてないのだとしたら。
朽木姉妹も様子からして恐らくあれは一家心中だろうが、霊体として彷徨う間に朽木緋真が、妹の事を認識していたから、覚えていたのだとしたら。
「つまり霊体としての交流があれば、記憶の保存は可能……という事か?」
全て私の推測であり、確証はない。私は研究者でもないし特段頭が良い訳ではない。が、やってみなければ分からない。
シロちゃんを人体実験に使うのは些か心苦しいが、ここまで努力して、どの道彼は私の事を覚えてくれないかもしれないのだ。少しでも覚えてくれる可能性に賭ける方がマシだろう。
「さて、彼の魂魄を傷つけずどうやって殺すか、か……」
私は起き上がり縁側から庭に降り、暫く歩いた所で手を口に咥え口笛をピーと鳴らす。
「——お呼びですか、リサ様」
「うん、えーと、風邪を引いている信者はいるかな?」
「風邪ですか……1人、男が昨日体調を崩したとの情報があり、医者による判別はまだですが症状から恐らく風邪です」
「彼の職業は?」
「確か、庭師です」
「いいね、じゃあ彼を明日この家の剪定するように言っておいて」
「かなり重い風邪のようですが……よろしいのですか?」
「うん、風邪では無いように装うよう、言っておいて」
「わかりました」
そう言うと男は跡形もなく走り去っていく。
まぁこの方法で上手くいくかは分からないが、出来る事はやってみよう。もし上手くいかずただ死ぬのみであれば、その時はその時。人造人間でも錬金術でも何でもして、日番谷冬獅郎を創り上げてみせる。
「……ん、ん……リサ? どうしたんだ? 外に一人で立って」
「あ、ごめんね、起こしちゃったみたいだね」
どうやら先程の口笛でシロちゃんを起こしてしまったようである。しかし言動から察するに、信者の事は見ていないようで何より。
「見てみてよ、星空が綺麗だよ」
「あぁ、それに今夜は満月だ、月が綺麗だな」
「……冬獅郎くん、月が綺麗の意味知ってるの?」
「ん? 意味なんかあんのか?」
「愛してます、だよ。うふふ、冬獅郎くんもしかして……」
「ばっっ、ちげーよ!! と、とにかく早く寝ろ!!」
そう言うとシロちゃんはさっさと布団の中に入っていってしまう。
待っててね、シロちゃん、今貴方を永遠に生き続けられる箱庭に送ってあげるからね……うふ、うふふふ
——————————
「ゲホッ、ゲホッ」
「冬獅郎くん大丈夫、?」
「あぁ、大丈夫だ。喉が悪いだけだろ」
日番谷は咳をしながらも宇田川を安心させるべくぎこちない笑顔を向ける。
「それにしても先週来た庭師、中々腕が良かったみたいだな、荒れてた庭木がすっかり綺麗になっちまった」
「そうだね、しかも無料でしてくれるなんて、いい出会いもあるものだね」
庭師、それは先週の事。いつも通り、リサと日番谷が遊んでいると突然、庭師を名乗る男が現れたのである。
曰く、これらの荒れ果てた木達を見ると着想が湧いてきて仕方ないから無料でもいいから切らせて欲しい、との事。
お礼として日番谷は夕飯をご馳走する事にし、3人で夕食を共にしたのだ。
彼はどうやら肺が悪いらしく、時折咳をしていたが、比較的軽い物である事であったし、何よりリサが気にしていなかったので、日番谷も気にしない事にしたのである。
「そういえば私の学校で風邪、流行ってるんだよねぇ、何人か友達が療養中だよ。冬獅郎くんも風邪じゃないといいね」
「あぁ、そーだな。てか、今日から暫く、港でお前の父さんと仕事があるんだろ? 早く行ってこい」
「あー! そうだった! じゃー行ってくるね、ばいばーい」
日番谷はリサが手を振り笑顔を向けて走っていく姿を見送り暫く目を話せなかった。
「全く、あいつは……」
元々、彼の世界には女中の鈴木しかいなかった。
もう顔も覚えていない両親や、人とは違う自分の髪色、瞳の色を気にしながら生きていかねばならず、誰かと笑い合うことも、誰かを待つことも、自分から誰かに会いに行きたいと思うこともなかった。
けれど、彼女と出会ってから、その日常は少しずつ変わっていった。
朝になれば今日は来るだろうかと考え、夏祭りでは彼女に似合いそうな物を探し、面白い話を聞けば次に会った時話そうと思う。
新しい遊びを覚えれば一番最初に見せたい相手は彼女で、嫌なことがあった日は「リサなら笑い飛ばすんだろうな」と、いつの間にか彼女の顔を思い浮かべていた。
気付けば、一人で過ごす時間より、彼女と過ごす時間の方がずっと自然になっていた。
彼女はよく笑うし、よく食べるし、うるさい。それにすぐ抱きついてくるし、時々何を考えているのか全く分からない。
なのに、日番谷にとってその全部が不思議と心地よかった。
師範学校へ行けば、この街を離れる。そうなれば、彼女とも今までのようには会えなくなるだろう。
そのことを考えると胸の奥が少しだけ苦しくなる理由を、彼はまだ知らない。これは憧れなのか、家族のような情なのか、友人だから寂しいだけなのか。
それとも、もっと別の何かなのか。
十四歳の日番谷冬獅郎には、まだその答えは分からなかった。
「ゲホッ、ゲホッ……そういえば、来週はあいつの誕生日か」
何を買ってやろうかと考える。去年はあれを贈ったし、一昨年はあれこれだった。今年で会えなくなるのだ、今までとは毛色が変わった物を贈ってやろうと、日番谷は立ち上がり家を出る。
王「現世たーのしー! 夢のシロちゃんライフ♡」
藍「王途川が見つからない…だと…!?」
明日はBLEACH25周年ですね。何か情報が出るのか?ドキドキ…
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