世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
――世界が更新されました。
――管理対象世界:放棄領域〘崩壊区画-4040〙〘崩壊区画-4044〙
――人口:106
――文明レベル:崩壊後
――信仰値:407
――神格評価:E
おおう……。
信仰値がどかっと増えた。たしかに私は日々こまごまとデバッグをしている。
だけど、それだけでこんなに増えるのはおかしいね。
ということはあれだろう。私になでられて満足そうにしているこの子が、また何かやったということなんだろうなあ。
「リオラ、信仰が増えた」
「おめでとうございます、神様。……いえ、お祝いする程のことでもありませんでしたね。神様の偉大さを世界が知るのは当然の義務です」
私の巫女が優秀すぎて、信者がどんどん増えていく。
ほんと、いい拾い物をしたもんだね。神様の仕事は世界の修正。
でも、その修正のための信仰を確保するために、他の神々は布教をしないといけない。
それを巫女一人で全部こなしてくれるのであれば、私は今後もデバッグに集中できるし人前に出ないでよさそう。
「いい子」
「は、はい! いい子にしています!」
私の口では、この世界の住民に信仰されるの大変そうだからなあ。
たぶん言葉足らずになってしまい、なんだこの神様? と思われるのが関の山だろうね。
「海人族は、大丈夫そうだった?」
「はい! しっかりと自分たちを海人族だと改め、神様の巫女は私だけであることを認めました!」
何をしてきたんだろうこの子は……。
やっぱりデバッグに夢中になっていないで、もう少し働きぶりを見ておくべきだったのかな。
でも、翼人のときも海人族のときも、任せっきりでこれだけの信仰を確保してくれたからなあ。
「他は?」
「結界を頼ることは止め、徐々に汚染海域にも馴染んでいました。そこでの生活も視野に入れているようでしたね」
「え」
「?」
そ、そっか~。思ったよりワイルドなんだね。海人族。
たしかに私は結界に頼るのはよくないと思ったし、一時的な対応として水の中の彼らが強化されるようにした。
だけど、それだけで汚染海域の生活まで考え出すとは……。
とりあえず死なないようにして、時間をかけて海の汚染をデバッグしようとしたんだけど、なんか予想外の結果につながっちゃった。
「海の汚染、修正いらないのかな」
「していただけるのであれば、海人族たちは泣きながら頭を垂らして神様に祈ると思います」
それはそれで嫌だなあ。
上位の神様たちと違って、私はそんな重すぎる祈りに慣れていないんだ。
私をがっつり信仰するのはリオラ一人でいい。
「……ただ、海を直すのは時間がかかる」
「であれば、無理はしなくていいと思います。あの者たちはすでに十分すぎるほどに神様から奇跡を授かりました」
そうだよねえ。
なんか思っていた以上の成果を発揮できたらしいから、このまま放置してもしばらくは絶滅なんてしないだろうし。
だとすれば、翼人のほうに戻って様子を見るのもいいかもしれない。
「翼人のところに戻ろう」
「……はいっ! 神様の御心のままに」
若干の間があったのは、やっぱり翼人のほうが苦手だからかな?
リオラが迫害され続けたことは、まだ彼女自身の中に深い傷として残っているのかもしれない。
なら、やっぱり私がめいっぱいかわいがっておこう。
◆
「て、転移するのって大変ですね。神様があそこまでしっかりと私を抱きしめないといけないのですから」
行きも帰りもかわいがってあげていたせいで、リオラは転移のことを勘違いしている。
「別に抱きしめなくても大丈夫」
「え、そうなのですか?」
「私がリオラを抱きしめたかった。……駄目?」
「めっそうもございません! いつでも好きなだけこの身を捧げます!」
おかしいなあ。誤解は解けたはずなのに、なんか余計にこじらせてない? この子。
ただ、まずは翼人たちの様子の確認だね。
システムが表示した人口を確認する限りでは、死者は出ていないだろうし問題はないだろうけど。
「……魔物の数が減ってる」
「そうなんですか? もしかして、翼人たちが狩りに出ているからでしょうか?」
「たぶんそう」
であれば、私の狙い通りにはなっていそうかな?
翼人たちは食料として魔物を狩るようになっている。
その魔物狩りのせいで死んでしまいそうだったので、魔物を倒してレベルアップするようにはしてある。
今はそれがうまく作用しているから、犠牲者なく魔物を狩り続けることができているっぽいね。
「私が様子を窺ってきましょうか!?」
翼がぱたぱた動いてかわいいね。
ただ、なんでもかんでもリオラに任せるつもりはない。
神として、たまにはしっかりと現地民の声も聞かないといけないのだ。
「ここから声を拾う。……リオラも聞く?」
「ぜひ!」
それじゃあ、さっそく音を拾って~。
ああ、ちょうど集団が見つかった。この翼人たちにしよう。
『オルンの言うとおりだな。魔物を倒すごとに強くなっている』
『ああ。だからといって油断は禁物だが』
『だな。確実に一匹ずつ倒そう。それで食料が手に入り、俺たち自身も強くなる。焦らずじっくりといこう』
ふむふむ。わりと受け入れられているね?
オルンっていう翼人が、うまく広めてくれたのかな?
翼人たちは生態の変化に疑問を感じることもなく、すっかりと受け入れているみたい。
それに、無茶をしちゃいけないとわかっているのもいいね。
これなら、翼人たちと魔物のバランスもよくなるはず。
『しかし、どれだけ倒せばいいかわからないのは困るな』
『俺たち、そろそろ汚染に勝てるようになったのかな?』
『下手に穢れに触れに行くのは怖いんだよなあ……。判断を誤ったらそのまま死ぬし』
『今となっちゃ魔物と戦うより、よっぽど命がけだよなあ』
む……。
なるほど、そういうことね。
翼人たちが魔物を大量に狩っている。最初は食料確保か、あるいは自身が強くなるためかと思っていた。
だけど、彼らにはしっかりとした目的があって狩りを続けていたらしい。
「汚染耐性の取得」
「海人族たちと同じところを目指しているってことですかね?」
「そうだね」
食料の危機や魔物の危機は、わりとどうにでもなっているんだろうね。
水も一応デバッグしたものがある。
そうなると、次は汚染に対してどうにかしたいってところだろう。
しっかりと自分たちへの脅威を理解し、一つ一つ何とかしようとしている。
その姿は私にとって好ましい。
なら、神様として少し力を貸してあげよう。
――管理コマンド入力
――[生態操作]
――対象:翼人種
――操作:自己情報可視化 付与
「これでよし」
「また生態を変更なされたのでしょうか?」
「うん。……あ、リオラも翼人だから変更されてるはず」
「ありがとうございます!」
まだどんな内容かも聞いていないのに、律儀な子だねえ。
というか、私がすることは相変わらず全肯定してくれる。
あ~癒される。私にとって最高の巫女だなあ。
「ところで、今回の変化はどのようなものなのでしょうか? 不肖リオラ! 神様の奇跡の結果をこの身で証明します!」
「ステータスって念じてみて」
「ステータス。きゃっ」
慣れてないと驚くかもね。
リオラが見ているのは、私たち神が見ているメニューと少し似ている。
というか、その一部が開示されているもの。
――自己情報
名称:リオラ
種族:翼人
レベル:10
加護:低位管理女神ナギの加護
称号:神の巫女
技能
・飛行
・神託
・魔物捕食
きっと、リオラにはこんなステータスが急に目に飛び込んできたはず。
……リオラにも、まだ汚染耐性はないね。こっそり追加しちゃおうかな。私の巫女だし。
「……」
泣いてるんだけど!? なんで!?
今度は何をやらかした、私!
「大丈夫?」
こんなときくらいもっと寄り添え私!
ああもう! 口が相変わらず回らなくて嫌になる!
「……はい。すみません」
「何か悲しかった?」
「いえ、逆です! 神様からの加護をいただいていた、それがうれしくて……!」
「あ~……」
あ、やばっ。それはそれで恥ずかしい。
思いっきり低位管理女神って書いてあるし!
低位かよ、と思われて去られるなんてことは……リオラはやさしいからないけど。
私にだって見栄ってものがあるんだよ。
「え~と、それは」
「あ、あの……ここに書かれていることって、本当の情報ですよね?」
「……うん」
あ~ばれちゃった。どうしようどうしよう。
低位女神ってこと、リオラも気づいたよねえ。
「あ、あの! こ、これはもしかして……神様の御名前でしょうか!?」
「え?」
名前……。ああ、たしかに書いてあるね。ナギって。
そういえば、私リオラに自分の名前言ってなかったっけ。
「そう。それが私の名前」
「神様の御名前を知ることができました! なんてすばらしい力なんでしょう!」
「そう。……よかった」
名前一つでほんとかわいいね、この子!
いやあ、まさか自己紹介すらしていなかったとは。
ただ、この場で知らせることができたし、まあ大丈夫大丈夫。
「それ、私の名前の一部」
「一部……ですか?」
「そう。……いずれ、教えてあげる」
「い、いいんですか!? 身に余る光栄です!」
余らないと思うよ。私の名前なんて安いもんだし。
ただ、この子たちには馴染みのない言葉だから、たぶんうまく発音できないんだよねえ。
そうなるとこの子自身が落ち込みそうだし、それはおいおい教えていくことにしよう。
さて、リオラが試してくれたから、翼人たちはステータスがしっかりと見えているとわかった。
これを共有してくれたら、彼らもきっと気付くはず。
技能欄に汚染耐性と表示されている者の存在に。