世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「げ……また来たのかよ」
嫌そうな顔をされています。……まあ、私のほうが嫌なんですけどね!
加害者のくせに、何を被害者よりも嫌そうにしているんですか。
私はあなたたちに受けた迫害を忘れていませんからね。
ただ、私怨と役割は別です。私の全ては神様のために。
であれば、こんな種族でも神様を信仰するのなら、神様に導かれる資格があるということです。
「神様の御言葉を伝えにきました」
「……聞こう」
向こうも同じようなものなのでしょうね。
私と会話はしたくない。だけど、神様の言葉とあらば無視はできないといったところでしょうか。
……神様の権威を振りかざしているみたいで嫌ですが、あの方の御力になれるのは事実です。
私の好みで職務を放棄する気などありません。
「あなた方は、魔物を倒すことで強くなれることは分かったと思います」
「ああ。今では以前よりもはるかに生気に満ちている」
「ですが汚染への耐性があるかどうか、それは試してみないとわからない」
「そうだな……」
「神様は、そんなあなた方のわがままさえも、どうにかしてくれました」
本当にもったいないですね。
海人族の面倒をみすぎたからと言っておりましたが、神様の御心のままにお救いするだけでいいはずです。
それに文句を言うような種族は、もとより神様に救われる資格なんてないのですから。
「ステータスと念じなさい。そうすれば、あなた方の現在の力量が見えます」
「ほう。ステータス」
話についていけない者と違って、やはりこのオルンという男は見所はありそうですね。
神様の御力を疑うことなく、新たな奇跡はすぐに享受する。
そうして神様に感謝するのであれば、信者としては合格といえます。
ただ、この男はそれだけでなく影響力もあるようです。
彼が試したことで、他の者たちも同じように神様の奇跡を試していきます。
試そうとしない者に対しては、神様の御力の素晴らしさを説いている様子……。
まあ、悪くはありませんね。あの海の巫女と同じように、神様の素晴らしさを正しく伝えてくれることでしょう。
「ほ、本当だ……レベル。技能」
「この技能の中にある汚染耐性というのが、それか!」
おや、オルンにはすでに汚染耐性があったようです。
神様も言っていましたが、素質によって取得できる時期は異なるそうですが、それだけ多く狩りをしているということでしょうか。
「レベルというのが強さの基準で、技能というのができることでいいのか?」
「ええ。それと加護と称号ですが……」
「加護と称号? どこだ? 名前、種族、レベル、技能……。他には何もないぞ」
……おかしいですね。私にはたしかに加護と称号が見えたのですが。
どうやら他の者たちも、四つの項目しか見えていないようです。
「いや、たしかに見える」
ただ一人。オルンを除いては。
「本当か? オルン」
「ああ。称号に語り継ぐ者と書いてある」
なるほど。わかってきたかもしれません。
おそらく、オルンは神様の偉大さを仲間たちに語っている。
そうして神様の布教を行い、信仰を得るのに役立っている立場なのでしょう。
だからこそ、語り継ぐ者として認められたということです。
きっと海人族の海の巫女であるネルシアもそうでしょうね。
ということは、見えていない者たちには、まだ表示すべき称号が存在しないということでしょう。
……そこで気付きました。そんなオルンにも加護は見えていないということに。
私には神様の加護がたしかに記載されていました。ですが、他の者に見えていないというのであれば、神様の加護は私だけに……?
思わず口角が上がりそうになるのを必死で抑える。
神様の巫女として、このような姿を見せるわけにはいかない。
……でも、うれしい!
神様は私だけに加護を与えてくださった。早く戻って褒めてもらおう。
「話は以上です。これからも神様に感謝し、祈り続けなさい」
◆
「神様! 私がんばりました!」
おおう!? なんかやけに嬉しそうだね。いいことあったのかな?
翼人たち相手に巫女としての職務を全うさせるって、この子にはよくないかなと思っていたけれど、どうやら心配しすぎだったみたい。
やっぱり私の巫女が優秀すぎる。そしてとてもかわいい。
これは、向こうからねだってきてるよね? なら、遠慮なく抱きしめておこう。あ~……癒される。
「よしよし」
翼人たちも海人族たちもそれなりに安定してきたし、たまにはこうしてのんびりしても罰は当たらないよね。
あ、私神様だから罰を当てる側だった。
……ただ、あまりにも何もしていないとリオラに愛想を尽かされてしまう。
リオラに甘えつつ、ちゃんと様子はうかがっておこう。
当面は翼人たちだね。ステータスという力を可視化する機能によって、翼人たちはどう変わっていくかな。
『お前、レベルは?』
『8だ。お前は?』
『勝った。俺は10だ』
『高いなあ』
『魔物を狩れば狩るだけ強くなるからな。ついつい張り切っちまった。一緒に狩りに行くか?』
『そうだなあ。どの魔物までなら平気かってのはだいたいわかったし、行くか。』
うんうん。レベルが見えるようになったことで、安全に狩りをすることができているんだね。
その調子その調子。私は私でデバッグは続けるけど、この世界で生き抜くための強さをあなたたち自身で育てるのはいいことだね。
汚染耐性はどのレベルで習得するかわからないけれど、少なくとも魔物相手に無茶はしなくなっている。
『なんだ。その程度のレベルかよ』
『い、いいだろ別に』
『その程度のレベルで、俺に意見するのかって言ってんだよ』
ありゃあ……。
こっちはよくないね。レベルの可視化で他者との比較がしやすくなってしまった。
別にレベルばかりが全てじゃないのに、それを理解できていない者も現れるってことかあ……。
となるとまずいかも。リオラはレベルは高くない。この子は魔物退治なんてしていないから当然だね。
その代わりにこの子は私の巫女だし加護を与えている。その気になれば、威張っている翼人たちを一ひねりにできるはず。
だけど、レベルが全てなんて考えになってしまったら、この子を下と見てしまう者が現れるかもしれない。
「称号や加護を持つ者が少なすぎるのが問題かな……」
「!」
ん、どうしたの? なんかびくっとしたけれど。
何か気になることがある? ない? なさそうだね。
それじゃあ、翼を触らせてもらいながら、ちょっとこの問題について考えよう。
「……条件を満たせば誰でも得られる称号と加護でも追加しようかな」
「あ、あの……神様」
「何?」
「その加護というのは……神様の加護でしょうか!」
私の加護?
まあ、この世界を管理しているのは私だし、得られる加護は全部私の加護ってことになるね。
この世界が成長して他の神々との交流でも開始されたら、私以外の加護を与えられる者も出るかもしれないけど。
「まあ、そうかな」
「そ、そうですか……。では、私と同じ加護をいずれ他の者たちも……」
リオラの加護?
それって、女神の加護だけだったよね?
これから与えるのは、それよりはもっと小規模というか限定的なものというか、効果が段違いなんだよねえ。
神様の加護ってそんな安くないのさ。
「リオラのは特別」
「と、特別……。えへへ」
なんだ。それが不安だったんだね。
かわいい巫女め。私の加護というか寵愛は、今のところはあなただけのものだよ。
それを伝えるかのように、私はやさしく翼をなでるのだった。