世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする   作:パンダプリン

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第25話 一番最初の異文化交流

 ネルシア……。聞いたことがない名前だな。

 そもそも、彼女の背中には翼が生えていない。

 その代わりというわけではないが、肌には光る鱗がついている。

 ただ、名乗られた以上はまずは名乗り返すのが礼儀だな!

 

「翼人の戦士オルンだ!」

 

「セファだ。それで、海の巫女……ってなんだ?」

 

 セファが尋ねているが、そもそも海の巫女とはなんなんだ?

 俺たちが知っている翼人の巫女とは、また別物ということか。

 

「えっと……私たち海人族の生息域を守る結界の管理者のこと、だったわ」

 

「今は違うってことか?」

 

 だった。ということは過去の話ということだな。

 セファもそこが気になったらしく、どんどん話を進めてくれている。

 やはりセファがいると助かるな! 頼れる男なんだ、こいつは。

 ……俺のことは嫌っているけどな!

 

「以前は巫女と名乗っていたけど、紛らわしいから海の巫女を名乗るようにと言われたのよ」

 

「なるほど。おそらく俺たちが知る巫女がそう言ったんだな!」

 

「何してんだあいつ……」

 

 まあ、わからなくもないけどな。

 かつて忌み子として迫害されていたらしいあの少女は、今では神様の御言葉を伝えてくれる重要な存在だ。

 海人族とやらに別の役割で巫女という言葉があっては、今後勘違いする者が出現する可能性は十分にある。

 

「そもそも、海がわからん!」

 

「ああ、そこの馬鹿の言うとおりだ。国の名前か?」

 

「海というのは……ええと、大量の水が広がっている場所よ」

 

 なるほど……。完全に別の場所から来たというのか。ただ、そうなると彼女はなんなんだ?

 海に住んでいたと言っていたが、俺たちは海とやらの存在も知らなかったぞ。

 もしかして……神様が海というものまで作ってくれたということか!?

 

「セファ! 神様が海を作って、俺たちに恵んでくださったんじゃないか!?」

 

「ち、違うわ! 私は気が付いたら海ではなく、この場所にいただけ! だから、この辺りには海は存在しないはずよ……」

 

「だとさ。ということは、あの大量の水もネルシアと一緒に移動してきたってことか」

 

「そうね。まさか水の外に出ることになるとは思わなかったけど、案外生きていけるものね。水の中と違って動きにくいけど」

 

「……それで、あの不気味な魔物も水の外では動きが鈍っていたのか」

 

「ああ。魚の魔物……」

 

「魚?」

 

「あれよ」

 

 なるほど。あの手足がない魔物は魚というらしい。

 

「そっちはそっちで大変らしいな。俺たちが知っているよりもでかい魔物が住んでいるなんて」

 

「セファ。俺たちが知る魔物もでかいのは発見できたじゃないか」

 

「競おうとすんなよ。ネルシアのところでは、これが当たり前のようにいるんだろ? なら、大変そうだと思っただけだ」

 

 まあそうか。

 そもそも海の中に住んでいるということは、この魔物がその力を最大限に発揮して襲ってくるということだ。

 それらに対処できるということは、もしかしたらネルシアは俺やセファよりも強いかもしれないな。

 

「前までは、結界で近づけないようにしていたから、襲われることはなかったんだけどね」

 

「すごいな結界」

 

「だが、前までということは、今はなくなったのか?」

 

「ええ、神様が破壊されたわ」

 

 神様!?

 なんということだ……。ネルシアたちの守りをわざわざ破壊するとは。

 だが、なにも意味がないとも考えづらい。ということは……。

 

「神様の試練か……」

 

 思えば、あの大きな魔物や喋る魔物もそうだ。

 俺たちがそうしてもらったように、今度は狩られるだけとなった魔物に慈悲を与えているということかもしれない。

 

「ち、違うわよ? 結界は仲間を生贄に維持していたから、神様はその不健全な風習を断ち切ってくださっただけ。魔物と戦うことにもなっているけど、神様の御力で十分戦えているから」

 

「なんだ。俺たちと似たようなものか」

 

 ……考えすぎだったか。駄目だな。思った以上に参っているらしい。

 まさか、神様を疑ってしまうとは。

 

「ネルシアたちの事情はわかった。それで、なんでこんな場所にいるんだ?」

 

「わからないわ……。いつも通りみんなで魔物を狩っていたら、急に周囲の空間ごとこの場所に移動した。そんな感じだったから」

 

 つまり、海ごとくり抜いてこの場所に移したということか?

 そんなこと、それこそ神様以外にできるとは思えないけど……。

 

「つまり、わからないってことか」

 

「そうね……」

 

「じゃあ、俺があの魔物を殺すのを止めた理由は?」

 

「セファ。あんた、槍であいつを刺そうとしたでしょ? あいつは死ぬときに周囲に穢れをまき散らすの。あの距離だったら、あんた穢れに巻き込まれていたわよ」

 

「それは……。危なかった。忠告感謝する」

 

「どういたしまして」

 

 まさかそんな存在だとは……。

 俺たちが知る魔物はそんなことはしない。やはり海は危険な場所らしいな。

 

「じゃあ、ネルシアたちはどうやって魔物を殺しているんだ?」

 

「ああ、私たちは平気。言ったでしょ? 神様の御力を授かったって。おかげで、水の中では穢れも汚染もへっちゃらなほど強くなるの」

 

「俺たちとは別の強さということか……」

 

 神様の奇跡ということか。

 やはり神様は、全ての存在を救おうとしてくれているのかもしれないな。

 

「ネルシア。お前、会話できる魔物は知っているか?」

 

「え、なにそれ! こっちにはそんな魔物までいるの? 怖っ……」

 

「俺たちもさっき遭遇したばかりだ。お前たちが来なかったら、全滅するところだっただろうな」

 

「しかも強いの? ……会いたくないわね」

 

「そうか、わかったぞ!」

 

 それでつながった!

 ネルシアがここに連れてこられた理由……は、まあ事故だろうな。きっと。

 ただ、海をくり抜いて移動させた理由はわかったかもしれない。

 

「俺たちのピンチを救うため、神様が海を移動させて助けてくれたんじゃないか!?」

 

「……まあ、ありえなくもないのか?」

 

「ええ……。私、巻き込まれて知らない場所に来ちゃったんだけど……」

 

「不幸な事故だな。だが、おかげで助かった。安心するがいいネルシア。俺たちの住居にはいずれ巫女がやってくる。そのときに事情を話して神様に救ってもらおう」

 

 きっと神様ならネルシアを元居た場所に戻すのも簡単なことだろう。

 であれば、それまでの間は俺たちの住居で待機してもらえばいいはずだ。

 二人とも異論はないらしく、俺たちはネルシアを連れて入り口を目指し、ようやくダンジョンから無事に脱出するのだった。

 

    ◆

 

 進化……ですませていいの? これって。

 魔物の共食いによる巨大化までは、まだ理解できる。

 でも今は、それ以上の問題が起こっている。

 

「……」

 

「……」

 

 真剣に世界を観察して管理システムをいじっているせいか、リオラは邪魔にならないようにそばで控えている。

 ごめんね。今はちょっと余裕がないかも。

 これじゃない。あれでもない。生態に悪影響を与えたなんてことはないはずだよ。

 どこが原因でバグったのか、全然わかんない!

 

 長丁場になりそうなので、まずは巫女であるリオラにも情報は共有しておこうかな……。

 

「……会話できる魔物が生まれた」

 

「え!?」

 

 あまりにも予想外の発言だったためか、リオラは目を丸くして驚いていた。

 うん、かわいい。癒される。

 

「言葉を真似ているだけで、意味を理解していないとかでしょうか……?」

 

「違う。はっきりと意思をもって会話している」

 

 とはいっても、あの魔物は周囲の魔物たちの言葉まで理解しているわけじゃないみたい。

 でも、周囲の魔物たちはあの魔物の言葉を理解しているっぽいなあ。

 

「それだけの知能があるということは……もしかして、翼人たちは」

 

「ちょっとまずいかもしれない」

 

 ただでさえ、私が関与していない巨大な魔物への進化とも呼べる現象もある。

 オルンたちが複数でようやく一体倒すほどの力関係である以上、あれを複数従える喋る魔物の存在はまずい。

 こうなってくると、もはや均衡なんていともたやすく崩されてしまう。

 

    ◇

 

「なんだこの魔物たちは。見たこともないが……」

 

 役には立ちそうもないな。

 陸地では弱い。それに俺に従うわけでもない。

 極めつけは、倒しても力を得る感覚がまるでない。

 

「必要ないな」

 

 全て処理して終わりだ。

 こんなものいくら食っても強くなれない。

 俺はもっと強くならないといけないんだ。翼人たちを逃がしてしまうなど失態にもほどがある。

 これでは——神に見捨てられてしまう。

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