世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
よ~し、なんとかなった。
さすが私。これでも神様として成長しているってことだね。
なんか大変なことになった魔物を別の種族としてタグを設定。
そうして魔物のバグから切り離すことに成功した。
いやあ、一時はどうなるかと思ったよ。
調子に乗ってプロゴノスっていう名前を付けたとき、しばらく固まっちゃったし。
リオラもそうだったけど、もしかして実は嫌だけど神様の言葉だから従ったとかじゃないよね?
ハラスメントじゃないよね? 私、神ハラしてないよね?
「神様。よかったのでしょうか? プロゴノスに土地を与えるなんて約束してしまって。神様の負担になりませんか?」
ほんっといい子!
リオラは私のことをいつも考えてくれる。だからついつい甘えてしまう。
プロゴノスはいったんダンジョンに帰ってもらったし、大丈夫だよね?
よし、誰もいないし甘えておこう。
「平気。リオラがいるから」
あ~……。落ち着く。
なんだろうね。なんでこの子、こんなにいい匂いするんだろうね。
翼も柔らかくて気持ちいいし、これだけで頑張れる気がする。
そしてプロゴノスにはこんな姿見せられない。セクハラ神として一気に見限られるだろうし。
「か、神様……」
「ごめん。嫌?」
「そんなことありません! もっとしてください!」
よし、本人から許可ももらった。ならもう遠慮することはないね。
もう全身でリオラを堪能しておこう。
「そ、それで……。土地についてですが、ダンジョンの奥地ということでしょうか?」
「そう。ダンジョンの奥に魔族用の場所を作る。ダンジョンから入れないような場所」
それが一番だろうねえ。
今私が確認できている種族は、翼人と海人族と魔物。それに魔物から派生した魔族。
魔族については追々解析していくとして、この四種族が均衡を保つためには魔物が鍵となる。
魔物ってこの荒廃した世界に適応しすぎているんだよねえ。
だから、放っておいても一日で無数に増えていくし、ある程度は狩られるべき存在としないと他の種族が絶滅する。
「魔物はそれで落ち着くでしょうか?」
「プロゴノス次第」
特に狼型の陸の魔物が問題だね。
こっちはとにかく好戦的で数が多い。
だから、積極的に狩るように食料にしたし、経験値も付与するようにした。
海のほうはもう少し穏やかだから、今でも十分棲み分けができているのにねえ……。
経験値を付与するようになって、共食いで強くなるようになったまではよかったんだけど、レベルが一定以上になったら進化するのは想定外だったなあ。
想定外っていうか、絶対に誰か他の神が勝手に仕様を変更したっぽいけど。
それだけでも困るのに、進化した魔物同士で食い合ったら魔族になるっていうんだから、もう完全に私の手に負えない状況になりかけていた。
だから、まずは魔族に魔物の管理をお願いする。
魔族としても魔物に仲間意識はないみたいだから、食料にするなり家畜にするなりして、適度に間引いたり管理したりしてほしい。
そうして翼人たちと全面衝突せずに繁栄してもらうのが一番だね。
「ダンジョンは、暗黙の戦闘可能域とする」
「なるほど、そこ以外では戦闘は禁ずるわけですか」
「あくまでも暗黙。だから、外で争うことも止めはしない」
ただ、ダンジョンのほうにもっと旨みをつければ、外で争うことのほうが馬鹿馬鹿しくなると思う。
その一環はすでに実施している。ダンジョン以外の魔物から得られる経験値を減らしたり、宝箱を設定したり。
今後は、翼人も魔族もダンジョンの魔物だけを狩るようにすれば、外の魔物は生き残るだろうね。
翼人と魔族が争わず、魔物も増えすぎないようにダンジョンで狩り続ける。そうすることで、理想的な均衡を保てるといいなあ。
「あとは、翼人たちを納得させる方法」
「神様の言葉を伝えれば、あの者たちも大人しくなるのではないでしょうか?」
「どうだろう」
「ならなかったら滅ぼしましょう」
「それは駄目」
均衡って話したよね!?
私の巫女は相変わらず好戦的だった。
さて、このかわいい巫女が本当に翼人を滅ぼす前に、さっさと魔族について知らせたいところだね。
あっ、その前にプロゴノス用の居住エリアを作らないと。
さあ、やることが増えてきて大変だ。
でも、このくらいのデバッグ作業なら楽なもんだね。
原因不明の調査をしていたこれまでと比べたら、ぜんっぜん楽なもんだよ。ほんとに。
◇
「……」
やはり、神の力はとんでもないということか。
巫女が怒りを含めて俺に報告をした場所に向かってみると、たしかに居住用の場所が増えていた。
先日までこのダンジョンにそんなものはなかったはずだ。
ということは、神が俺のために造ってくださったということだろう。
「悪くない」
俺に名を与え、役割を与える神か。
……神からの直々の命令だというのに、こうも違うか。
「あら、機嫌がよさそうね」
「っ!?」
浮かれていたのか?
だから気付けなかったのか?
いや、そもそもだ……。
俺たちがいくら強くなろうとも、神に対抗などできるはずがないか……。
「だいたいの事情はわかってるわ。でも困るのよねえ。こっちが先に命じたじゃない。だから、あんたは私の指示に従えばそれでいいのよ」
脳天を爪で貫こうとするも動きが止まる。
自害さえ許さないということか……。女神にとって俺はまだ利用価値があるということか。
……このままでは、神との約束が果たせない。
「さて、どんな修正で私から奪い取ったのかしら」
気持ちが悪い。自分の身体が、自分のものではなくなっていくような感覚だった。
事実そうなのだろう。神々がその程度できてもなんらおかしくはない。
女神は、俺を見ているだけでなく好きに改ざんしようとしているということだ。
……そういえば、あの神は俺を変えようとはしなかったな。
「あら、修正もしないで使役してるの? やっぱりその程度ってことね。非効率極まりない。恐怖することを楽しむ奴隷でもなければ、信仰を集める愚民でもないんでしょ? 道具なら逆らえないよう使役すればいいのに」
自我が消えていく。
いや、消えるというよりは、より強大な何かに追いやられている。
なんだ……。これで終わりか。また魔物に戻るのか。あのような知能なき存在に……。
◇
「オルン。どうする? 今日もダンジョンに行くか?」
「そうだな! 俺たちが強くならないと、あの魔物に太刀打ちはできない。撤退できるよう準備しつつ進もう!」
「まあ、それしかないよな。セファもネルシアもそれでいいだろ?」
「ええ。問題ないわ」
正直なところオルンと一緒に行くのは気に入らない。
が、今はそんなこと言っている場合でもないか。
あの魔物は翼人にとって明確な脅威だからな。
好き嫌いでわがままを言っている場合ではない。
「あいつを警戒しながらの狩りか……」
「大変よね……」
「まあ、神様が動いてくださる前に比べればどうってことないけどな!」
「……それもそうか。水も食料もある。魔物へ対抗もできる。なんだ、随分とマシな状況じゃないか」
楽観的になったわけではない。単なる事実だ。
前までは、そもそもあれ以外の魔物だって脅威だった。
その頃に比べれば随分とお優しいじゃないか。あの魔物がいようがまだまだマシだろ。
「……うちも、結界の中で死ぬだけだった頃よりましね」
ネルシアはネルシアで大変な状況だったらしいからな。
なら、そろそろこいつを解放してやらないとな。
そのためにも、あの魔物を倒すとまでいかずとも、対抗できるほどの強さは身に着けておきたいものだ。
「……お前ら、話していたら出てきたようだ。逃げるぞ」
おいおい。まだダンジョンにさえ近づいていないだろ。
それに、今日も魔物を引き連れずに一人で歩いているとか、随分な余裕だな。
もしかして、俺たちは散歩中に遭遇してしまったということか?
大した不運だな。なら、不運はここまでにして是非とも逃走に幸運をわけてほしいものだ。
「気付かれた!」
「なんだってんだあいつ! 前よりも知性がなくなってるみたいだぞ!」
余裕がないというべきか。
前はもっと俺たちに近い存在だったはずだろ?
だというのに、なんで顔を見るなり襲い掛かってきてんだよ。
ああ、畜生。魔物はしょせん魔物ってことか? ただ襲い掛かってくるだけの存在ってことかよ……!