世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「ありえない! ありえない! ありえない!」
あんな醜い出来損ないの分際で、私の思い通りにならないなんて!
そんなことありえちゃいけない。
それにあの忌々しい翼人の小娘! よりによって、私に向かって神殺しの刃を投擲!?
「ふざけんなっ!」
「ひっ!」
拳を振るうと神具にぶつかった。
かまわずそのまま振りぬくと、大きな音を立てて破損しながら転がっていく。
ああ、鬱陶しい! やたらと甲高い音さえも不愉快ね。
それに、そんな様子に怯える巫女たちも不快極まりない。
「そうよ。あの出来損ないのところの巫女でさえ、私に刃向かう程度の働きはしたわ」
そう。巫女が悪い。
あの醜い翼の巫女は不愉快だからいらないけれど、それ以上にこいつらはもっと役に立たない。
じゃあ、いらないわよ。こんなやつら。
「え、あ、あの……。め、女神様……?」
「いらない。あんたたちみたいな役立たず、私の神殿にはふさわしくないわ」
そう。そうよ。だからさっさと殺しましょう。
そうしたら、国の連中に新しい巫女を補充するように言いつけましょう。
私の世界はあんな低位神が管理する場所とは違う。
私のために何でも捧げて用意する。あんなやつの世界に劣る部分なんて一つもない。
あ~あ。初めからあんなの相手にしなければよかった。
「消えなさい」
だから、巫女たちを処分しようとしたというのに、その動きが止められた。
……私に逆らう不敬なやつ。と言いたいところだけど、私の動きを止めることができる誰かというのが問題ね。
ああ、はいはい。どうせ他の神でしょ。
「自分を崇拝する巫女を処分しようだなんて、随分と羽振りがいいね?」
「……当然よ。私の世界は完璧に管理している。この程度、一人殺そうが十人殺そうが問題ない」
やっぱりね。高位神がわざわざやってくるなんて、本当に鬱陶しい。
「で、何の用? そんな口出しのため、わざわざ来たっていうの? 暇ね」
「中位女神シュリー。君、低位女神ナギの世界に干渉したね?」
「……何のことかしら?」
あの低位神が告げ口でもした?
いいえ。あいつに高位神と連絡を取る手段なんてないわ。
そもそも、中位神とだって怪しい。それが何の権限もない低位神なのだから。
じゃあ、私以外の誰かがあの世界を監視していたってこと?
それもありえない。あんな荒廃した世界を見るほど、他の神々は暇ではない。
私みたいに、生意気な後輩に釘を刺すために監視するなんて、誰もやっていないはずよ。
「あれ、気付いてない? 放棄領域の区画4040と4044で、君の力の反応があったんだけど」
「……間違いじゃないの? 私、何も知らないし」
「隠しているつもりだったのかもしれないけれど、きっと何かあったんだろうね。例えば、君を脅かす危機が迫っていたとか。そのせいで、隠すだけの余裕もなくなったみたいだよ?」
……あの巫女め!
あいつが神殺しの刃なんて投擲するから、私は思わず全力でそれを避けた。
たしかに、そのときだけは回避することに全ての力を集中させてしまっていた。
つまり……そこで他の神々に違和感を与えてしまったってこと……?
「今回は僕が来たけど、もうすでに君の処分は決まった」
「ま、待ってよ! 私にはこの世界が!」
私が処分なんてされたら、この世界はどうするつもりよ!
誰がここまで世界を育てたと思っているの!?
ここは私の世界。絶対に他の誰にも渡したりはしない!
「本当なら、低位管理女神ナギにこの世界の半分を譲渡するのが妥当だったんだけど」
ふざけないで!
あんな出来損ないに私の世界の半分なんて絶対に渡さない!
「でも、あの女神は自分の世界を担当したばかりだ。いきなりこの世界の半分なんて任されたら、あの子が潰れちゃうね」
「でしょうね。あんなやつに管理できるほど、私の世界は小さくないのよ」
せいぜい、滅びかけた世界の小さなコミュニティで信仰でもされていなさい。
あなたにはそれがお似合いよ。
「だから、この世界の管理は今後も君に任せるよ」
「当然ね」
「そして、その管理した世界の信仰の半分は、女神ナギに譲渡する」
「は?」
……わ、私がここまで発展させた世界なのに!
私が稼いだ信仰を、あんな出来損ないに譲れっていうの!?
「ふ、ふざけ」
「これは決定だよ。当然、君に逆らう権利はない。わかるね? 中位管理女神シュリー」
「……わかったわ」
ふざけんな! ふざけんな! ふざけんな! ふざけんな!!
私の信仰は私のものだ! あんな出来損ないのために、なんで私が働かないといけない!
こんな屈辱ありえない!
いいわよ。だったらこの場は従ってあげる。
でも、私の信仰はあんな醜い女神にこれっぽっちも渡してあげない。
だったら簡単ね。あの女神を殺せばいい。
譲渡する先さえいなくなれば、こんな決まりを守る理由もなくなるのだから。
待ってなさい。すぐに準備して殺してやるから。
「でも、不服みたいだから。ちょっと力ずくで従わせないとね。君には、管理世界以外での行動を禁止する」
「は? ちょ、ちょっと待ちなさいよ! いくら高位神だって、そんな勝手なこと許されるはずが!」
「もう話し合った結果だよ。女神シュリー。といっても、あくまでも他世界に手出しできないだけ。まあ、真面目に自分の世界だけ管理しなってことだね」
あの出来損ないの女神に半分を奪われるというのに!?
それを知りながら手出しもするなってこと!?
許さない。絶対に……。なのに、その恨みを晴らすためにあいつの世界に行くこともできない。
「お前たちが、あんな出来損ないの巫女よりも役立たずだから!」
「ひっ! す、すみません! すみません!」
「だから、自分の世界の住人くらい、もっと大切にしたほうがいいよ?」
首をはねようとしたのに止められる。
関係ないでしょ! いちいち干渉してくるんじゃないわよ!
「困ったな。このままだと、この子たち簡単に処分されそうだね」
「それで今までやってきたんだから、口出ししないでよ」
そう。私は世界のために尽くしてきた。
いい女神を演じてあげたでしょ? なら、その鬱憤を晴らすための生贄に何しようが私の勝手。
それを、わざわざ他の世界の神に文句言われる筋合いなんてないわよ!
「そうもいかない。言ったばかりだろ? この世界の信仰は放棄領域に譲渡するんだ。巫女である彼女たちを殺したら、毎回君がその仕事をこなすことになるんだよ?」
それでいい。私の大切な信仰なんだから、こいつらに触らせてやるもんですか。
いいえ。そもそもこいつらに仕事をさせず、私が譲渡を行わなければそれでいい。
あいつに私の大切な信仰を奪われずにすむじゃない。
「君、踏み倒す気満々だよね。だったら、この子たちを放棄領域に移住させようか。そうすれば、君はこの子たちに手出しできず、信仰はこの子たちの力で譲渡される。うん、それがいい」
……私の信仰が。
こんなやつらに奪われる。あんなやつに渡される。
「決まりだ。それじゃあ、君たちは巫女としての新たな仕事をこなしてくれ」
「ま、待ってください! 崩壊した世界に移住するということですか!?」
「そ、そんな場所にいたら……私たちは生きていけません!」
「ここにいたら、別の理由で生きていけないけど? それに、これは僕たちが決定したことだ。君たちの意見なんて聞くと思う?」
奪われる。奪われる。
私の溜めた力が! 私がこれまで努力して得てきた力が!
あ、ああ……。
「あああああぁぁっっ!!」
◆
――世界が更新されました。
――管理対象世界:放棄領域〘崩壊区画-4040〙〘崩壊区画-4044〙
――人口:107 → 110
――文明レベル:崩壊後
――信仰値:612 → 612(52,714)
――神格評価:E
――外部より移譲された信仰値は神格評価には反映されません。
……なんで!?
信仰値がバグったんだけど!
もう世界の管理とかじゃなくて、システム自体をデバッグしないといけないんじゃない!?
「神様。どうされましたか?」
「……大丈夫」
全然大丈夫じゃないけどね!
でも、システムのことをリオラに話しても仕方ない。
いいや。全部後回し! まあ、増える分には悪くないでしょ。きっと。