世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「……」
――信仰値:612(52,714)
う~ん……。
バグってる……。わけでもないのかな?
――神格評価:E
信仰がこんなに上がっているのに、神格は以前と変わっていない。
――外部より移譲された信仰値は神格評価には反映されません。
ってことは、この括弧の中の五万以上の信仰が外部から移譲された信仰ってこと?
括弧の前のおよそ六百。これこそが私の本当の信仰ってことなんだろうねえ。
まあ、それなら納得できる。そしておおよその推測もできた。
私の信仰は別に変わっていない。
だけど、何かの理由で急に五万くらいの信仰が増えた。
この信仰は神格には影響されない一時的なあぶく銭のようなもの。
じゃあ、あれだね。デバッグのときに使う信仰と同じってわけだ。
評価のための信仰値に表記されているからわかりにくいけど、普段使っているリソースと同じなら話は早い。
何に使おっかな~。溜め込んでもしょうがないし、パーっと景気よく使いたいよね~。
「あ」
ただ、その前にこっちだね。
もう一つだけ、ほんのわずかだけ増えていた数字がある。
なんだったら、こっちのほうが重要だからね。
――人口:110
この前、プロゴノスの分が増えていたんだけど、今回は三人も増えている。
翼人か海人族に子供でも生まれた? それとも、プロゴノスが仲間を増やした?
な~んか、どっちも違うっぽいんだよねえ。
神様なので大々的には無理だけど、ささやかにお祝いでもしようかなと思って調べてみた。
でも、どの種族にもそんな吉報はないみたい。
ってことはだよ。
私の世界に新たな住人が三人増えているってことになる。
これまで認識できなかった誰か三人がいたのかな?
それとも……急にどこかからやってきた?
「神様、どうしました?」
一人で悩んでいると、リオラがちょうどいいタイミングで尋ねてくれた。
うん、やっぱりいい子だね。私がちょうど困っているタイミングで、気分を切り替えてくれるし。
ってことで、リオラにも話しておこう。
「新しい住人が三人。どこかに現れた」
「それは……おめでとうございます? で、いいんですよね?」
「わかんない」
「む……。つまり、不穏分子の可能性もあるということですか」
どうなんだろうねえ。
私としては、できればいい知らせであってほしいけど。
さてどうしよう。別に神様が人口全てを把握している必要なんてない。
ただ、今はまだまだ見守ってあげないといけないからね。
この三人がどこの誰なのか、私のほうで調査して把握しておかなくっちゃ。
「ちょっと調べる」
「はい。では、私はいつでもその不穏分子の元へ向かえるよう準備しておきます」
「頼んだ」
不穏分子と決めつけちゃっているけれど、最悪の場合を想定してくれているってだけかな?
これは、私とリオラの性格の違いによるものだし、訂正させる必要もないや。
というか、私がわりと楽観的だから、リオラがこれくらい慎重なほうが助かる。
さて、調査調査。世界をスキャンして……。
ここでもない。あっちでもない。
こうして見ると、わりと広い世界だねえ。
生き物が生息できる場所こそ少ないけれど、土地だけはそこそこある。
ということは、これを利用して……。っといけないいけない。それは先の楽しみにとっておこう。
ずっと調べ続けていたためか、少々集中力が途切れている。
しかし、探し物というのは案外そんなときに見つかるものみたいだねえ。
「うん?」
「さすがは神様です!」
「まだ何も言ってない」
「失礼しました! ですが、調査に進展があったと思いまして!」
なにその技術。先んじて称賛の言葉を置いておいた?
「まあ、あってるけど」
肯定すると、リオラは嬉しそうに翼をぱたぱたと羽ばたかせた。
なにそのかわいい動き。さては私を誘ってるね?
乗ってやろうじゃないの。
「か、神様」
「リオラが悪い」
「は、はい。申し訳ございません」
などと言っているけれど、表情は反省というよりもはにかんでいる。
これはもう合意だよね。さて、翼を思いっきりこねくり回してやろう。
私の腕は六本もあるから、全身をくまなく堪能してあげるからね。
「それで、増えた人口なんだけど」
「は、はい」
くすぐったそうにしながらも、私の言葉には反応してくれる。
そういうところがかわいいね。じゃあ、その反応もっと見たいから翼は触り続けるね。
「知らない人間が三人いた。たぶん、異世界の人間」
「大変なことじゃないですかあ!?」
あ、本題のほうに食いつかれたせいで、かわいいリオラがいなくなった。
いや、いつでもかわいいけど、真面目なほうのリオラになった。
でも、彼女の反応もわからなくはない。
異世界からの訪問者だなんて、そうそういないからねえ。
「大変だね」
「な、なぜ他人事のように……」
いや、だってねえ?
その前に私たちの身に起きたことを考えると、どうしてもねえ。
「異世界の神が来るよりましだから」
「あ、たしかに……。い、いえ。それでも、管轄外の人間ですよ?」
そこはそのとおり。
異世界の女神が来るよりはずっとましだけど、放置しておくのも後々面倒なことになりそう。
ということで、今回も私の頼れる巫女にお願いしよっかな。
「リオラ。ここに連れてきて」
「はい! 神様の巫女である私が、その役目を全うします!」
ああ……。私の手の中からふかふかの翼がいってしまう。
できるだけ早く戻ってきてほしいなあ。
と思っていると、飛び立とうとしていたリオラがこちらに戻ってきた。
「……」
「どうしたの? 忘れ物?」
「えっと、もう少し触りますか?」
「触る」
この後たっぷりと堪能した。
まあ、異世界の人間もちゃんと見張ってたから大丈夫。
彼女たちは特に問題を起こしていないし、こうして時間をかけて危険か見極めていただけだよ。
私がリオラを堪能したかっただけじゃないからね。
◇
それで、戻ってきたリオラは三人の女の子を連れてきた。
だいたいリオラと同じくらいの年齢かな?
翼人も海人族も人間も、たしか年齢と肉体の変化って同じくらいのはずだし。
「神様の御前です。頭を垂れなさい」
すごい。さすがは私のリオラだ。
早くも上下関係を刻み込んだのか、三人ともすっかりリオラの言葉に従っている。
ただ、それじゃあ会話しづらいね。
「垂れなくていい」
「神様の恩情に感謝しなさい」
恩情というか、私が会話しづらかっただけなんだけど……。
まあいっか。リオラがそうしたいのなら、そういうことにしておこう。
「それで、あなたたちは?」
「は……は、は……。はいっ!」
すっごい緊張してる。
プロゴノスも最初に会ったときは、わりと緊張してたっけ。
これでも神だからねえ。必要以上にすごい存在だと思われているのかも。
そう考えると、初対面からわりと普通に会話できたリオラってすごいのかも。
「……」
「神様?」
「いい子」
「~っ!! ごほんっ! いいですか? 神様はあなたたちに事情を尋ねています」
さすがのリオラも、他の人たちの前では甘えられなかったらしい。
うん。なんか時と場所をわきまえずにごめんよ。
そんなリオラの手伝いもあって、三人はたどたどしくも事情を説明してくれた。
「なるほどね」
私の言葉に三人の異世界の巫女が震える。
いや、気持ちはわかるんだけど、別に怒ってるとかではないから。
そっちがあの女神の使いだったとしても、女神は女神、巫女は巫女。
坊主憎けりゃ袈裟までなんてほどには考えていないさ。
それよりも、意味不明だった信仰値の謎が解けてすっきりした。
うん。やっぱり最初に考えていたとおりのあぶく銭だったね。
じゃあ、用途も最初に考えていたとおりでいいや。
これからぱーっと使っちゃおう。
「リオラ」
「なんでしょうか? 神様」
「私は信仰の使い道を考える。あなたは、この子たちに神殿を案内」
「……神様の手元に置くのでしょうか?」
「そうなるね」
不満も不安もわかるよ?
でも、要するにあの女神シュリーの世界からの来賓みたいなものでしょ?
下手な扱いするわけにもいかないし、私の手元に置いておくのが一番だと思うんだ。
「かしこまりました。あなたたち、来なさい」
リオラもそれはわかっているからか、しっかりと先輩巫女として彼女たちを案内してくれる。
まあ、大して広くない神殿だからね。なんなら部屋も足りないかも。
それなら、せっかく手に入れた信仰で彼女たちの部屋とか作っておこうかな。