世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「う~ん」
どうしよっかなあ。
翼人たちの飛行機能を強化。……ありといえばありだねえ。
海人族たちも、水の中では強化されるようにしたわけだし、むしろそれでちょうどいい?
いや、海はともかく、地上はこれからもいろいろ増えそう。
そのとき、飛行能力を強化しすぎていたら、翼人族が頭一つ抜けて強すぎる?
強すぎたら、自然と上下関係が発生するかもなあ。
「う~ん」
じゃあ、魔物たちにもっと遠くまで苗木を運んでもらう?
いや、そもそもそんな問題でもないんだよねえ。
世界の端から端まで、そのくらいまで自由に移動できるような存在でないと、世界中緑化計画はうまくいかない。
「う~ん」
「どうしました? 神様」
悩む私を心配したのか、リオラが翼で包んでくれた。
……よしっ! いったん翼のことだけを考えよう!
きっと次に目を覚ました瞬間には、いいアイディアが思い浮かんでいるはず。
頼んだよ。未来の私。
「ふふ……。ゆっくりお休みください」
◆
目が覚めると、リオラがやさしそうな顔で私を見つめていた。
ああ、そっか。連日の浄化作業やら、その後の考えやらで疲れていたみたいだね。
リオラの翼に包まれて、私は眠ってしまっていたらしい。
「おはよう」
「ええ、おはようございます。神様」
いやあ、いい翼だったね。さすがは私の巫女。
ふむ……翼、翼ねえ。翼人たちのルーツってなんだろうね?
やっぱり鳥と関係しているのかな?
鳥かあ……。うん。いいかも。
「リオラのおかげで、思いついた」
「お役に立てたようで光栄です!」
まだ何も話してないんだけど。
まあ、リオラのおかげって言う途中で、もう食い気味にお礼を言いそうだったからね。
鳥っていうか犬だね。
「翼人と魔物でも届かない遠く。鳥に種子を運んでもらう」
「鳥……ですか」
「そう。そうすれば、世界中が緑」
それだけでも全然違うからねえ。
青い空に綺麗な水。そして緑がたくさんあれば、生物たちも勝手に増えてくれるはず。
植物を食べる動物が増え、そんな動物を食べる動物や人も増えていく。
それがいいね。私がなんでもかんでも手を貸すのはよくない。
そうすれば、この世界の子たちは、神に頼らず生きていける。
「鳥はどうしましょうか? 生き残りを探して増やしますか?」
「う~ん。作るしかないかな?」
新規の生物かあ。いや、新規とは限らないけれど。
ただ、生物の作成って思っている以上に大変なんだよねえ。
生態の仕様をしっかり決めないと、バグったら目も当てられない。
想定外の挙動によって変な動きされても困る。それだけならまだマシで、自滅するようならもう最悪だ。
「本格的に頑張る」
「また、徹夜続きですか? いけませんよ。しっかりと眠らないと」
「リオラがお母さんみたいに……」
「お、お母さん! わ、私が神様のお母さん……。そんな畏れ多い……。でも、神様が望むのなら!」
「落ち着いて」
リオラ、あなたも疲れているんじゃないの?
いや、この子ガッツリ眠っているな。
巫女の仕事をこなし、私のお世話をし、それ以外ではなんか魔物狩り続けている。
それらをこなしつつ、睡眠時間はしっかりと確保している。
なんて優秀なんだろう。
「あ、あの~……」
「ん?」
「……なんですか?」
リオラ。声が冷たいよ~。
後輩と仲良くできているのか心配になってくるね。まったく。
ええと、話しかけてきたのはフィーネだね。
「どうしたの? フィーネ」
「あ……。な、名前……」
「畏れ多くも神様に名前を呼んでいただいたこと、平伏して感謝しなさい」
いらんいらん!
いちいちそんなことされていたら、話すだけで面倒でしょうが!
というか、リオラは? リオラの名前だって呼んでるんだけど。
「リオラのことも呼んでる」
「はい! いつも命を捧げるほど感謝しております!」
あなたそんな安い女じゃないんだよ。
「えっと……何?」
暴走特急はいったん後回し。
とりあえず、フィーネが何か言いたいことがあるみたいなので、こっちを聞くことにしよう。
「は、はい……。鳥をこの世界に増やす……というお話でしたが、そ、その。よかったお役に立てないかと思いまして」
「何か伝手があるのですか?」
あ、よかった。
暴走特急が終着駅に着いたらしい。
これが一部の翼人とかが相手なら、立てません下がりなさいくらい言ってただろうね。
「フィーネは、アルセリアで
せいちょうもり。
「この世界にはない職業名ですね。説明を」
「は、はい……! 女神に仕えていたときは、女神の神託を届ける聖鳥を育てていました」
仕えていたって過去形になってるけど、あなたたちまだシュリーの巫女では?
うちはあくまでもお客さんとして預かってるだけだよね?
「なるほど……。あの女神の言葉を届ける鳥ですか」
「ええ。信仰が薄れていない場合、自分から出向くのをさぼる傾向にありまして……。代わりに言葉を記した紙を鳥に渡していました」
鳥、賢い。
というか、巫女にさぼりがばれてたらしいけど、シュリー大丈夫なのかなあ。
私もさぼりはほどほどにしよう。リオラに愛想を尽かされないためにも。
「神様もたまにはさぼりというか、休んでいただきたいのですが……」
「わりとさぼってる。平気」
は!? 語るに落ちた!
おのれリオラ。なんて巧妙なやり口なんだ……。
「いえ、休めていません。もう少し自分を大切にしてください」
そうかなあ? 今日とか、リオラの翼の中で眠ったんだけどなあ。
まあ、そういうことなら、もう少しのんびりいかせてもらおう。
「その鳥。どこまで飛べる?」
「アルセリア全土に神託を届けていたので、この世界でもどこまでも飛べるはずです」
アリアナが堂々と答えてくれた。
なるほど。わりと自信があるってことだね。
それなら、種子を運んでくれるのにぴったりかもしれない。
紙もいけたんだし、賢そうだし問題ないね。
「フィーネ。頼んだ」
「は、はい! お任せください」
鳥かあ。いいねえ。かわいいよねえ。
私の世界に鳥が増える。きっと素敵な光景になるよね。
翼人と一緒に飛んでいる姿とか、目に焼き付けておきたくなるはず。
わくわくしてきた。
◆
「失敗は許されません」
「は、はい!」
リオラ先輩は真剣な表情でそう言った……。
ということは、神様は私の提案を……き、期待してくれている。
お世話になった。最初は怖かったけど、アルセリアよりずっといい場所だった。
人として大切にしてくれる神様。人を見守ってくれる神様。あの方こそが神様だ。
だ、だから、お役に立たないと!
「ですが、その聖鳥はこの世界にはいません」
「そ、そうですね……」
「何もないところから、聖鳥を作れるということですか? 巫女の力があるとはいえ、それは神様の所業に近いと思うのですが」
「だ、大丈夫です。あてがあります……」
「……そうですか。無理はしないように。助けが必要ならすぐに言いなさい」
「は、はい……。ありがとうございます」
リオラ先輩。ちょっと怖いところもあるけど、いい人……。
だから、私はここの生活を気に入っている。
絶対に成功して、神様とリオラ先輩に喜んでもらわないと……。
「フィーネ大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ。セレスちゃん」
「聖鳥の繁殖は、たしかに得意だったからね。でも、元はどうするつもり?」
それには考えがある。
私たちはこの世界とアルセリアを行き来している。
私たちをこの世界に転移させた怖い神様が言うには、世界の人口を減らすことは罰に含まれていないとのこと。
だから、定期的にアルセリアに帰って、私たちはあの世界の所属でもあることを更新しないといけないんだとか。
つまり、私たちはアルセリアとこの世界両方の人口としてカウントされている。
「次に戻ったときに……何羽か持っていくつもり」
「なるほどね。たしかに、それならこっちの世界でも聖鳥が増やせそうね」
そんな話をして数日。
私たちはアルセリアの神殿へと転移させられた。
神様の呼び出しとかではなく、あくまでも定期更新として。
なので、出迎えなんて一人もいない。
ただやってきて帰るだけ……。
向こうの神様とリオラ先輩は、見送ってくれたし、帰ってきたら出迎えてくれるけど……。
でも、こっちにとってはこのほうが都合がいい。
「ほ、ほらおいで」
私は帰還する前にお世話している聖鳥を何羽か運ぶ。
これで転移すれば、きっとこの子たちも一緒に……。
つつがなく準備が完了し、ちょうど転移の時間になったみたい。
体が再びあちらの世界へと移動した。
「お帰り」
「お帰りなさい。時間通りですね」
「た、ただいま戻りました」
神様とリオラ先輩はやっぱり出迎えてくれた。
そして私の腕の中には聖鳥たちが何羽も。
よ、よかった~。成功して。
◇
「ふ~ん。私のもの持ちだして、ただですむと思ってるのかしらね?」
手の中の神具が砕ける音が聞こえた。
ゴミね。捨てないと。
ああ、ゴミは捨てないとね。あの手癖の悪い巫女とか、もう捨てないと……。