世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「さあ、今日も働くぞ!」
「うるせえし、そもそもなんでうちに来てんだお前は」
「家! すばらしいな。セファ!」
「聞けよ」
オルンが今日もうるさい。
たしかに、家まで作れたのはいいことだ。
それだけ、俺たちの生活が豊かになったということなのだから。
ネルシアたち海人族は、汚染に苦しみながらもその生活水準は崩れてなかったようだからな。
同盟種族として、俺たちもいつまでも洞穴暮らしは恥ずかしい。
「まだまだ足りんからな! どんどん家作りといこう!」
「言ってることは合ってるのがお前のムカつくところだ……」
まあ、しばらくは家づくりだろうな。
役割分担を考えると俺たちはそうなるだろう。
緑を増やして安定化させる者。水と食料を確保する者。
動物たちの世話をする者。そして村を作る者。
まあ、最低限それくらいはやらないと、ネルシアにもプロゴノスにも笑われる。
「やはり洞穴とは別に作るべきか?」
「だろうな。せっかく、こんなにきれいな空気と空を与えられたんだ。この空の下で生きていくべきだろ」
「洞穴がもったいないな」
「倉庫代わりにでもすればいいんじゃないか?」
今まで俺たちが暮らしていたということもあり、申し分ない広さではある。
ただ、これまでは気にしていなかったな。いや、気にする余裕がなかったというべきか。
どこに誰が住んでいていくつ洞穴があるか、ちょっと調べてみるか。
「よお、オルンとセファか。家づくりしてなかったっけ?」
「ああ。それも進めてはいるが、ついでにちょっと調べたくてな。俺たちの住処の洞穴について」
「あ~。たしかに、今後空けることになるとしたら、魔物が住み着いても困るからなあ」
そういう危険もあったか。
今更魔物が数匹住み着いても問題はないが、寝ている間に子供が襲われたりしたら困るからな。
やはり、今のうちに管理しておく必要がありそうだ。
「悪いな。ちょっとお前の住処見せてくれ」
「ああ。それにしても、ここでの暮らしももう終わりと思うと、なんだか感慨深いな」
「任せろ! 俺たちが立派な家を建ててやるとも!」
安請け合いすんなよな……。
まあ、やるからには満足いくものを用意したいところだが。
……ネルシアにもっと聞いておくべきだったか? 人が住むための場所について。
いや、あいつは海人族だから、俺たちとはまた別の基準か。
「しかし、俺たち意外と互いを知らなかったな」
今後倉庫にする予定の場所を見て回ると、オルンがそんなことを言ってきた。
「まあ、それだけ余裕がなかったからな」
横のつながりもあるようでなかったりした。
そう考えると、うっとうしいオルンとはやけに関わりがあったのがなんか嫌だ……。
決まった何人かでやり取りはしていたが、集団同士に興味がなかったんだよな。こいつ以外。
こいつはこいつで満遍なく話しかけていたが、深くは踏み入っていない様子だったし。
食い物と水を配給するときに、ちょっと顔を見るくらいのやつもいたっけ。
まあ、今は違うというか変わらないといけないな。
数少ない翼人なんだから、協力できないとすぐに絶滅だ。
むしろ、今までよく生き残ってこれたと思えるほどだ。
「さてとこっちは……暗いな」
「誰かの住処のはずだよな? 真っ暗で何も見えねえから、本当に寝るためだけの場所か」
「お……オルンとセファじゃないか。どうした? うちに来て」
こいつは……。
駄目だ。向こうは名前を覚えているみたいだが、悪いが俺は覚えていない。
顔は見たことあるんだよ。顔はな。
「俺たちが家作りしてるって聞いてないか? 家を作った後に、元の洞穴をどうするか考えないといけないから、今のうちに数と場所と広さを調べてんだよ」
「ああ、そういうことか。だとしたら、うちは利用するのに向いてないぞ。見ての通り光をまるで通さないからな」
だよなあ。まじで暗い。
なんも見えねえよ。……逆によく眠りやすい場所ではあるのかもしれないな。
「となると、家作りはお前のところを最優先にしたほうがいいかもな」
「お、そうか? 悪いな。助かる」
「これでは何も見えないからな! いや、目を凝らせばなんとか……」
なんか、音がしなかったか?
オルンもその音を聞いたのか、あるいは目を凝らして何かを見たのか、奥に迷わず進んでいった。
「お、おい! 暗いから危ないぞ!」
「なあ、さっき物音しなかったか?」
もしかして、早くも魔物が住み着いたとかないよな……?
だとしたら、ここから俺たちに夜襲とかされても困るぞ。
いや、プロゴノスたちじゃあるまいし、そんな計画的な襲い方はしてこないか。
「さ、さあ? 気のせいじゃないか……」
「セファ! 治癒の水を持ってこい!」
「は? 怪我でもしたか?」
転んだ音とかはしなかったし、そもそもその程度ではこいつは治癒の水を使うことはない。
ということは……いや、もしかして、誰かぶっ倒れているとかじゃねえだろうな。
急ぎ中を進むと、俺もようやく多少は目が慣れてきた。
にしても、暗すぎだろ。目が慣れてもほぼ何も見えねえ。
「おい、オルン。何があった?」
「子供たちが倒れている。怪我もしているようだ。おい、無事か」
「は?」
オルンの言葉を聞いて中へと駆けこむと、たしかにそこには倒れている子供たちがいた。
……怪我。魔物ではないな。殴られた痕か? これは。
いや、まずは治療の水だな。
「おい、しっかりしろ」
「……傷は治ったようだが、意識を失っているようだな」
「死んでいないのならそれでいい」
それにしても、どういうことだ?
さっきのやつの住処の中に怪我をした子供が倒れていた。
……まあ、つまりはそういうことだよな。
「おい、これはどういうことだ」
「そ、それは……」
「ここはお前の住処だって話じゃなかったか?」
問い詰めようとしたところ、外から何人かの翼人たちがやってきた。
こいつの仲間だったよな。何度か一緒にいるのを見たことがある。
「おい、なんでセファとオルンが……」
「ど、どうなってんだ?」
「こっちが聞きてえよ。なんで、こいつの家とやらに怪我した子供が転がってんだ」
「や、やべっ……」
……絶対何かあるじゃねえか。
めんどくせえ……。勘弁してくれよ。
「話を聞かせろ」
「そ、そいつらは巫女様が忌み子だったとき、食料を盗んだなんて嘘をついたんだ!」
「そのせいで俺たちは、巫女様になるほどの子供を忌み子としてここに閉じ込めることになった」
……あの巫女様、こんなところにいたのか。
顔を見たことはなかったが、忌み子というか不吉の象徴が存在することは聞いていた。
面白くもない話だから、そもそも耳に入れないようにしていた。
ただ、やはり忌み子は悪だったなんて判断が下されたって噂はどこかで聞いたっけ。
……それが、実は冤罪だったってことか?
「……おい。まずいだろ。やすらぎ様の巫女だぞ」
「そ、そうだよ! だから、迫害する切っ掛けになった悪い子供たちは、同じ目に遭わせて罰してから生贄にするんだ!」
……一見すると理屈はわかるが、じゃあこいつらは?
あの巫女様を迫害していたのは、こいつらも同じなんじゃないのか?
もっと言えば、知ろうとしなかった俺たちに罪はないのか……?
「……全員で話し合う。まずはそこからだ」
もしかして、俺たち翼人が滅びていないのは、あの巫女様の恩情か、あるいは気まぐれなんじゃねえのか?
◆
「リ、リオラ先輩……」
覚悟を決めたような顔で、フィーネがリオラに向き合ってるねえ。
なんだろう。なんか言いにくいことかな?
後輩として、先輩に何か思うところがあったとか?
「なんですか。フィーネ」
「あ、あの……わ、私も……リオラ先輩の翼に触れてみてもいいでしょうか!?」
「……」
わあ。リオラが固まってる。
すごいねフィーネ。私の完璧な巫女をこんなふうにするなんて。
あ、再起動した。
「理由は?」
そうそう。急に翼を触らせてなんて言ったら、リオラも困っちゃうよね。
親しき中にも礼儀ありなんだから、そんな気軽に人の体に触れちゃったら……。
「そ、その……やすらぎ様が気持ちよさそうに触っているので、つい気になって」
私のせいだったよ畜生!
なんかごめんね!? 礼儀のない神様で!
「物好きですね……。こんな」
リオラは言葉の途中で私のほうを見つめていた。
「いえ。ええ。この翼はやすらぎ様が認めてくださった自慢の翼です。あなたの気持ちもわかりますが、やすらぎ様専用の翼です」
「ですよねえ……」
「ですが、一度くらいは許しましょう」
リオラ偉い! ちゃんと後輩と仲良くできてるねえ。
本当に立派な巫女になったもんだよ。この子は。