世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「み、巫女様……。本日はどのようなご用件で……」
「す、すぐにオルンとセファを呼んできますので、少々お待ちを……」
「待ちなさい。今日はオルンとセファだけでなく、翼人全てに話があります」
わ、私たちを……罰しに……。
だ、駄目。このままじゃ、巫女様の怒りを買う。それだけでなくやすらぎ様の怒りまで……。
オ、オルン! セファ! あんたたちなら、巫女様と共闘したんでしょ!?
なんとか巫女様をなだめて! お願い!
「す、すぐに……。少々お待ちを……」
「この先で集まって話しているのであれば好都合ですね。では、私もついていきます」
全然ごまかせない!
そもそもごまかそうって考え自体間違っているってことね……。
ええ。私たちも顔は見たことあるもの。
白い翼が忌み子の象徴と言われたときに納得し、そういうものかと放置してしまったもの。
あのときの子供が、こんな立派な巫女様になるなんて思わないじゃないの!
「ご、ご案内……します……」
「ええ」
「あ、あの。巫女様が来たことはオルンとセファに伝わっていると思います。む、向こうからやってくるかもしれません」
「では、その前に連れて行ってください」
「はいぃ……」
なんか大変な話になってきたなあ……。私、外で見張りをしていただけなのに……。
というか、重鎮みたいな連中が全員話をしているから、私は見張りとしても力なんてないのに……。
うん。罰を受けよう。
もう素直に案内してごめんなさいと言おう。
それで許されなかったとしたら、そのときはそういう運命だったんだろうね……。
「あ、あの~。巫女様がみんなに話があると……」
私の言葉を聞き、おじい様やおばあ様が気まずそうな表情を浮かべる。
あのセファやオルンでさえもばつが悪そう……。もうその時点で異常事態だよ……。
イルオに至っては、なんか正気じゃなくなってる気がするし……。
あそこで倒れてる子供たち平気? 巫女様と同じくらいの年齢っぽいけど……。
「も、申し訳ございませんでした巫女様」
え、え? 全員で土下座? あ、私もしないと。
こ、これってやっぱり巫女様がかつての復讐に来たってことだ!
ああ……。翼人たち、滅んじゃう……。
◇
……なんでしょうか。これ。
私がやってきたらいつもより怯えられました。
まあ、それは私に慣れていない者だからかもしれません。やすらぎ様の威光にひれ伏すのはいいことです。
ただ、ちょうど翼人どもが集まっているということなので、その場に案内された途端に土下座されました。
……はっ! まさか、やすらぎ様に対する侮辱でもあったということですか!? 不敬罪で私に裁きをゆだねている!?
「いいでしょう。話してみなさい。あなたたちの罪を」
「は、はい……」
重々しく口を開く様子から察するに、おそらくやすらぎ様への相当な侮辱があったはず……。
許しません。翼人どもめ……。
「ま、まずは、今更ではございますが……。あなた様を忌み子などと定めてしまい……申し訳ございませんでした」
「は?」
なんですか? 急に昔の話を掘り返して。
え? ……駄目です。話の流れが全然わかりません。
忌み子……。え? もしかして、まだ私のことを忌み子と呼んでいるとか?
巫女なんですけど!
「私はやすらぎ様の巫女です。私への侮辱は許しません」
「そ、そうですよね……。やはり、かつて巫女様を忌み子などと呼んでしまった罪は重い……。我々に罰を与えに来たのもそのため、ということですね?」
……かつて。
うん? なんで昔の話? や、やすらぎ様~。翼人がわけわかんないこと言ってきます……。
ええいリオラよ! あなたはやすらぎ様の巫女! ここは自分の力で切り抜けなさい!
「罰……。何の罰ですか?」
「あ、あなたを忌み子と認定しました!」
「こ、このガキどもが巫女様が食料を盗んだなんて言ったんです!」
「それだけじゃないだろ。巫女様を暗闇に閉じ込めて翼を汚染したのはお前たちだ」
「そもそも、そんなことになっていることを知らなかった翼人全体が罪だな……」
昔の話ばっかり! どうでもいいんですけど!
それよりも今の罪は? やすらぎ様を侮辱したことを隠すというのなら、私だって容赦しませんよ!
「今の罪は?」
「は、はい……。それなのに謝罪もせず、巫女様とやすらぎ様の」
「待ちなさい」
男の一人が説明しようとしましたが、私はその言葉を遮りました。
男はびくっと肩を震わせて、私の言葉を待っています。
「やすらぎ様と私のことを呼ぶときは、必ずやすらぎ様を先にしなさい。無礼です」
まったく……。礼儀がなっていないですね。
「は、はい……。ええと……やすらぎ様と巫女様からもらうだけもらい、巫女様への謝罪すらしていませんでした……」
……?
やすらぎ様はお優しい神様です。翼人どもにも施すのは当然です。
謝罪ではなく感謝と祈りをと言ったはずですが、なぜ謝罪に?
「……」
◇
「も、申し訳ございません……」
どうしようどうしよう。
巫女様どんどん無口になってる……。
絶対許してくれてないよね? これ。
「ひ、必要とあらば……。い、生贄を……」
あ……。
そ、それは……だ、駄目……。
「は?」
巫女様の目がさっきよりも冷たくなった気がする……。
そ、そうだよね……。だって、巫女様と同じ境遇を増やすってことだし!
そんなの巫女様にとって不快でしかないに決まっている!
「み、巫女様のお怒りが鎮まらないのも……理解しています。であれば、あの者たちを生贄に……」
「それは駄目だ! 巫女様は、そのようなことを望まれる方ではない!」
「それに、やすらぎ様もだ。あの神様は生贄を必要としない」
……よ、よかった。
さすがはオルンとセファ。こんな状況でもしっかりと意見を言ってくれる。
たぶん、巫女様にとっての正解は二人の言葉だったんだよね?
心なしか、巫女様の冷たい目がやわらいで……。やわらいでるのかな?
キリっとした目だからよくわからない……。
「意味が分かりません。そもそも、なぜ今さら昔の話を?」
「……忌み子について、俺たちは何をしたか理解していなかった」
「だから、巫女様に改めて謝罪をと思っただけだ」
「……今さら謝罪されても困ります」
……これは、許しというよりは無関心。
あの方は巫女様になられた。だから、翼人のときのことをきっと気にされていない。
だけど、だからといって私たちの罪が許されたわけでもない。
私たちは、結局のところ自分たちで話し合って贖罪方法を決めないといけないんだと思う……。
あれ……。でも、そうしたらなんで?
「あ、あの……。い、生贄をという発言について……き、気分を害されていた理由は……」
気になったのでつい聞いてしまったけど、やめとけばよかった……。
私はもっとすみっこで話だけ聞いておくべきだった。
ああ、でももう聞いちゃった……。
「なぜ? 生贄など不要です。神様にとっての巫女は私だけ……私と見習いの四人だけです。新たな巫女など必要ありません」
……?
新たな巫女。生贄が?
え、ええと……。
考えを整理しようとした瞬間、私は心臓をわしづかみにされたような感覚に陥った。
な、何かとんでもない存在が!?
周りのみんなもびくっとして動けなくなっている。
オ、オルンとセファ。それに当然巫女様はものともしていないみたいだけど……。
こ、これってまたすごい魔物が襲ってきたとか!?
ど、どうしようどうしよう……。
「リオラ。お待たせ」
「ぎょええっ!? ま、魔物!!?」
「違うけど」
思わず叫んだ私に、その正体不明の存在はやけにかわいい声で律儀にも答えてくれた……。