世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
ついに魔物と言われた安浦凪です。こんにちは。
私も魔物の一員とし、共食いをしてからプロゴノスの配下に入ろっかな。
いや、リオラがプロゴノスを倒して魔族の王になりそう。やめとこ。
「跪きなさい。やすらぎ様の御前です」
跪かなくていいんだってば。
いや、この場では跪いたほうがいいのかな?
う~ん、なんかやたらと重々しい現場だねえ。
あ、なんか翼人の女の子がこっち見てる。軽く手を振ってあげよう。
……怯えられた。なぜだ。手が六本あっちゃいけないのかなあ!?
あ、なんか翼人の巫女がこっち見てる。なでてあげよう。
……甘えられた。だよねえ。手が六本あるから、いっぱいなでられるよ?
「リオラ。状況は?」
さて、今日も今日とてリオラに癒された。
ってことで、この状況について確認しておこっか。
優秀なリオラのことだから、もしかしたらすでに神殺しの刃について情報を得ているかも。
「……申し訳ございません。それが、まだ情報を聞きだせておりません」
「ありゃあ」
おやまあ。珍しいことだねえ。
リオラって、いつも早さと正確さがすごい子ってイメージなのに。
もしかして、翼人たちも簡単には口を割らなかったのかな?
「なんか、よくわからなかったです……」
「うん?」
困っているリオラ。珍しい。
……いや、私はいつもこの顔見てるけどね? 私がちょいとわがまま言ったときとか、こういう顔見せてくれるし。
だから、この顔は私のものなのに。翼人たちに奪われてしまうとは……。
「今さら忌み子がどうとか、やすらぎ様への新たな生贄がどうとか」
「ええ……。困る」
忌み子のほうはともかく、新たな生贄ってなに?
あ、もしかして最近育てている動物の話?
家畜を一頭私に分け与えてくれるとかだとしたら、わりと乗り気でいただいちゃうよ。
いいよねえ。牛肉豚肉鶏肉。全部好きさ。魚とかでもいいよ。
「ですよね。特に翼人の生贄なんて、私以外認めません」
「自分を大切にね」
「ほら見なさい! やすらぎ様もそうおっしゃっています!」
「リオラのことね」
自分は生贄でもいいという考えやめようね。
あと、翼人たちも私の言葉に感動している暇あったら、リオラみたいな犠牲者出さないよう徹底しようね。
「や、やすらぎ様! 巫女様にこの者たちが無礼を働いたこと謝罪いたします! 生贄を捧げるのでどうか私たちを見捨てないでください!」
聞いてた?
神様、ついさっき生贄困るって言ったよね?
ええと……つまりこういうこと?
リオラを昔いじめていたけれど、急にリオラが偉くなって復讐が怖くなったってこと?
馬鹿だねえ。リオラはそんなことする子じゃないよ。
「どうします? 滅ぼしますか?」
私にだけ聞こえるように言ったのは偉いね。褒めてあげる。
でも、考え方がバイオレンスなんだよねえ……。
馬鹿だねえ私。リオラはそんなことする子だよ。
「忌み子については、リオラが怒っているかどうか」
「怒っています。そりゃあそうでしょう? 翼を黒く染めてやるとか言って、汚染されたんですよ?」
だよねえ。
汚染は翼人たちの死因の一つだ。
むしろ汚染されないように気を付けるべきなのに、翼の色を変える名目でわざと汚染させられた。
それだけで、一気に寿命を減らされたようなものだ。いったい、リオラにはどれほどの恐怖だっただろう。
「やすらぎ様が美しいと言っていたこの白を、身勝手にも黒に染めようとするなんて恥を知りなさい」
「あ、そっち」
案外気にしてないのかね。これは。
それとも、リオラなりに翼人たちに気を遣っている?
……いや、違う気がするなあ。本気で翼人たちに興味がない。
それでいて、たまに翼人たちなんて滅びればいいと思っているんだね。この子は。
う~ん。わりと複雑な状況なのかもしれないね。私がしっかりと支えてあげねば。
「とにかく、私への謝罪として生贄などよこされても迷惑です」
「それはそう」
「で、では……私たちはどうすれば……」
「やすらぎ様のために祈りなさい。やすらぎ様への信仰こそが、あなたたちに唯一できる信仰です」
「は、はい!」
こうしてリオラは私の信仰を増やしているんだねえ。
なんか、また信仰が上がった気がするよ。あとで確認してみよう。
「ご、ごめんなさい……。私たち、あなたを陥れて……」
「その謝罪に意味はありません。もうすべてが終わった後ですから」
なんかびくびくしていた少女たちがリオラに謝ってる。
同い年くらいだけど、もしかして彼女たちもリオラ迫害に一役買っていたのかな?
……私のリオラにひどいことしたのかな?
でも、そうしないとリオラが私と会うことはなかったし……複雑だねえ。
「ひっ! す、すみません! すみません!」
ありゃ。怯えられちゃった。
何も言ってないのに。見ていただけなのに。
「やすらぎ様。ありがとうございます。ですが、私は大丈夫です」
リオラまで私にそんなこと言うってことは、もしかしたら私はちょっと怒ってしまったのかな?
う~ん。うん? そうなのかなあ?
よくないねえ。巫女だけに肩入れして、世界の子たちを叱るのは神様的にアウトだった。反省しないと。
「さて、ようやく本題に移れますね。私を忌み子扱いしたことはどうでもいいのですが、最後に使命を与えたときに渡した神殺しの刃。これをどこで手に入れたかを答えなさい」
お、そうそう。それが本題だからね。
いやあ、なかなか遠回りをしてしまったもんだよ。
リオラの言葉を聞いて、何の話かわからなさそうにしている者たちがほとんどだった。
ただ、さすがに一部の者たちは知っているよね。
「か、神殺しの刃ですか……?」
「そう。どこにあった?」
「こ、これは……。その」
おや? 言い淀んでいるね。何か言えない理由でもあった?
となると、だいぶ面倒ごとの予感がしてくる。
まいったなあ。このまま出どころを聞いて終わりかと思っていたけれど、解決しない何かがあるのかもしれない。
「教えて」
「う……。は、はい……。で、ですが……」
こりゃあ相当だね。
うわあ……すっごい嫌な予感がしてきた。
神殺しの刃。効果は本物。翼人たちは私にすら言えない。
そんなやり取りを見ていて埒が明かないと思ったのか、あるいは私の質問に答えなかったことが気に入らなかったのか、リオラが眉をひそめた。
いや、それだけでなく毅然とした態度で翼人を問いただした。
「なぜ言えないのですか。やすらぎ様はこの世界の唯一の神様です。やすらぎ様こそ最も尊ばれ、優先されるべき存在です」
照れる。
リオラは今日も私のことが大好きです。
「……唯一なのでしょうか?」
「は?」
まさか反論されると思っていなかったらしく、リオラはますます不機嫌そうになる。
でもねえ。私の考え通りならそう言うのも無理はないと思うんだ。
やっぱりかあ……。本当に思っていた以上の面倒ごとが潜んでいるらしいね。
「この世界を管理してくださる神様は、やすらぎ様ただ一人です。まさか、他に神を名乗る愚か者が現れたとでもいうのですか?」
「……」
まあ、それが答えだろうね。
私に言えない。ということは、私と同じような神側の存在がそれを渡したってこと。
「そのような愚か者がいるのであれば、罰するしかありませんね。言いなさい。誰ですか。翼人ですか? 海人族ですか? 魔族ですか?」
ネルシア、プロゴノス、逃げて。
私の巫女が今にでもあなたたちのところにすっ飛んでいく。
「いえ……。神の使徒と呼ばれる方に渡されました。世界を管理する神様がまともに働かないのであれば、殺して次を待てばいいと……」