世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする   作:パンダプリン

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第55話 ミッシング異邦人

 ついに魔物と言われた安浦凪です。こんにちは。

 私も魔物の一員とし、共食いをしてからプロゴノスの配下に入ろっかな。

 いや、リオラがプロゴノスを倒して魔族の王になりそう。やめとこ。

 

「跪きなさい。やすらぎ様の御前です」

 

 跪かなくていいんだってば。

 いや、この場では跪いたほうがいいのかな?

 う~ん、なんかやたらと重々しい現場だねえ。

 

 あ、なんか翼人の女の子がこっち見てる。軽く手を振ってあげよう。

 ……怯えられた。なぜだ。手が六本あっちゃいけないのかなあ!?

 あ、なんか翼人の巫女がこっち見てる。なでてあげよう。

 ……甘えられた。だよねえ。手が六本あるから、いっぱいなでられるよ?

 

「リオラ。状況は?」

 

 さて、今日も今日とてリオラに癒された。

 ってことで、この状況について確認しておこっか。

 優秀なリオラのことだから、もしかしたらすでに神殺しの刃について情報を得ているかも。

 

「……申し訳ございません。それが、まだ情報を聞きだせておりません」

 

「ありゃあ」

 

 おやまあ。珍しいことだねえ。

 リオラって、いつも早さと正確さがすごい子ってイメージなのに。

 もしかして、翼人たちも簡単には口を割らなかったのかな?

 

「なんか、よくわからなかったです……」

 

「うん?」

 

 困っているリオラ。珍しい。

 ……いや、私はいつもこの顔見てるけどね? 私がちょいとわがまま言ったときとか、こういう顔見せてくれるし。

 だから、この顔は私のものなのに。翼人たちに奪われてしまうとは……。

 

「今さら忌み子がどうとか、やすらぎ様への新たな生贄がどうとか」

 

「ええ……。困る」

 

 忌み子のほうはともかく、新たな生贄ってなに?

 あ、もしかして最近育てている動物の話?

 家畜を一頭私に分け与えてくれるとかだとしたら、わりと乗り気でいただいちゃうよ。

 いいよねえ。牛肉豚肉鶏肉。全部好きさ。魚とかでもいいよ。

 

「ですよね。特に翼人の生贄なんて、私以外認めません」

 

「自分を大切にね」

 

「ほら見なさい! やすらぎ様もそうおっしゃっています!」

 

「リオラのことね」

 

 自分は生贄でもいいという考えやめようね。

 あと、翼人たちも私の言葉に感動している暇あったら、リオラみたいな犠牲者出さないよう徹底しようね。

 

「や、やすらぎ様! 巫女様にこの者たちが無礼を働いたこと謝罪いたします! 生贄を捧げるのでどうか私たちを見捨てないでください!」

 

 聞いてた?

 神様、ついさっき生贄困るって言ったよね?

 ええと……つまりこういうこと?

 リオラを昔いじめていたけれど、急にリオラが偉くなって復讐が怖くなったってこと?

 馬鹿だねえ。リオラはそんなことする子じゃないよ。

 

「どうします? 滅ぼしますか?」

 

 私にだけ聞こえるように言ったのは偉いね。褒めてあげる。

 でも、考え方がバイオレンスなんだよねえ……。

 馬鹿だねえ私。リオラはそんなことする子だよ。

 

「忌み子については、リオラが怒っているかどうか」

 

「怒っています。そりゃあそうでしょう? 翼を黒く染めてやるとか言って、汚染されたんですよ?」

 

 だよねえ。

 汚染は翼人たちの死因の一つだ。

 むしろ汚染されないように気を付けるべきなのに、翼の色を変える名目でわざと汚染させられた。

 それだけで、一気に寿命を減らされたようなものだ。いったい、リオラにはどれほどの恐怖だっただろう。

 

「やすらぎ様が美しいと言っていたこの白を、身勝手にも黒に染めようとするなんて恥を知りなさい」

 

「あ、そっち」

 

 案外気にしてないのかね。これは。

 それとも、リオラなりに翼人たちに気を遣っている?

 ……いや、違う気がするなあ。本気で翼人たちに興味がない。

 それでいて、たまに翼人たちなんて滅びればいいと思っているんだね。この子は。

 う~ん。わりと複雑な状況なのかもしれないね。私がしっかりと支えてあげねば。

 

「とにかく、私への謝罪として生贄などよこされても迷惑です」

 

「それはそう」

 

「で、では……私たちはどうすれば……」

 

「やすらぎ様のために祈りなさい。やすらぎ様への信仰こそが、あなたたちに唯一できる信仰です」

 

「は、はい!」

 

 こうしてリオラは私の信仰を増やしているんだねえ。

 なんか、また信仰が上がった気がするよ。あとで確認してみよう。

 

「ご、ごめんなさい……。私たち、あなたを陥れて……」

 

「その謝罪に意味はありません。もうすべてが終わった後ですから」

 

 なんかびくびくしていた少女たちがリオラに謝ってる。

 同い年くらいだけど、もしかして彼女たちもリオラ迫害に一役買っていたのかな?

 ……私のリオラにひどいことしたのかな?

 でも、そうしないとリオラが私と会うことはなかったし……複雑だねえ。

 

「ひっ! す、すみません! すみません!」

 

 ありゃ。怯えられちゃった。

 何も言ってないのに。見ていただけなのに。

 

「やすらぎ様。ありがとうございます。ですが、私は大丈夫です」

 

 リオラまで私にそんなこと言うってことは、もしかしたら私はちょっと怒ってしまったのかな?

 う~ん。うん? そうなのかなあ?

 よくないねえ。巫女だけに肩入れして、世界の子たちを叱るのは神様的にアウトだった。反省しないと。

 

「さて、ようやく本題に移れますね。私を忌み子扱いしたことはどうでもいいのですが、最後に使命を与えたときに渡した神殺しの刃。これをどこで手に入れたかを答えなさい」

 

 お、そうそう。それが本題だからね。

 いやあ、なかなか遠回りをしてしまったもんだよ。

 リオラの言葉を聞いて、何の話かわからなさそうにしている者たちがほとんどだった。

 ただ、さすがに一部の者たちは知っているよね。

 

「か、神殺しの刃ですか……?」

 

「そう。どこにあった?」

 

「こ、これは……。その」

 

 おや? 言い淀んでいるね。何か言えない理由でもあった?

 となると、だいぶ面倒ごとの予感がしてくる。

 まいったなあ。このまま出どころを聞いて終わりかと思っていたけれど、解決しない何かがあるのかもしれない。

 

「教えて」

 

「う……。は、はい……。で、ですが……」

 

 こりゃあ相当だね。

 うわあ……すっごい嫌な予感がしてきた。

 神殺しの刃。効果は本物。翼人たちは私にすら言えない。

 

 そんなやり取りを見ていて埒が明かないと思ったのか、あるいは私の質問に答えなかったことが気に入らなかったのか、リオラが眉をひそめた。

 いや、それだけでなく毅然とした態度で翼人を問いただした。

 

「なぜ言えないのですか。やすらぎ様はこの世界の唯一の神様です。やすらぎ様こそ最も尊ばれ、優先されるべき存在です」

 

 照れる。

 リオラは今日も私のことが大好きです。

 

「……唯一なのでしょうか?」

 

「は?」

 

 まさか反論されると思っていなかったらしく、リオラはますます不機嫌そうになる。

 でもねえ。私の考え通りならそう言うのも無理はないと思うんだ。

 やっぱりかあ……。本当に思っていた以上の面倒ごとが潜んでいるらしいね。

 

「この世界を管理してくださる神様は、やすらぎ様ただ一人です。まさか、他に神を名乗る愚か者が現れたとでもいうのですか?」

 

「……」

 

 まあ、それが答えだろうね。

 私に言えない。ということは、私と同じような神側の存在がそれを渡したってこと。

 

「そのような愚か者がいるのであれば、罰するしかありませんね。言いなさい。誰ですか。翼人ですか? 海人族ですか? 魔族ですか?」

 

 ネルシア、プロゴノス、逃げて。

 私の巫女が今にでもあなたたちのところにすっ飛んでいく。

 

「いえ……。神の使徒と呼ばれる方に渡されました。世界を管理する神様がまともに働かないのであれば、殺して次を待てばいいと……」

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