世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする   作:パンダプリン

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第56話 出る杭を引っこ抜く

「神の使徒……?」

 

 少なくとも私は知らない。

 当然だね。だって、私はこの世界に来て最初に会ったのがリオラなんだから。

 それ以外の誰かに私は何も命じていないし、当然神殺しの刃を授けてもいない。

 ってことは、私以外の誰かを崇めている者がいる? それとも、神の名を騙って行動している者がいる?

 

 ……いや、そもそもこの世界にそんな余裕ある人いる?

 いないね。ってことは、それって別世界の人間?

 あるいは、別世界の神様の仕業じゃないかなあ……。

 あ~嫌だ。もっとさあ! 自分の世界だけに付きっきりになろうよ!

 よその世界にちょっかい出したり出されたりしてる暇ないの! 私には!

 

「特徴は?」

 

 それでも一応聞くけどね! 私管理女神だし!

 ただ、絶対に聞いてもどうにもならないけどね!

 ぷんぷんと怒っていると、なんか翼人たちがさらに頭を低く下げた気がする。

 あちゃあ……。神の怒りが伝わった可能性がありそうだねえ。ごめんよ。

 

「は、はい! 黒い髪と褐色の肌でしたが、翼のない男でした」

 

「翼人じゃないね」

 

「は、はい!」

 

 ほらね! まったくもう! 絶対別世界の誰かだよ!

 私のかわいい子たちに、なんてものを渡してるんだか!

 おかげでシュリーを撃退できたのは助かったよ、ありがとう!

 

「その者の場所はわからないのですか?」

 

「わ、わかりません! あれ以来一度も見たことがありませんので……」

 

 ま、そりゃあそうだよねえ。

 用が済んだら私にバレる前に帰るでしょ。

 というか、私と入れ違いになった可能性すらある。

 ……ということは、私への嫌がらせとかじゃなくて、まだ管理神がいない世界に渡しただけってこと?

 それはそれで意味わかんないねえ。

 

「なにかわかったら、教えて」

 

「も、もちろんです!」

 

 残念ながら、これ以上は本当に何も知らなさそうだねえ。

 ついでに他のみんなにも聞いてみようかな。

 こういうとき種族が少ないと楽でいいねえ。たった三種族しかいないのだから。

 ……楽じゃなくてもいいから、もっと繁栄してほしいなあ。

 

    ◆

 

「やすらぎ様。巫女。よくぞお越しくださいました」

 

「久しぶり」

 

「待ちなさい。なぜ巫女のほうから様が抜け落ちたのですか」

 

「すまない。本音が出た」

 

「このっ……」

 

 リオラ、拳をギリギリと握らないようにね。

 あと、プロゴノスが日に日に人間らしくなっている気がするねえ。

 これはいい成長ではあるはずだけど、リオラからしたら生意気になってるとか思ってるんだろうなあ。

 

「やすらぎ様は敬っているのだから、問題なかろう」

 

「なるほど。たしかに……」

 

 そこで納得するのもどうかと思うよ。

 そんなことだから、プロゴノスに良いように言いくらめられるんだと思う。

 まあ、どっちも子供だもんね。リオラは少女だし、プロゴノスは変化したばかりの魔族だから。

 そう考えると、この世界って子供のが強いね。

 オルンやセファやネルシアよりも、リオラとプロゴノスのほうが強いし。

 

「……」

 

 ちらっとこの場にいるもう一人を見ると、その子はびくっと肩を震わせてひれ伏そうとした。

 

「そのままでいい」

 

 私の言葉にピタッと動きを止めるも、どうすればいいかわからずにプロゴノスのほうを見ている。

 この子かな? 新しくプロゴノスの仲間になった魔族は。

 そういえば、初めて見るね。

 

「ダスカロス。やすらぎ様の言葉に従え」

 

「……はい」

 

「ダスカロスっていうんだ」

 

「はい。やすらぎ様に名前をいただいたように、俺が名付けました」

 

「いいと思う」

 

 しっかりと魔族の代表として頑張っているんだねえ。

 今は二人。だけど、その前までは一人だった。

 なら、ここからプロゴノスの仲間はどんどん増えていくことだろう。

 

「……」

 

 しかし、まだまだ私には慣れてないみたいだねえ。

 なんか警戒心の高い子犬っぽくてかわいい。

 よし、なでてあげようかな! 神様が直々に!

 

「っ!?」

 

 ふむ。いい尻尾じゃないの。

 リオラの翼もいいけれど、ダスカロスの尻尾もなかなかのものだね。

 ……そうなってくると、プロゴノスの尻尾も気になってくるというもの。

 

「巫女。やすらぎ様が俺を見ている気がする」

 

「すぐに逃げなさい。私が身代わりとなり、あなたのことは必ず守ります」

 

「貴様の殊勝な態度ほど怖いものはないな」

 

「いいからあなたのなでられる権利を、私によこせと言っています」

 

「やはり……俺をなでようとしていたのか」

 

 リオラはいつでもなでられるけれど、プロゴノスとダスカロスは今だけだからね。

 ということで、犬系のもふもふ成分をここで堪能しておこう。

 

「あ、あの……」

 

「うん」

 

「ダスカロス諦めろ。やすらぎ様の決定だ」

 

 子犬だからか、ダスカロスのほうは恥ずかしがってるねえ。

 それに引き換え、プロゴノスはすっかりと落ち着いて私になでられている。

 ほほう? 抵抗しないのなら、それはそれで私の遠慮はどんどんなくなるよ?

 

「やすらぎ様。先にお仕事です。その間手がお暇なら私の翼をお貸しします」

 

 あ、そっか。用件をすっかり忘れていた。

 さすがは私の巫女。今日も立派で賢くてかわいい。

 

「用件。やはり、何か問題が起きていましたか。お聞かせください」

 

「うん。神殺しの刃知ってる?」

 

「そこの巫女が、あの邪神を追い払った神具ですね? ……あれは、やすらぎ様が授けたものではなかったのですか?」

 

「いえ。私の村にありました」

 

「翼人……。やはり、とんでもない種族なのでは?」

 

 プロゴノスがまた勘違いしている。

 なんか、リオラが忌み子だったと聞いたから、翼人の強さの最低限がリオラだと勘違いしてたっぽいけど、今回さらにその勘違いが上乗せされてるね。

 

「でも、翼人も誰かから渡された」

 

「そうです。やすらぎ様がおっしゃる通り、神の使徒を名乗る何者かが渡したそうです」

 

「ふむ……。魔物だったころの記憶をたどっても、俺は魔物と翼人以外は知らんな。どんな見た目だ?」

 

「黒髪、褐色肌の男。翼はない。尻尾もない。……なでるところがない?」

 

 ダスカロスが尻尾を隠した。

 プロゴノスは苦笑し、リオラはどや顔している。

 さすが私の巫女。まだ見ぬ神の使徒にすでに勝ち誇っている。

 

 ただ、ここも情報なしかあ。

 というかすごいね、プロゴノス。

 魔族になってからだけじゃなくて、魔物のときの記憶もあるんだ。

 ってことは、このまま魔族が増えたら、かつて魔物だった誰かの記憶に残ってたりするかなあ?

 

「さあ、情報はこれ以上ありません! 次に行きましょう。やすらぎ様!」

 

「え、まだ」

 

 ぐいぐいと手を引っ張ってくる。

 まあ、残り五本あるわけだけど。

 

「巫女。お前、たまにやすらぎ様さえも翻弄しようとするな」

 

「黙りなさい尻尾でやすらぎ様を誘惑する悪人。やすらぎ様は私の翼が一番なんです」

 

「それはそう」

 

 なんか一瞬動きが止まったと思ったら、へなへなと力が抜けていった。

 なに? お腹すいた?

 

「わ、私が一番?」

 

「え、うん」

 

「王よ。あの巫女、自分で言ったことを賛同されたら力が抜けました」

 

「気にするなダスカロス。巫女とはそういうものだ」

 

「なるほど……」

 

 違うと思うよ。プロゴノスの教育大丈夫かなあ。

 なんか、あっちもこっちも心配になってきて、神様としてやること多そうだねえ。

 

    ◇

 

「最悪。なんで私がこんな死にかけの世界の管理女神なのよ。あの変人みたいに、喜んでゴミの管理するやつなんかいないっつーの」

 

 神。この世界を管理する神。

 間違いない。あいつだ。あいつだ……。あいつが!

 この世界をこんなことにしておきながら、人類を救う気がない邪神だ!

 

「死ねっ!」

 

「は……? え!? ちょ、ちょっと!?」

 

 刺さった。刺さった!

 本当に神を殺せた! これで、あの人の言うとおりになる!

 悪い神様を倒したら、次の神様が俺たちの世界を救ってくれる!

 

「ほんと……最悪——」

 

「へえ、うまくできたじゃん。すごいすごい」

 

「あ、神の使徒様! 俺、やりました! ちゃんと邪神を殺し——」

 

 え? なんで?

 俺の体にも同じような傷が……。し、死ぬ……?

 い、嫌だ。い——。

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