世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「神の使徒……?」
少なくとも私は知らない。
当然だね。だって、私はこの世界に来て最初に会ったのがリオラなんだから。
それ以外の誰かに私は何も命じていないし、当然神殺しの刃を授けてもいない。
ってことは、私以外の誰かを崇めている者がいる? それとも、神の名を騙って行動している者がいる?
……いや、そもそもこの世界にそんな余裕ある人いる?
いないね。ってことは、それって別世界の人間?
あるいは、別世界の神様の仕業じゃないかなあ……。
あ~嫌だ。もっとさあ! 自分の世界だけに付きっきりになろうよ!
よその世界にちょっかい出したり出されたりしてる暇ないの! 私には!
「特徴は?」
それでも一応聞くけどね! 私管理女神だし!
ただ、絶対に聞いてもどうにもならないけどね!
ぷんぷんと怒っていると、なんか翼人たちがさらに頭を低く下げた気がする。
あちゃあ……。神の怒りが伝わった可能性がありそうだねえ。ごめんよ。
「は、はい! 黒い髪と褐色の肌でしたが、翼のない男でした」
「翼人じゃないね」
「は、はい!」
ほらね! まったくもう! 絶対別世界の誰かだよ!
私のかわいい子たちに、なんてものを渡してるんだか!
おかげでシュリーを撃退できたのは助かったよ、ありがとう!
「その者の場所はわからないのですか?」
「わ、わかりません! あれ以来一度も見たことがありませんので……」
ま、そりゃあそうだよねえ。
用が済んだら私にバレる前に帰るでしょ。
というか、私と入れ違いになった可能性すらある。
……ということは、私への嫌がらせとかじゃなくて、まだ管理神がいない世界に渡しただけってこと?
それはそれで意味わかんないねえ。
「なにかわかったら、教えて」
「も、もちろんです!」
残念ながら、これ以上は本当に何も知らなさそうだねえ。
ついでに他のみんなにも聞いてみようかな。
こういうとき種族が少ないと楽でいいねえ。たった三種族しかいないのだから。
……楽じゃなくてもいいから、もっと繁栄してほしいなあ。
◆
「やすらぎ様。巫女。よくぞお越しくださいました」
「久しぶり」
「待ちなさい。なぜ巫女のほうから様が抜け落ちたのですか」
「すまない。本音が出た」
「このっ……」
リオラ、拳をギリギリと握らないようにね。
あと、プロゴノスが日に日に人間らしくなっている気がするねえ。
これはいい成長ではあるはずだけど、リオラからしたら生意気になってるとか思ってるんだろうなあ。
「やすらぎ様は敬っているのだから、問題なかろう」
「なるほど。たしかに……」
そこで納得するのもどうかと思うよ。
そんなことだから、プロゴノスに良いように言いくらめられるんだと思う。
まあ、どっちも子供だもんね。リオラは少女だし、プロゴノスは変化したばかりの魔族だから。
そう考えると、この世界って子供のが強いね。
オルンやセファやネルシアよりも、リオラとプロゴノスのほうが強いし。
「……」
ちらっとこの場にいるもう一人を見ると、その子はびくっと肩を震わせてひれ伏そうとした。
「そのままでいい」
私の言葉にピタッと動きを止めるも、どうすればいいかわからずにプロゴノスのほうを見ている。
この子かな? 新しくプロゴノスの仲間になった魔族は。
そういえば、初めて見るね。
「ダスカロス。やすらぎ様の言葉に従え」
「……はい」
「ダスカロスっていうんだ」
「はい。やすらぎ様に名前をいただいたように、俺が名付けました」
「いいと思う」
しっかりと魔族の代表として頑張っているんだねえ。
今は二人。だけど、その前までは一人だった。
なら、ここからプロゴノスの仲間はどんどん増えていくことだろう。
「……」
しかし、まだまだ私には慣れてないみたいだねえ。
なんか警戒心の高い子犬っぽくてかわいい。
よし、なでてあげようかな! 神様が直々に!
「っ!?」
ふむ。いい尻尾じゃないの。
リオラの翼もいいけれど、ダスカロスの尻尾もなかなかのものだね。
……そうなってくると、プロゴノスの尻尾も気になってくるというもの。
「巫女。やすらぎ様が俺を見ている気がする」
「すぐに逃げなさい。私が身代わりとなり、あなたのことは必ず守ります」
「貴様の殊勝な態度ほど怖いものはないな」
「いいからあなたのなでられる権利を、私によこせと言っています」
「やはり……俺をなでようとしていたのか」
リオラはいつでもなでられるけれど、プロゴノスとダスカロスは今だけだからね。
ということで、犬系のもふもふ成分をここで堪能しておこう。
「あ、あの……」
「うん」
「ダスカロス諦めろ。やすらぎ様の決定だ」
子犬だからか、ダスカロスのほうは恥ずかしがってるねえ。
それに引き換え、プロゴノスはすっかりと落ち着いて私になでられている。
ほほう? 抵抗しないのなら、それはそれで私の遠慮はどんどんなくなるよ?
「やすらぎ様。先にお仕事です。その間手がお暇なら私の翼をお貸しします」
あ、そっか。用件をすっかり忘れていた。
さすがは私の巫女。今日も立派で賢くてかわいい。
「用件。やはり、何か問題が起きていましたか。お聞かせください」
「うん。神殺しの刃知ってる?」
「そこの巫女が、あの邪神を追い払った神具ですね? ……あれは、やすらぎ様が授けたものではなかったのですか?」
「いえ。私の村にありました」
「翼人……。やはり、とんでもない種族なのでは?」
プロゴノスがまた勘違いしている。
なんか、リオラが忌み子だったと聞いたから、翼人の強さの最低限がリオラだと勘違いしてたっぽいけど、今回さらにその勘違いが上乗せされてるね。
「でも、翼人も誰かから渡された」
「そうです。やすらぎ様がおっしゃる通り、神の使徒を名乗る何者かが渡したそうです」
「ふむ……。魔物だったころの記憶をたどっても、俺は魔物と翼人以外は知らんな。どんな見た目だ?」
「黒髪、褐色肌の男。翼はない。尻尾もない。……なでるところがない?」
ダスカロスが尻尾を隠した。
プロゴノスは苦笑し、リオラはどや顔している。
さすが私の巫女。まだ見ぬ神の使徒にすでに勝ち誇っている。
ただ、ここも情報なしかあ。
というかすごいね、プロゴノス。
魔族になってからだけじゃなくて、魔物のときの記憶もあるんだ。
ってことは、このまま魔族が増えたら、かつて魔物だった誰かの記憶に残ってたりするかなあ?
「さあ、情報はこれ以上ありません! 次に行きましょう。やすらぎ様!」
「え、まだ」
ぐいぐいと手を引っ張ってくる。
まあ、残り五本あるわけだけど。
「巫女。お前、たまにやすらぎ様さえも翻弄しようとするな」
「黙りなさい尻尾でやすらぎ様を誘惑する悪人。やすらぎ様は私の翼が一番なんです」
「それはそう」
なんか一瞬動きが止まったと思ったら、へなへなと力が抜けていった。
なに? お腹すいた?
「わ、私が一番?」
「え、うん」
「王よ。あの巫女、自分で言ったことを賛同されたら力が抜けました」
「気にするなダスカロス。巫女とはそういうものだ」
「なるほど……」
違うと思うよ。プロゴノスの教育大丈夫かなあ。
なんか、あっちもこっちも心配になってきて、神様としてやること多そうだねえ。
◇
「最悪。なんで私がこんな死にかけの世界の管理女神なのよ。あの変人みたいに、喜んでゴミの管理するやつなんかいないっつーの」
神。この世界を管理する神。
間違いない。あいつだ。あいつだ……。あいつが!
この世界をこんなことにしておきながら、人類を救う気がない邪神だ!
「死ねっ!」
「は……? え!? ちょ、ちょっと!?」
刺さった。刺さった!
本当に神を殺せた! これで、あの人の言うとおりになる!
悪い神様を倒したら、次の神様が俺たちの世界を救ってくれる!
「ほんと……最悪——」
「へえ、うまくできたじゃん。すごいすごい」
「あ、神の使徒様! 俺、やりました! ちゃんと邪神を殺し——」
え? なんで?
俺の体にも同じような傷が……。し、死ぬ……?
い、嫌だ。い——。