世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「まだ帰らないよ」
「な、なぜ!? やはり尻尾がいいんですか? 尻尾がいいんですね? 私の翼というものがありながら……」
「そっちはそっちで好き」
なんか暗い目をしそうになっていたけど、本音を伝えたらいつものきらきらなリオラになった。
表情ころころ変わるねえ。かわいいねえ。
「なるほど……。どちらも好きということであれば、プロゴノスとダスカロスの尻尾を切断してしまえば、ライバルが消えることに……」
「やめろ」
「わ、私の尻尾を……切断……?」
やめようね。
プロゴノスはリオラの突飛な発言になれてきているみたいだけど、ダスカロスは違うからね?
尻尾を抱えちゃっててかわいいね。
「あ、あの……やすらぎ様に尻尾を見られていますが、どうすれば」
「何!? 私を差し置いて見られるなんて、やはり切断……」
「俺の部下をいじめるんじゃない」
リオラ、そのうち切断系の技能とか習得しそうだねえ。
まあ、さすがに冗談か。……冗談だよね?
なんか不安になってきたし、みんなが仲良くしているところ悪いけど本題に入ろう。
「プロゴノス。魔族ができたなら、今後家が必要」
「ええ。ちょうど翼人たちも住居の作成をしていたようですし、私たちもそのうち必要にはなるでしょうね。まだ、二人だけなので急ぐ必要もありませんが」
そうなんだよねえ。
ただ、ここで問題が一つだけある。
オルンたち翼人は、自分たちで好きな場所を決めて好きに住処を作れる。
だから、私も彼らについては見守るだけで口出ししていない。
でも、プロゴノスはちょっと事情が違う。
私が特定の魔物たちだけをダンジョンで暮らすようにとしてしまった。
魔族が現れてからは、そんな魔物たちの管理を魔族に任せてしまっている。
つまり、プロゴノスたちは、この場所に住むようにと神である私に命じられているわけだ。
問題なのはここから。
このダンジョンって、だいぶ硬いんだよねえ……。
そう簡単に壁を破壊したりできないほどには。
だから、彼らには非常に窮屈な思いをさせてしまうことになる。
私の命令でそうなるのはかわいそう。
「プロゴノス。おいで」
「はい、やすらぎ様。……おい、なぜついてくるんだ巫女」
まあ、リオラが近くにいても平気だから。
そのまま進めちゃおっか。
私ほどとは言わずとも、プロゴノスでもある程度はダンジョンを適当にいじれるようにっと。
「できた。プロゴノス。ステータス見て」
「ステータス。そういえば、私たちも見ることができるのでしたね」
「私の子だから」
もともとは魔物だったから、気付いてなかったのかもね。
でも、ステータスは私の世界の子たち全員が見られる。
ということで、プロゴノスにはしっかりと見てもらおう。与えたものを。
「ステータス」
そう念じると、彼には自身のステータスがしっかりと映ったらしく、ちょっと驚いているね。
ダスカロスもこっそりと試して驚いているし、でっかいわんことちっちゃいわんこがかわいい。
「どう? というか、みんなで見ていい?」
「ええ。ただ、これは自分以外にも見えるのでしょうか?」
そこは神様だからねえ。ちょっといじればこの通りさ。
――自己情報
名称:プロゴノス
種族:魔族
年齢:20
レベル:50
加護:やすらぎ様の加護、武運の加護、不屈の加護、統率の加護
称号:魔族の王、初陣の戦士、魔物狩り、討伐者、熟練討伐者、百戦の戦士、特殊個体
技能
・魔物統率
・共食い
・汚染無効
・身体能力強化
・獣の爪
・ダンジョン操作
「……プロゴノス。年齢詐称はよくありませんよ」
「俺のせいではないわ!」
そ、そうだよね。ステータス改ざんなんてやり方教えていないし。
ただ、そうなるとやっぱり最初に目を引くのが年齢だよねえ。
二十歳? プロゴノスって最近生まれたばかりのはず……。
あ~そういうことか。もともとは魔物だったから、その期間のことも含んでいそうだね。これ。
「やすらぎ様の加護……」
あ、そういえばそう書いてあった。
おのれシステム。以前までは低位管理女神ナギにしていたくせに、勝手に変えたな?
リオラがなんか自分のステータス見てるね。
「ふっ、私もやすらぎ様の加護はいただいております」
「何言っているんだ。俺がいただけているのだから、当然だろう」
きっと自分のステータスもやすらぎ様かどうか確認したんだろうねえ。
というか、リオラのまで名前変わってるってことじゃん。
システム……。ま、いっか。
「それよりも、ダンジョン操作」
「はい。他はともかく、これは覚えがありませんね」
「さっきあげた」
「……ありがとうございます。魔族が繁栄したあかつきには、必ずやすらぎ様を崇拝するよう教えます」
そこまでしなくてもいいよ。
……いや、こういうチャンスでちゃんと信仰を稼がないと駄目だった。
なんか、私の性格的に信仰稼ぎってあまり向いてないんだよねえ。
「その通りです。私ですらいただけていない力を授かったのですから、すぐにでも信仰を増やせるよう魔族も増やしなさい!」
まあ、かわりにリオラがぐいぐいといってくれるわけだけど。
「増やすにしても、住処は大事」
「その通りです。もしや、これでダンジョンを変化させられる、ということでしょうか?」
「壁とか道なら作れる」
「……あの堅牢な壁を操れる。なるほど、それだけでも防衛に使えそうです」
あれえ? そっちに行っちゃう?
なんかうまく整地して魔族用の区画というか、町みたいなのでも作れたらって思ったんだけど。
まあ、防衛は防衛で大切だよね。
あげた以上はどう使っても文句は言わない。プロゴノスに全部任せよう。
「防衛ですか……。それは、いずれくる翼人たちとの戦いに備えて?」
あ、そっか。
今は仲良くしているけれど、いずれはそういう戦争も起きるかもしれないんだね。
う~ん。私としては仲良くしてほしいけど、こればっかりは無理強いできないからなあ。
「いや、オルンやセファとは敵対する意思はない。だが、あの邪神のように何が脅威になるかわからんからな。備えはあればあるほどいいだろう」
「そうですね。まあ、翼人を滅ぼしたければ好きにすればいいですけど」
「今敵対しないと言ったはずだが……。巫女、お前本当に翼人への恨みないのか?」
「我が王……。同種族のはずの巫女が、どちらかといえば私たちの味方のような気が……」
「ダスカロス、巫女を常識で考えてはいけない。お前もいつか常識で制御しきれない者と遭遇することもあるだろう」
私の巫女の常識が疑われている。
まあ、あれだよ。リオラは本気で翼人たちを恨んではいない。
でも、こうやって憎まれ口叩く程度は嫌いな部分もあるってことだね。
かわいいもんじゃない。この程度ですんでいるんだから。
さて、神の使徒と神殺しの刃については確認した。
プロゴノスに渡すものは渡した。
プロゴノスとダスカロスの尻尾も堪能した。
ここでの用事はこんなもんだね。
「またね」
「はい。いつでもお越しくださいやすらぎ様」
プロゴノスに続きダスカロスが頭を下げる。
そういえば、ダスカロスのほうは何歳なんだろう。
もともとの魔物ベースの年齢だけど、あの見た目からするとまだ子供なのかな。
「残念ながら、有益な情報はありませんでしたね」
「でも、プロゴノスも順調。ダスカロスにも会えた」
「ええ、ダンジョンの繁栄もあの者たちならば、きっと問題ないでしょう。そしていつかはダンジョンで暮らす者たちからの信仰がやすらぎ様に……」
うまくいくといいねえ。
リオラの長期計画が成就するときは、プロゴノスは本当に魔族の王様みたいになっているかもしれない。