世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「一つ思った」
「はい! なんでしょうか!」
今日もリオラは全力だ。
ネルシアたちと別れた後、ちょっと思うことがあった。
「プロゴノスにはダンジョン操作を与えた」
「そうですね。あの犬がしっかりと信者を増やせばいいのですが」
口が悪いのか、あるいは軽口を言い合える仲なのか。
……まあ、仲は悪くないし後者だねきっと。
「ネルシアには潮流の宝玉を与えた」
「ええ。神様から授かったものを壊すことなく使うとは、彼女も巫女見習いと認めてあげてもいいかもしれません」
おや、出会ったときは自分こそが本物の巫女って感じだったのにね。
アリアナたちがきたことで、リオラの意識もまた変わってきたのかもしれないね。
うん。いい感じに成長していて神様は嬉しいよ。
「だけど、翼人たちには何もあげてない」
「いらないのでは?」
ノータイムで反応しないでね。
うちの巫女が今日も同種族に厳しい。
しかも当然だと思っているのだからすごい子だよねえ。
「でも、何か平等に」
「翼人たちには、私という巫女を選出した栄誉を与えているので大丈夫です」
むむ。案外納得できる理由を出してきたねえ。
う~ん……。いいのかなあ?
「私は忌々しいことに翼人ですが、巫女ですし強いです。やすらぎ様のおかげでそんな戦士を作れた、十分です!」
……うん。リオラが言うのならそうなのかも。
平気? 私洗脳されてない? リオラが言うことなら正しいんだよね?
現地の翼人という当事者なのに、なぜここまで参考にならない気がするんだろう……。
「まあ、動物くらいは増やしてあげよう」
「やすらぎ様の慈悲にやつらをひれ伏させましょう」
◆
「やすらぎ様に感謝し、頭を垂れて祈り続けなさい!」
初手祈りの強要をする。それが私の巫女です。
そしてそれに従うのが翼人です。
なんだ、この種族。
「久しぶり」
「も、申し訳ございません。神の使徒の情報はいまだになく……」
あ、一応集めようとしてくれていたんだ。偉い。
それなら、なおさらプレゼントしないとねえ。
「動物あげる」
「……? ……あ、ありがとうございます!」
絶対わかってない。
うん。私が悪かった。さすがに何の脈絡もなかったことは認めるさ。ごめんよ。
「やすらぎ様は海人族と魔族に宝と技能を与えました。翼人族には私という巫女を選出した栄誉を与えているのに、慈悲深きやすらぎ様はそれでは不平等だとおっしゃっています」
「な、なんと……。さすがはやすらぎ様だ! 聞いたかセファ!」
「聞こえてるし、うるせえし、喋んな。巫女様の邪魔だぞ」
相変わらず仲いいねえ。
さて、リオラのおかげでいい感じに話が進んでいきそうだね。
「よって、あなたたちにはやすらぎ様が動物を与えます。これを用いて生活をさらに改善し、祈りを捧げなさい。あと、動物のごとく繁殖して信者を増やせとおっしゃっています」
おっしゃってない!
ぜんっぜんおっしゃってないんだけど!?
なんで納得してんの翼人ども!
え? これ、私がおかしいの?
というか、子供のリオラでさえそんな現実的な……。
あ~。まあ、しょうがないよね。ギリギリの世界で生きていたんだし。
「……動物あげるからご飯も増える」
「た、たしかに! であれば、人が増えても飢えないかもしれない……!」
「魔物だけでなく、別の食料が……。ありがたい……」
なんかけっこう死活問題だよねえ。
魔物食べなさいってしてたけど、それはあくまでも応急処置だもの。
魔物ばかり食べていても、きっと長生きはできな……。
長生きは……。あれ? 寿命の設定って……どうなってた?
「……」
「やすらぎ様? どうされましたか?」
「……ナンデモナイヨー」
やばっ!
今気づいてよかった! それ、世界が安定した後に魔物が増え続ける原因になるじゃん!
この世界が崩壊寸前で過酷で、明日をも生きられない世界だから見落としてた!
絶対、この世界に寿命による死がないじゃん!
「……では、やすらぎ様にはお仕事ができましたので、与える動物についての説明や実際に運ぶのは私が行います。あなたたちにやすらぎ様が何度も御姿を見せるのは、もったいない」
「はい、感謝します! やすらぎ様! 巫女様!」
「やすらぎ様。どうぞこの場は私に任せて、お仕事にお戻りください」
「うん。みんなこれからもがんばって」
リオラが優秀すぎる!
私の異変を察して、すぐに私が仕事に戻れるように気遣ってくれた!
あとで翼を二時間かわいがってあげるからね!
◆
「ひえ~」
「おかえりなさいませ。やすらぎ様」
「ただいまセレス」
「あれ、リオラ様はどうしたんですか? ご一緒していましたよね?」
「アリアナ。先に帰ってきた」
「な、何か大変なお仕事が発生したのでしょうか……? わ、私たちもお手伝い……しますか?」
「平気。ありがとう。フィーネ」
見習い巫女たちも優秀だねえ。駄目なのは管理女神だけだよ!
急げ急げ。寿命設定寿命設定。
私はあわてて作業部屋兼私室に入ってシステムを呼び出す。
「システム。生体」
――管理コマンド入力
――[生体情報]
――対象:下位領域魔物群
……わあ。予想通り。
寿命ないじゃん。この子たち。
えっと……。翼人は? 海人族は? 魔族は?
全部ないねえ……。
どうしよう。
このままじゃみんなが豊かな生活になったら、そのまま死ぬことがなくなってしまう。
ど、どうする? 今から寿命をしれっと追加する?
でも、何年にすべきなの?
むむむむ……。これ、思い付きでさらっと変えていい問題じゃないねえ。
っていうか、仕様も設計もろくにしない思い付きでの修正とか、新たなバグになる予感しかしない!
「……私は駄目な神様です」
「や、やすらぎ様!? 大丈夫ですか!?」
「ど、どうしよう……。リオラ先輩なら、こんなときに翼でケアするんだけど……」
「落ち着いてください、やすらぎ様。あなたが駄目な神様なら、あの邪神は邪悪です。駄目のほうが全然いいです」
シュリー……。すっごい嫌われてる。
いや、私もしっかりしないとシュリーの二の舞だ!
しっかりと考えてから、まずは魔物たちの寿命を設定しよう。
魔族は……どうしようね?
プロゴノスとダスカロス。このままだと老衰しないってことになるのかな?
いや、老化だけして死なないとかだと、それはそれで辛いね。
う~ん……。シュリーが関与したからなあ。
そのあたりの設定もちょっと読み解かないとね。
あ~。やること増えてく。ふかふかが恋しい私の巫女の翼が。
「……まず、魔物」
うん。それだけはしっかりとしておこう。
そうしないと、今後も魔物を減らす方が間に合わなくなりそうだし。
翼人が狩っているし、プロゴノスたちも管理と共食いさせているんだけどねえ。
ただ、それでもこの世界の中では定着しちゃったんだろうね。
汚染はだいぶなくなった。でも、汚染まみれだったこの世界は、魔物が簡単に現れるように定着した。
……いっそ、そっちを修正する? いや、これはこれで全体のコード見直しレベル。きっつい。
「ま、ぼちぼちやってこ……」
明日の私に投げるとかではないけれど、焦らずしっかりがんばろう。
そうしないとどうせ私のことだから、またどこかでミスするからねえ……。
リオラ~。たすけて~。なぐさめて~。
◇
「以上が、やすらぎ様が授けてくださる獣たちです。あなたたちより賢いので、ありがたく思いなさい」
「は、はい!」
「……」
「巫女様。どうした?」
「……オルンですか。いえ、やすらぎ様が私を求めていた気がするので」
「……巫女になると、そんな技能まで?」
「いいえセファ。これは私のやすらぎ様への思いの強さがなせる業なのです!」
「そ、そうですか……」
さあ、そういうことなのでさっさと帰らないといけませんね!
やすらぎ様! あなたの巫女リオラが今すぐ戻りますよ!