世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする   作:パンダプリン

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第60話 飛ぶ鳥を落とす災害

「おかえり~」

 

「やすらぎ様! 今すぐ翼で包みます!」

 

「さいこ~」

 

 私の癒しがやってきた。

 さあて、この中でのんびりと考えないとねえ。

 ついでにリオラを抱きしめておこう。

 

 まず、寿命を設定していないのは失態だった。

 このままでは、世界が安定したあとに世界中の生物が飽和してしまう気がする。

 であれば、どうするか。寿命の設定は必ず必要になってくる。

 どのくらい必要かなあ? 増えにくい種族は長めに、増えやすい種族は短めに、それが鉄板だったよね。

 ただ、その限りではないっていうのが、完全な世界での状況だったからなあ。

 

 ま、こっちに関してはいったん猶予がある。

 なんせ、今すぐに寿命を設定したところで、どうせその日が来るまでに数年はかかるのだから。

 だから、それ以外の問題のほうを考えよう。

 

「リオラ。魔物の分布、予想外だった」

 

「予想外……。つまり、外に小数のみ配置し、大半は狩り用としてダンジョンに入れたのは間違いだったと」

 

「そうしたいけど、外の魔物は今後も増える」

 

「それは……汚染を浄化したのに、ということですか?」

 

 うん。さすがに優秀だね。

 私のたどたどしい説明でも、簡単に理解を示してくれる。

 浄化することで汚染が減る。汚染から発生する魔物も減る。だから、あらかじめ保護したんだけどミスだったなあ。

 まさか、汚染を直しても同じだけの魔物が出てくるだなんて……。

 現に、今の世界を見渡しても魔物の総数あまり変動してないもんね。

 

「このままだと、動物増えても魔物に食べられる」

 

「なるほど……由々しき事態です。少々お待ちください」

 

「待って」

 

 私が声をかけなかったら絶対飛び立とうとしたでしょ?

 そうして、世界のめぼしい魔物狩ろうとしたよね? 神様わかるんだから。

 リオラは優秀なときと全力投球なときがあるから、後者のときは基本的に止めるべきなのだ。

 

「しかし、このままでは神様と私だけの楽園が」

 

「人類絶滅するの?」

 

 楽園の果てに私とリオラしか残らないんだとしたら、それはもう管理大失敗だからね?

 ……まあ、二人きりになりたいというのなら、どこかで二人きりになって全力で愛でてやるけれども。

 

「まあ、今は翼人たちがいるから」

 

「そうですね。まことに不本意ながら、やつらに託した動物の繁栄だけで我慢しておきましょう」

 

 翼人たちと共に育っている動物たちなら、翼人たちが守ってくれるはずだからね。

 なんかあったら守ってくれる隣人は大切。

 となると、翼人がもっと増えたら世界中に動物も存在できるってことかなあ。

 ……そうなると、大地が翼人で埋め尽くされてバランス悪そうだねえ。

 

 いっそのこと、新しい種族でも作る?

 いやあ、大仕事だけど……。でも、必要ならそれでもやるしかないよねえ。

 魔物の生態のほうをいじっても、魔物から動物を守る種族を作っても、どっちにしろ大仕事かあ。

 どっちがいいかな? よ~く見てみよう。世界の状況。魔物の配置と数。どこから導き出すのは……。

 

「あ」

 

「どうされました? やすらぎ様」

 

「ちょっと大変かも」

 

 よりによって世界を見ていたときに限ってと嘆くべきか、早めに発見できてよかったと喜ぶべきか。

 後者にしておこうかな。どうせなら前向きに考えたほうがいいからねえ。

 

「暴風が発生してる」

 

「暴風……ですか」

 

 暴風というかハリケーンとかそういう災害の近いね。

 これまではそんなことなかったのかもしれないけれど、こうして発生してしまうのは世界が復活してきている証かなあ?

 それとも、ま~たなんか予想外の問題発生かなあ?

 とにかく、まずはこれを解決しないと困ったことになりそうだね。

 

    ◇

 

「オルン!!」

 

 くそっ! あいつ大丈夫かよ!

 まずい。治療の水はいくつあった。いや、そもそもまずは回収を。

 ああ、だめだ! 頭の中が追い付いていない!

 

「セファ! オルンが!」

 

「わかってる! ……弾き飛ばされたってことは、少なくともあれから離れている。どこだ」

 

 落ち着け。落ち着いて探せ。

 あれは近付いたものを飲み込むか弾き飛ばすかのいずれかだ。

 その点でいえば、オルンは運がよかったのかもしれない。

 だが……早く見つけ出して回復しないとまずい。

 どこが……。どこ……そこかっ!

 

「この馬鹿野郎が!」

 

 黒い風の塊の足元。そこにオルンは倒れていた。

 意識がない。くそっ、無茶しやがって。

 魔物が相手じゃねえのに殿なんて必要ねえだろうが。

 

 治療の水をぶっかけると、オルンの傷の大部分は回復した。

 だが……全てではない。それに意識は回復していない。

 

「手伝え。すぐにここから離脱しないと全滅するぞ」

 

「あ、ああ! 手伝う!」

 

 オルンをかついで、なんとか危険な範囲からは離脱した。

 そのうえで改めて観察するが、どうやらだいぶやばそうな代物だな。あれは。

 

「……まずいなこれは」

 

 やすらぎ様から授かった動物たちの様子がおかしい。

 そう伝えられて異変を探しに行った先で、とんでもないものを見つけた。

 翼人である俺たちにとって味方であるはずの風。それが、手に負えない怪物として不気味にたたずんでいた。

 オルンの馬鹿は動物を助けるため自ら突っ込んでいって、あのざまだ。

 

「セファ。これってこのままだとやばいよな?」

 

「ああ。歩みは遅いが確実に進んでいる。その場にとどまるだけの風じゃない」

 

 大規模の暴風は、一度巻き込まれると俺たちでも出られないだろうな。

 悪い冗談だ。翼人でも飛行不能になる風が、大地を滅ぼそうと確実に動き出しているのだから。

 

「ってことは……このままだと俺たちの集落に」

 

「それだけじゃない。大地をえぐりながら進んでいる。また、死の土地になったらたまったもんじゃないぞ」

 

「ど、どうすれば……」

 

 ……わからない。そもそもどうにかできる問題か? これは。

 戦ってどうとかそういう次元を超えているぞ。

 ……できることは、避難だけだな。

 

「戻って伝えるぞ。幸いなことに到達までには時間がかかるはずだ。逃げるしかないだろこんなもの」

 

 穢れ以来だろ、こんなものは。

 戦う方法すらなく、ただ受け入れるか逃げるしかない存在なんて。

 いや、穢れ以外にもあったか……。

 あの異世界の邪神の津波。それを思い出す。

 

 まったく……強くなっているはずなのに、己の無力さを感じてばかりだ。

 なら、せめてできることはしないとな。

 俺たちはすぐに仲間たちにこの事態を知らせることにした。

 

「風が……?」

 

「ああ。大規模な暴風が近づいている」

 

「この場所までか……」

 

「そういうことだ。このままだと、全てがなくなるぞ」

 

 俺の言葉を聞き、仲間たちの表情が曇っていく。

 当然だろうな……。家もようやく増えてきた。動物を飼い、植物を育て、貯蓄なんかもしてきた。

 それが、そう遠くない未来に全て奪われるんだから。

 

「せっかく……ここまでやったのに」

 

「やはり、翼人に平穏なんてないのかもしれないな」

 

 嘆く気持ちはわかる。

 が、今はそんなことしている時間さえ惜しい。

 だが、混乱に近いこの状況。俺の言葉は届くか?

 

「……案ずるな! 全ては……なくならんぞ!」

 

 その声は、やけに馬鹿みたいでそれでいて自信があって、それでもこちらの不安をいくぶんか払拭する声だった。

 なんだ。起きたのかよ。なら、さっさと来いっていうんだ。馬鹿が。

 

「オルン……。お前、大丈夫なのか?」

 

「暴風に巻き込まれても俺はこうして生き延びた! だから案ずるな! 落ち着いて対処すれば、被害は幾分か減らせるぞ!」

 

 混乱はおさまり、誰もが話を聞く体勢となった。

 それにしても、まったくもって面倒なことになりそうだ……。

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