世界を管理する最弱女神は、滅びた世界をデバッグする 作:パンダプリン
「避難するぞ!」
「まあ、それしかねえよな」
さすがのオルンも嵐に突っ込めとは言わなかったか。
そう考えると、一度嵐に突っ込んで大怪我した甲斐があったのかもしれないな。
「セファ。なんか変なこと考えてないか?」
「いや、まっとうなことだ」
「そうか! ならよかった」
こいつ、どんどんちょろくなってない?
俺と行動することによって、思考を放棄したんじゃないだろうか?
……まあ、それはそれでこいつらしいか。
「とりあえず、荷物まとめて逃げるぞ。急げよ」
武器と食料ち水。ダンジョンで得た治療の水は特に必要だな。
あとは動物たち。せっかくやすらぎ様からいただいたんだ。ここに放置するわけにはいかない。
……こんなものしかないっていうのが、なんともさみしい話だよな。
家は持てないから仕方がない話ではあるが。
「あの規模の大きさってことを考えると、だいぶ遠くに離れる必要があるな」
「俺が見張るか!?」
……一瞬考えたがやめた。
こいつはこの前向きさで、仲間たちの不安をかき消して先導する方が使える。
なら、逆に嵐の様子は俺が見ておくべきだろうな。
その間に、物資の移動と避難をしてもらうとするか。
「いや、俺がやろう。お前は周りのやつら元気づけとけ」
さて、まずは一人で引き返すか。
さすがにあの速度ならまだ遠くにあるだろうが、途中から加速でもしたら最悪だからな。
「セファ様。私たちもご一緒します」
「……ああ。なんかあったときのために、個人での行動は控えるべきだな」
俺たちは数人で嵐に向かって飛んでいくことにした。
しっかし、こうして見るとやばいってことだけはわかる。
本当にあの邪神の津波を思い出すな。ネルシアのやつ、よくあの津波を封印したもんだ。
あのとき封印できなければ、今頃は海水でこのあたりもめちゃくちゃだったことだろう。
「動きはやっぱり遅いが……。もしかして、範囲が広がってないか?」
まずいな。嵐は移動するにつれて巨大化している。
ということは、俺たちの住処にやってくるまでには、もっと巨大になっているってことだ。
逃げ切れるのか? これ……。
「セファ様……」
「ああ。避難を急がせるぞ」
まだ来ない。来ないとはいえ……想定よりも遠くまで逃げないといけない。
大地を蹂躙しながら好き勝手進んできやがって……。
魔物もいくつか巻きまれているみたいだが、プロゴノスたちではないな。
ダンジョンは無事ってことなんだろう。
「何人かは観察していてくれ。もちろん、巻き込まれないよう気をつけろ」
「はい!」
嵐の速度と範囲と拡大を観測する者、引き返して想定以上にまずいことを伝える者。二手に分かれる。
俺は一度オルンたちのところに戻らないとな。
忙しくなってきたが、さすがにそうも言っていられないか……。
◆
「いかがいたしましょうか? やすらぎ様」
「助ける」
しばらく観察していたけれど、これはけっこうまずい災害だからねえ。
ネルシアたちの大渦もそうだったけれど、あっちは潮流の宝玉があるからこそ自分たちで対処できていた。
……なら、もう一個なんか作る?
動物を与えたとはいえ、やっぱり翼人たちにもなんか与えないと不公平だし。
「……アイテム作ってみる」
――管理コマンド入力
――[物質操作]
――対象:下位領域
――操作:気流制御器 生成
ま、こんな感じがいいでしょ。
潮流の宝玉の風版って考えれば、これで完璧に帳尻が合うし。
「出ろ~」
っとその前に名前だった。えっと……名前。名前。
あと、名前だけじゃなくて制御用の機構とかも。
潮流の宝玉は使い切りになっていた。でもそれは、あくまでも水の出し入れの部分だけ。
水の操作自体は完璧にできている。
……じゃあ、こっちは最低限は風の操作だね。あとは、風を生むくらいはあっていいかも。
潮流の宝玉ほどじゃなければ、きっとなんとかなるよね。
……いや、難しくない? う~ん……。いっそ安全装置的なのが必要?
誰でも簡単に使えるようにしない。それでいて、ある程度は自動で判断してくれる。
難しいなあ。……いっそのこと、そういう人格とか埋め込む?
「精霊を宿らせる?」
その精霊に管理してもらえばいいのかな?
だとしたら、その精霊をどうやって調達すべきか。
……この世界にまだ精霊はいないね。
ということは、ちょこっと世界のデバッグをして機能を追加しよっかな。
可能性の先取りとして、精霊を一人顕在化させてしまえば……。
――管理コマンド入力
――[生態操作]
――対象:精霊種
――操作:個体顕在化
――[生体操作]
――対象:精霊種個体
――操作:宿器化
――宿器:天嵐覇刃
精霊の追加とそれをアイテムに付属させる。
制御系をこの子に任せることにして……。
よ~し、今度こそ。
「名称、
出来上がったのは一振りの太刀。
和風っぽくなくて西洋風になっちゃったけど、しっかりとした太刀だねえ。
内部に結晶を設置してあって、その中には嵐の精霊を管理者として備えておいた。
さて、まずはその管理者がちゃんとしているか、そこが大切だね。
「天嵐覇刃。おはよう」
「……命を与えてくださりありがとうございます。神様」
「やすらぎ様です」
「やすらぎ様」
そっちに言いなおす必要は果たしてあったのだろうか。
小さい紺色の髪の女の子のような精霊は、風の精霊だけでなく刀自体の精霊でもある。
見た目だけならどの種族よりも一番人間らしいね。
「やすらぎ様。アイテムが消えて人間になってしまったようですが?」
「違う。この子ちゃんとアイテム」
「はい。私の元の姿にはいつでも戻れます」
天嵐覇刃はきれいな太刀に姿を変えた。
うん。しっかりと思った通りのアイテムになっている。
「天嵐覇刃。あなたは、翼人の宝にする」
「翼人ですか……。ええ、私にふさわしい担い手がいればいいのですが」
持ち物になること自体に抵抗はなく、ふさわしいかどうかが問題らしい。
ここは、やっぱり刀の精霊だからかな。そっちの側面が顔を出しているっぽいね。
それじゃあ、さっそく翼人たちに渡しに行こう。
……やっぱり私が渡すべきだろうね。他の二種族もそんな感じだったわけだし。
「リオラ。天嵐覇刃。行こう」
私は二人を引き連れて、翼人たちの元へと向かった。
二度目だぞ~。せめてびびらないでおくれよ~。
◇
「や、やすらぎ様!?」
急な神様の来訪に、ただでさえ混乱気味だった俺たちは余計に混乱することとなった。
だが、優先順位は避難だな! やすらぎ様には悪いが、そう伝えるべきだ。
「やすらぎ様!」
「オルン。久しぶり」
「はい、おひさしぶりです!」
「忙しいだろうから手短に言う。これ天嵐覇刃。風を操る刀。使って」
……これはあれか?
以前ネルシアがいただいたいた潮流の宝玉みたいなものか?
であれば、このタイミング……。もしや、あのときのように邪神が!?
なるほど! だからこそ、こんな嵐という災厄が襲い掛かっているわけだ!
「やすらぎ様。感謝いたします! まさか、再び邪神がこの世界を襲おうとは!」
違う……と思いたいなあ。
さすがに、またシュリーだったらきっついよ。
今回はあくまでも自然発生ってことだと嬉しい。
ネルシアの渦潮も自然発生……にしてはタイミング重なってる?
いや、今はまずはこの嵐の解決だ。
「天嵐覇刃。気に入った子はいる?」
「……あなた。私を使ってみなさい」
あ、天嵐覇刃ってそんな口調なんだ。
私には敬語だったから、そういうものかと思っていた。
「俺か? 俺は長物が武器なのだが……」
「刀の振り方は私がしっかり指導してあげるから。まずは、私を使うにふさわしいか確認させて」
「そういうことならいいだろう!」
オルンが天嵐覇刃を持つと、しばらくの静寂が訪れる。
きっと、そこで何かを感じ取っていたんだろうね。
オルンが刀を振ったりしたわけでもないのに、天嵐覇刃は結論を出した。
「いいわ。これからはあなたの刀になる。よろしくね。オルン」
大変申し訳ございませんが、ストックがなくなってしまいました。
つきましては、今後は毎日更新ではなく不定期更新とさせてください。
できれば週三更新、最低でも週一更新は目指しますので、今後とも拙作にお付き合いいただければ幸いです。