The flower which has died   作:ミスターK

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4話

「全くー。一夏の奴どこいったんだよ?一緒に帰ろうぜって言ったはずなんだけどなぁ」

 

「アンタらの顔が見たくないからかえったんじゃない?」

 

「うるさいでさぁ、リンさん。第一印象ってのは大事だと思いまっせ?」

 

「...............だからその第一印象ってのが終わってんのよ」

 

放課後、いつの間にか教室からいなくなった一夏の奴を探すこと早30分くらい。

学校中を探したがどこにもいやしない。

リンはリンで顔を見たくないからとかひでぇことを言ってくるが、そんなことはない...............と思いたい。

はっきりとは言い切れないのがめちゃくちゃ悲しい。

 

「これだけ探してもいないんだから帰ったんじゃないの?学校にいるとは思えないんだけど」

 

「リンさんの言うことに一票」

 

まぁ、なんとなく言うことは分かるのだけれど、一夏みたいな奴が約束ほっぽり出す友思えない。

考えすぎかもしれねーが。

 

「...............ったく、数馬はいっつもそんなんなのな。すこしくらいは考えろっての」

 

「そんなこと言われてもー、いないんだからどうしようもないで?第一俺たちが考えた程度でどうにかなるわけでもなじゃん?」

 

「いや、そりゃあそうなんだけどなぁ..........」

 

「グダグタしつこい。いないのはいないできっぱり諦めなさいよ。ほら、帰るわよ?日も暮れていたし」

 

「...............わーったよ。帰るかぁ」

 

リンの言う通り日も確かに暮れてきた。

ため息を一つつくとリュックを手に取った。

あいつの家も知らないし、最悪明日理由を聞けばいいことだろう。

そろそろ見回りの先生たちが来そうなのもあるし。最終下校時間を過ぎてるから何言われるかたまったもんじゃない。

 

「そうだ、弾。今日泊めてくんない?」

 

「は?いきなりなんだよ。一昨日泊まったばっかじゃねぇか」

 

「いいじゃないの。今日は親がいるから帰りたくないのよ。でかい家だし空いてる部屋なんていくらでもあるじゃないの」

 

「おや?ラブラブな空気ですねぇ、お二人さん?」

 

「はぁ?誰がこんな奴と。親が嫌だからに決まってるでしょうが。なんならアンタの家でもいいけど?」

 

「それはパス。今日は従兄弟が来るから無理。ただでさえ狭いアパートだしー」

 

「バッサリ言い切られると、傷つくぞこんちくしょー」

 

こいつら.......俺が黙っていれば言いたい放題言いやがって。

本当こいつらって俺の扱いがひでぇな。

俺だって傷つくんだぞ?

 

「さーて帰るわよ。ほら弾、いつまで突っ立ってんの?置いてくわよ?」

 

「へいへい分かったよ...............ったく、泊めてもらう身で何を偉そーに」

 

「なんか言った?」

 

「いえ、なんにもいってましぇーん」

 

まぁ、こいつらは全然気にしちゃいねぇけど。らしいっちゃらしいが。

あっそ。そう言うとリンはスタスタと歩いていった。

家に帰りたがらない理由を知ってるから何も言わねえけどあれはどうにかならないものか。

まぁ、今考えても無駄だから2人を追いかけるだけだけど。

 

「なぁなぁ〜弾君よ。君はスマ○ラの新作を買ったようだね?今度やらせてもらっても良いでござんすか?」

 

「...............んだよその馬鹿みてぇな口調は?そんなこと言わんでもやらせてやっから安心しろよ」

 

「あざーっす。いよっ!弾。太っ腹!」

 

コソコソと先生たちに見つからないように忍びてるなか、数馬がそんなことを言う。

好きすぎて前夜から並ぶとかいう暴挙に出るような奴だからな。まぁ、結局買えなかったみたいだから、このテンションの高さはよくわかる。

俺が買えたのも奇跡だし。

 

「やかましい。教師に見つかったらどうすんのよ」

 

小声でリンが注意してきた。かなりお怒りのようで、すぐさま謝ると黙る。

確かに見つかったらやばいので仕方ない。

10分以上かけてどうにか校門を抜けると、今まで気を張っていた反動からでかいため息が出てきた。

 

「はぁー疲れた。これならさっさと歩いた方が良かったかもしれないわね」

 

「...............今回ばかりはリンの言う通りかもしんねーな」

 

「ふっ。甘いデスねぇお二人さん。夜通し並び続けたことに比べたらこれくらい」

 

「「お前(アンタ)と同じにすんな、アホ」」

 

キラッと伊達眼鏡を輝かせながら言う数馬を一喝する。

スマ○ラを買うために前の晩から並ぶような奴と同じレベルで比べられたかない。

住んでる次元が違うと言う。

てか、いつの間に伊達眼鏡かけたんだよ。

 

「ちょっと黙ってくんない?」

 

「...............いきなり何を言いだすんだよ?」

 

いきなりそう言いだすリン。

急すぎてついていけない。

 

「声が聞こえるのよ。怒鳴り声が」

 

「あ?」

 

言われた通りに耳を澄まし周りの音を聞き分ける。

そうするとあまり遠くないであろう所から怒声が聞こえてきた。

複数聞こえてくる声から喧嘩らしい。

 

「ちょっと行ってみるか?」

 

「.............全く、アンタってやつは。なんでそこまでして首を突っ込むのかしらね?」

 

「そう言ってるけど結構乗り気だな?」

 

「まぁね」

 

見る限りリンはやる気満々らしい。こいつも俺のこと言えねぇんじゃねぇか、と思うがもうどーでもいい。

 

「チョットお待ちね。俺も混ぜてもらいましょうか?」

 

「...............アンタって喧嘩強くないのに大丈夫な訳?」

 

「ふっふっ。甘く見てもらっちゃぁ困りますぜ?こんなことがあろうかときちんと武器があるんですよーこれが」

 

そう言う数馬が鞄から取り出したのは...............

 

「お前、なんで2こんなもん学校に持ってきてんだ...............」

 

メリケンサックにスタンガン。警棒らしきものに催涙スプレーまでもが。

挙げ句の果てには明らかに違法改造と思わしき、ガスガンが二丁に予備マガジンが10個。ガスもきちんとあった。

 

「いざと言うためにさ!」

 

「何がしたいのよ、アンタ...............」

 

「あ、このガスガンアルミ缶くらいだったら5缶くらいまとめて撃ち抜くぜっ(ドヤァ)」

 

「「アウトォーーーーーーッ!!」」

 

思わず声を張り上げた

そんなもん喧嘩に使ったら明らかにやばいし、そもそも誤射の危険もある。そんな物騒なものなんて使わせられん。

とりあえず数馬にガスガンは使うなと念を押し、未だに聞こえる喧嘩であろう場所に向かった。

 

「..........またあいつらね」

 

また。

そういうリンの視線の先には5、6人ほどの集団が。

見知った顔のそいつらはうずくまった1人をリンチしていた。

隣のクラスの問題児であり、度々暴力沙汰を起こしてきた先生たちが手を焼くほど。

喧嘩を売られたこともあったし、売ったこともある。

犬猿の仲といってもいい。

 

「ちょっとまてよ?やられてるのって一夏君じゃないか...........?」

 

「何!?」

 

数馬が唐突にそんなことを言いだす。

言われるままに目を凝らすと、集団の隙間から微かに顔が見えた。

そう、苦痛に歪んだ顔の持ち主は一夏だった。

 

「.........っざけんなよ」

 

カバンを投げ、上着を叩きつけるように脱ぎ捨てて出来る限り身軽に。

靴紐をしっかりと結び解けないようにする。

解けないのを確認すると、ぐっと力をこめて走り一番近かったやつに飛び蹴りをかます。

 

「ったく、弾はなにやってんの!行くわよ数馬!」

 

「あいさー!」

 

 

 

「ふざけんなテメェら!!俺のダチに手ェ出しやがって!覚悟しやがれ!!」

 

 

 

 

 

その年、日本を襲った前例にない程の大寒波の影響で日本中で記録的な雪が降り積もるような中の、寒い、寒い冬のある日のことだった。

 

「このクソガキが!」

 

バシィッ!という音と頬に走る鈍く、そして鋭い痛みが頬に走った。

大の大人、それも働き盛りの男の本気の一撃は途方となく、当時から小柄だったこの体はいとも容易く中に浮き壁に叩きつけられる。

痛かった。

言葉じゃ表せないほどに痛かった。

でも、涙も、嗚咽も、やめても、苦しいも。

普通だったならば込み上げてくるはずのそれらが一切なく、能面のようだと言われるように無機質な表情のままだだ一つ。

 

早く、終わらないかな。

 

そう思った。

 

「食わせてもらってる身で金をとりやがって!どこに隠した!?」

 

力の限り壁へと叩きつけられた。

首を両の手で掴まれているせいで息がしづらかったが、この男はそんなことは関係ないかのようにまくしたてる。

 

「寸黙ってねぇでなんか言ったらどうだ、あ!?」

 

僕はやっていない、とは口が裂けても言わない。

やっていないと言えば、嘘を吐くなと殴られる。かと言ってやっていないけれどやったと言えば、どこに隠した!?このクズが!とどうせ殴られる。

結局暴力を受けるならありもしないかけられた冤罪を認めない。

それは唯一の僕の抵抗。

肩越しにこの男の子供がニヤリと笑う顔が見えた。

あぁ、やっぱりかと思う。

ぼくはこいつにハメられたのだとすぐに理解したが、どっちにしろなにもすることはできないのだから。

 

「オイ!」

 

どれだけ飲んだんだと言いたくなるくらいの酒臭い息をまじかで浴びせられた。

余りの酒臭さに飲んでいないはずのこっちまで酔いそうになってくる。

 

「...............あぁそうかよ。テメェがそこまで寸黙っているっていうならお仕置きが必要だな」

 

お仕置きなんて今もしてるじゃないか。

そう思う僕をよそにこの男は頭を鷲掴みにしてる無理やり歩かされ、連れて行かれた先は凍えるような寒さが広がる外。

雪が降り積もるその白銀の景色。

地獄にしか見えなかったそれ。

到底、寝巻きで居られるような場所ではない。

 

「ふん。いいっていうまでここにいろ。逃げたら.............分かってるだろうな?」

 

なのに、この男はそう言い残すと家の中に入っていった。そしてすぐに聞こえた鍵を閉める音。

だけどそれを気にするほどの余裕はない。

肌を突き刺すかのような猛烈な冷気が襲いかかってくる。寒いを通り越して痛いとすら感じるそれは、僕のことなど御構い無しだった。

暖をとるものも、寒さから身を守れそうな場所も、防寒着も何もない。

降り積もる雪の上を裸足で歩いて行けるはずもなく。

逃げるも何も、もうどうしようもなかった。

 

「...............寒い」

 

ただ、膝を抱え頭をそこに埋めながらうずくまる。そうするくらいしか方法はなかった。

大した差はないとわかっていてもそうせずには居られない。

地獄の長い、長い夜が始まった。

 

 

 

 

 

どれくらいの時間が経ったのだろうか。

心配そうに鳴くこの家の犬に、感覚が残っていない冷え切った頬を舐められながらぼんやりと思う。

手足の感覚はとっくに消え失せ、赤く腫れ上がっていた。

冷たく冷え切っているこの体からはもう生気が感じられず死人のようだった。

 

「...............あったかい、な」

 

そんな有様だったとしても、僕を温めようとしてくれるこの犬がいなければ、きっともうこの世界にはいなかっただろうと思う。感謝してもしきれないほど。

力なく抱き寄せると、相変わらず頬をなめてくる。

もう感覚が残っていないからはっきりとは分からないけれど、この犬の体も冷え切っているのだろう。

いくら毛皮で体は守られているとはいえ、こんなことを続ければいつかはこの犬だって危ないはずだった。

危険を顧みない優しさに涙がこぼれた。

やっと感じれたそれはもちろん人からのものではない。

でも、長らくご無沙汰だった身からすればとても嬉しかった。

一人でも平気。

そう思ったって結局の所は10年ちょっとしか生きていない子供でしかなくて。

ただの強がりでしかなかった。

胸が苦しくてどうしようもなくなる。枯れたと思った涙がこれでもかと溢れ出し、嗚咽が止まらない。

優しさを渇望するように強く抱きしめる。

そんな中薄れゆきながらもどうにか保っていた意識が遠のいていった。

 

 

 

 

 

「御崎一夏!聞いてるの!?」

 

生活指導の先生の声で意識を現実に戻された。

 

「人が聞いてるのに寝ていたの貴方は!?」

 

返事をしなかったからか、胸ぐらを思いっきり捕まれビンタを喰らう。

首にまで響く痛みに意識とは半するように苦悶のこえが漏れた。

 

「ざけんな、このクソババァ!」

 

もう一発打たれそうになった時、弾の怒声が聞こえたとほぼ同時に目の前の先生の顔がぶれた。

手が離され楽になった身で見てみれば、殴り飛ばしたらしかった。

 

「ガキのくせに調子に乗るなよ貴様ァ!」

 

「落ち着きなさい!これじゃあ話になりませんよ」

 

一触即発の空気を断ち切ったのは校長先生の一言。

校長という立場だったからか、それとも個人的にな立場からだったからなのか知る由も無いけれど、今にも反撃しそうだった先生が一瞬に大人しくなった。

 

「話を戻しますが、御崎一夏君。貴方が先に仕掛けたとこの子たちは言っています。証言があるのになぜ認めないのです?」

 

「バカ校長!一夏はやってないって何度言ったら分かるわけ!?アンタの頭の中って空っぽなんじゃないの!」

 

「あなたには発言を許していませんよ、黙っていなさい」

 

「そうだそうだー」

 

「俺らがこいつらに先には仕掛けられたんだぜー」

 

「まじウゼーよな、あそんでただけだっていうのによー」

 

「頭おかしーんじゃねーの?」

 

「あなた達もですよ。今は御崎一夏君、君に聞いてるんです。やったんですよね?貴方が」

 

何度かの同じ言葉を投げつけられる。

側から見れば中立の立場にいるこの校長先生も、結局はあいつたちの見方でしかない。

その目はさっさと認めろ。こんな茶番になど付き合ってられない。

そんな感情が読み取れる。

 

「...............やってない」

 

だからと言ってやってもいないことを認めたりなんてしたくない。そんなことをするのは、馬鹿か間抜けな奴だけ。

僕はそんな奴には絶対に成り下がったりなんてしない否、なりたくなんてない。

腕に抱いた生後間もないであろう、ボロボロの子犬が弱々しく一度だけ小さく鳴いた。

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