The flower which has died   作:ミスターK

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これでとりあえず一区切りつきました。
次からは中学生2年になった、事件から大体一年後くらいの時間軸から
始まりますのでこれからもよろしくお願いします。


8話

呆然とするほかなかった。

どうすればいいのか全くわからない。

どうにか伸ばしたてはただ宙を舞うだけ。

一夏の最後の言葉が鋭く私に突き刺さる。

私はどこで間違えてしまったのだろうか?

自分の無力さを怨まずにはいられなかった。

 

「........ねぇ、ちーちゃん」

 

不意に聞こえた何かを必死に堪えるような束の声。

呆然としていた私自身に喝を入れ、なんだ?と返事をしながら視線を向ける。

だが、背中をこちらに向けているせいで、顔色を読み取ることはできなかった。

 

「私ね?もうIS作るのやめようと思う」

 

「い、いきなりどうした?一夏に言われたことを気にしているのか...............?」

 

「ううん。そうじゃないんだ。いっくんは関係ないの。嫌になっちゃったんだ、こんな世界にね。本当はISを軍事利用なんてして欲しくなかった。単純に宇宙空間での活動の助けになればいいと思って作ったのに、結局は兵器に成り果てた。そして今回の事件。もう、私は耐えられないよ」

 

「...............束」

 

「世界中に散らばる467個のコアを全部シャットダウンさせることも考えた。でもね?ここまでISが社会に浸透している今のご時世じゃ世界はの崩壊は免れないからやれない。敏則さんに迷惑がかかっちゃうから」

 

束も成長したものだなと、なんとなく思う。

他人に迷惑をかけるのを躊躇する。

昔の束だったらあり得なかった。

それが敏則さんに限定されるとしても、だ。

誰からも受け入れられなかった束を正面から受け止めたのは敏則さんだだ一人だけ。

どんなことをされても決して見放すことなく、良いことをすれば大げさなまでに褒め、悪いことをすれば勿論叱られた。

だけど、叱ってそれっきりというわけではなく、その後の事もきちんとしてくれる。

学校の先生以上に先生であり、実の親以上に優しさと厳しさを持って接してくれる。

そんな人だったから救われた人は多いし、幼い頃からの私のように束もまたその一人だった。

 

「作らない、か。お前はそれでいいかもしれないが、世界中の軍部どもは許してはくれんだろうな」

 

「まぁね。だから私は姿をくらまそうと思うんだ。皮肉だけど、ISで磨いた技術があれば私一人くらますくらいだったらなんとでもなるよ」

 

「そうか。いつからくらますんだ?いきなりされたら私も困惑しかねないからな」

 

「んー。今からでも、かな。はっきりとは決めてないけど、数日の間には確実だと考えてるよ。やり残したこともないから」

 

「...............会ってきたのか?」

 

「うん。何も反対されなかったけどね。君の決めたことなら、私が口出しする権利なんて無い。ただ、辛くなったりしたらいつでも帰ってくるといいって、言われちゃった。本当変わらないね、とっしーは」

 

やり残したことはない。

なんとなくひっかかる言葉だったからもしかしたらと思い聞いてみたが、どうやらビンゴのようだった。

まぁ、どっちにしろ何も言わずにくらますとは考えられなかったのもあるのだが。

 

「まぁ、そう言う所が敏則さんらしいからな」

 

私の言葉を皮切りにお互いの間に沈黙が訪れる。

決して居心地の良いものではなかったが、だからと言って逃げ出すほどの魂胆は持ち合わせてなどいない。

 

「...............じゃあ私行くね」

 

「...............あぁ」

 

長い沈黙を破ったのは束からだった。

束自身から言い出したわけではないが、きっと気が向くまで連絡すら取れなくなるのだろうと思う。

神出鬼没なその性格は分かりきっているが、それでも意識してしまうとやはり寂しかった。

 

「あぁ、そうだちーちゃん」

 

窓から出ようとした時。

まぁ、窓から出ようとしている時点でおかしいのだが、束そんな時思い出したかのように振り向いた。

 

「...............いっくんのこと守ってあげてくれないかな?」

 

「いきなり、どうした?」

 

「そのままの意味だよ。いっくんはずっと辛い思いをしてきたのに私のせいでここまでさせてしまったから。だから、せめてちーちゃんだけでもいい。いっくんの側にいてあげて欲しいんだ」

 

そう言う風に言われても。

そんなことが頭の中を過ぎった。

 

「いっくんはきっと人の優しさとか温もりを求めてる。それを満たしてあげられるのはちーちゃんしかいないと思う。だから、いっくんを助けてあげて」

 

「...............でも、私は一夏に」

 

「大丈夫だよ、ちーちゃん。いっくんね?あの言葉は本音じゃない。なんで言っちゃったんだって後悔しているようだったよ。今ならきっと間に合うから早く行ってあげて。もう、日も暮れはじめてるから、ね?」

 

それを言い終えると躊躇いなく窓から身を乗り出した、が。

きっと束のことだ。もう、空の上にでもいるのだろう。

 

「...............」

 

束が居なくなり、部屋の主も居なくなった静かな部屋に私はだだ一人取り残された。

窓の外には夕焼けの空が広がっている。

あと半刻もしないうちに日は沈み暗闇に染まるだろう。

正直なことを言ってしまえば怖かった。

だが、その恐怖と時同じくして冷静になっていく私自身もいる。

気がつけば私は家を飛び出していた。

 

 

 

 

 

眼下には夕焼けに染まりゆく街並みが広がっていた。

1年間を共に過ごしてきた街。

今まで過ごしてきたどんな街よりもたくさんの思い出がある。

だが楽しい幸せな時はいつしか終わりがくると誰かが言っていたように、僕のその時間も終わりを告げた。

考えられる限り最も最悪な形で。

本当はこうなるのかもしれないだなんて分かっていたはずだったのに。

きちんと考えれば理解できたはずだったのに、僕はみんなの優しさに甘えてしまった。

 

.............どうして?

 

やっぱりそればかりしか頭にない。

1度幸せというものを知ってしまったからか、もうあの時と同じように割り切ることが出来なくなってしまった。

1人でいるのが、孤独を感じるのに恐怖を覚えてしまう。

1人でもなんともなかった時からは考えられないほど。

辛くて、苦しくて。

涙がとめどなく溢れ出し、嗚咽が止まらなくなる。

泣かないようにと抑えようとしても止まることはなく、寧ろ意識すればするほど酷くなるだけだった。

 

 

どれだけ泣き続けただろうか。

ずっと泣き続けたせいなのか、もう涙は溢れてくることはない。

まるで涙が枯れてしまったかのように思えるほどに。

日はとうに暮れていた。

辺り一面は暗闇に染まり、切れかかっている頼りない街灯の光が微かに照らしていた。

今更帰ることなんて出来ない。

あんな事を言ってしまったのに、何食わぬ顔をして帰れるほど図太い神経は持ち合わせてなどいない。

後悔しかなかった。

本当だったら束さんは関係なかったのに。

あの人たちは何一つ間違ってなどいなかった。

千冬さんは僕を育ててくれ、束さんはただ自分自身の夢を叶えただけ。

なのに僕はただ激情に身を任せて当たり散らしただけでしかなくて。

それに比べれば誰もが僕を最低な奴としか言わないだろう。

もしかしたら恩を仇で返したというかもしれない。

本当に一層の事死ねれば良かった。

だけど、僕にはそんな勇気はなくて。

悲しいくらいに弱虫だった。

 

「...............一夏」

 

「っ!?」

 

何も出来なくてただ呆然としていたら、唐突に千冬さんの声が聞こえた。

声の位置からして後ろなのだろうか。

だけど振り向く事はどうしても出来なかった。

 

「ここにいたのか。全く、こんなところにいたら風邪を引いてしまうぞ?」

 

「...............」

 

もしかしたら怒られるかもしれない。

そう思いずっと身構えていたのに、いつまでも怒られる事はなく逆に優しい言葉がかけられた。

ぽんぽんと頭に手を置かれながら。

 

どうして?

なんで優しいの?

 

そんな事を思った。

 

「今夜はな?一夏の好きなハンバーグにしようと思うんだ。もう夜も遅い。だから帰らないか?」

 

「ーーーーんで」

 

「ん?」

 

「なんでそこまで優しいくしてくれるの?僕は、だって...............」

 

「全く。そんな事気にしなくていい。お前は何も悪くないから悔やむ必要など無いさ。お前は被害者なんだからな」

「...............」

 

「世間の連中はお前を許さ無いかもしれんが、私が守ってやるからな。なんの心配もしなくていい。だから、今まで通り笑っていてくれ無いか?そんな顔より笑っている方が何倍も似合ってる」

 

あぁ、本当にこの人は変わらない。

いつでも優しく僕を包み込んでくれる。

血のつながりなど関係無いと言わんばかりに。

どんな時だって変わりなく。

だけど、その優しさは今の僕には大きすぎ、まだ重すぎて。

千冬さんは良心からなのはわかっているのだけれども、その優しさが今はとてつも無いほどに辛くて。

 

「...............やっとあの時の言葉の意味が分かったよ。迷惑をかけるってこういうことだったのか?そうだったらすまなかった。軽く考え過ぎていたよ。お前のことを全く理解していなかったみたいだ」

 

ごめんなさいの一言がどうしても言えなかった。

この後ずっと後悔するはずだと言うのにも関わらず。

 

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