Hololive: Lostfantasia   作:緋鳥

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#1:静霊騒ぎ

風の、通り抜ける音。

 

静かすぎる灰色の街には、廃墟の高層が林立している。

 

その一角から爆発音がし、粉塵が舞った。

 

そこから飛び出てきたのは、少女。

 

緑色の髪が靡き、頭の上の二つの団子が目立つ。

蝶をモチーフにした飾りをあしらった、青い衣装。

 

その周囲には緑色の美しい蝶が何羽か舞っている。

 

「ちっ、しつこいなーーー」

 

少女は苛立たしげに吐き捨てると、静かな声で唱えた。

 

「死霊操術(ネクロマンス)・騒霊状態(ポルターガイスト)」

 

それと同時に、周囲を舞う蝶に骨のようなものが纏わりついていく。

 

そしてやがて、心臓に蝶を据える、青緑に燃え盛る骸骨となった。

 

骸骨の群れは目の前の大将に意識を向ける。

 

そこにいたのは、いや、群がっていたのは、人の群れ。

正確に言えば、何百もの黒く炭化した焼死体の群れ。

 

骸骨とほぼ変わらないが、その目は虚だ。

 

「数には数、こっちもまだまだっ!」

 

大量の蝶が骸骨へと転じ、焼死体の群れと真っ向からぶつかった。

火花が散り、火の粉が舞う。

 

焼死体の熾火がこっちの骸骨ーーー「ふぁんでっど」の炎で引火して、大爆発した。

 

焼死体の群れは大きく数を減らされたが、骸骨には無尽蔵に数がある。

蝶は少女の命ある限り、際限なく生み出され続ける。

 

「挟み撃ちにしてやる。『静霊状態(スティルガイスト)』、回り込め」

 

姿を消した亡霊たちは、密かに死体の山の後ろに回り込んでゆく。

そして、やがてその亡霊たちが背後にそろった瞬間。

 

「『騒霊状態(ポルターガイスト)』ッ、叩き潰せッ!!」

 

実体化した亡霊の群れは焼死体に覆い被さって潰し、巨大な爆発を起こした。

 

焼死体の軍勢は跡形もなく消え去り、少女はフゥッと息をついて亡霊を元に戻した。

緑色の美しい蝶たちは骸を脱ぎ去って、ゆらゆらと燃える人魂のような怪しい光をかすかに放っている。

 

「…これで終わりなのです」

 

先程までの雰囲気が嘘のように、少女は鈴を鳴らしたような声を発した。

周囲を漂う蝶は少女の肩に留まったり、頭の上で遊んでいたりと自由だ。

 

それを愛おしげに見つめた少女は、とてとてと焼死体の残骸に駆け寄った。

 

「今、るしあが楽にしたげる」

 

しゃがんで手を合わせて、少女ーーーるしあは祈りを捧げ始めた。

 

るしあは死霊使い(ネクロマンサー)であり、肉体に縛られた死屍を此方から彼方へと導く存在。

 

そうして彼方へ導かれた死屍は肉体を離れ、魂のみの亡霊となる。

肉体の最期の痛みを繰り返す死屍から解放された亡霊は、痛みも何もない世界で自由を謳歌する。

 

「『川の対岸』『死屍の夢』『ワタリガラスの言を紡ぐ』『戴き物を今返さん』」

 

静かに紡がれた言葉に、神秘が宿る。

 

それは、この世に生まれ落ちた時に戴いた、一番最初の贈り物を返すための儀式。

最後の痛みから、自由の園へと向かうための導きの灯火。

 

死体の山がぼんやりと輝き、そこから光が天へと昇ってゆく。

 

そして、光の抜けた死体から炭になるように消えてゆく。

やがて死体は、完全に消え去った。

 

「ーーー葬送完了、いってらっしゃい」

 

るしあは空に向かって軽く手を振った。




呪術が終わってから、ぼちぼち更新する予定の小説です。
とりあえずは呪術を頑張りますので、お待ちください。
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