魔弾の王と召喚師   作:先導光

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野盗討伐の依頼

旅をするにはもってこいの天気だな。

イェーガーはそう思いながら空を見上げた。

 

「イェーガー殿、どうかなされましたか?」

 

イェーガーの隣に馬を並べるリムアリーシャがイェーガーに尋ねる。

 

「ん?いやぁ旅にはちょうどいい日だなぁって。」

「イェーガー殿・・・我々は遊びに行くわけではないのですよ。」

「わかってるって、リーちゃん。」

 

イェーガーがそう言うとリムアリーシャは諦めたようにため息をついた。

どうやら訂正するのが面倒になったようだ。

 

「・・・これが遊びなら壮大すぎるだろう。」

 

リムアリーシャの隣―すなわちイェーガーの反対側でティグルが苦笑する。

イェーガーは後ろをチラッと見る。

彼らの背後にはジスタート兵百騎がついてきていた。

イェーガー達はマスハスとの打ち合わせ通りテリトアールへと向かっていた。

今のところイェーガーはゲートが閉まったことをヴァルガス以外には教えていない。

・・・無駄に心配事を増やす必要もないだろう。

ここでイェーガーが言う心配事とは魔神のことだ。ゲートが閉じられたと聞いたときイェーガーはすぐに魔神の仕業だと判断した。そして同時に自分の敵である魔神は自分の想像を絶する程の力の持ち主だと知り厄介だと思った。

 

 

「・・・ところでイェーガー殿。ジスタートの国王陛下の御名前を正確に述べてください。」

 

リムアリーシャがイェーガーにそう言う。リムアリーシャはティグルとイェーガーにジスタートに関する知識を叩き込んでいた。というのもティグルはこの戦いが終わったあとの事後処理で、イェーガーはこの地の調査に役立つからだ。

フッ。リーちゃんめ。俺がリーちゃんがティグルに対して同じ問題を出していたのを聞いていないと思ってるな?だが甘い!

 

「ヴィクトール=アルトゥール=ヴォルク=エステス=ツァー=ジスタート、だろ?」

「正解です。では冬の終わりと春の訪れを祝う、古くから行われている祭は?」

 

リムアリーシャがすかさず次の問題を提起した。

・・・な、なんだっけ?

 

「え、えーと・・・。あれだあれ。えーと・・・太陽祭。」

「正解です。」

 

リムアリーシャがそう言うとイェーガーは心の中でガッツポーズをとった。

みたか!これが俺の力だ!

 

「課題が増えなくてよかったですね。」

 

この時イェーガーは魔神と遭遇するよりも恐ろしい恐怖を感じた瞬間だった。

 

 

 

 

「野盗退治?」

 

ティグルから聞かされた言葉にイェーガーは呆気に取られて聞き返す。

テリトアールへとたどり着いたイェーガー達はまずテリトアールを治める貴族オージェ子爵の元に向かったのだが、そこでイェーガーはティグルとリムアリーシャの話が終わるまで外で待つことにした。

まあ・・・やりたいことがあるからなんだがな。

ティグル達と別れたイェーガーは人気の少なそうなところで召喚陣を呼び出しヴァルガスを除く残り五体のユニットの選定を行っていた。結論だけを言えばユニットの選定は終わった。あとはその使用タイミングだった。

そして集合地点に戻ってすぐにティグル達から野盗退治の話を聞いたのだった。

 

「ああ、実はだな・・・。」

 

ティグルの話を要約するとこうだ。

オージェ子爵の協力は得られた。ただし、その条件としてテリトアール内を荒らし回っている野盗の集団を倒して欲しい。

 

「・・・随分と簡単な事のような気がするが?」

 

俺がそう呟いた時ティグルの表情が少し曇った。

ああ。やっぱり訳ありか。

 

「オージェ子爵も三百の兵を率いたのだが・・・」

「あぁ、その流れからすると負けたな?敵の数が多かったのか?」

 

とすれば今の俺達の兵力じゃ少し不安が残るな。

 

「いや、こちらの軍勢よりは多いが子爵の連れていた兵よりは少数の二百だ。」

 

二百?たかだか野盗二百程度に貴族の兵三百が負けたのか?

 

「・・・詳しく聞こうか。」

「子爵の話だと野盗達は狭い山道に味方をおびき寄せ一網打尽にしたらしい。」

「・・・簡単で単純な策だが実に見事だな。」

「あともう一つ・・・明らかに普通とは異なる力を持っている奴がいるらしい。」

 

その一言を聞きイェーガーの目が光った。

そいつは・・・ユニットの類か?だが納得できんな。何故野盗ごときにユニットを?

ティグルの背後に控えていた禿頭の若い騎士も顔をしかめる。

・・・たしかルーリック、だっけな。

 

「手ごわい相手になりそうですな。」

 

それを聞きイェーガーは思わず笑った。

 

「何がおかしい。」

 

ルーリックが表情を険しくしてイェーガーに尋ねた。

 

「これから国の大貴族と戦うんだろ?たかだか二百の野盗に手間取ってたらキリがないぜ。」

「・・・フッ。確かにそうだな。」

 

イェーガーの言葉にルーリックが少し表情を和らげる。

 

「ところで旅人殿には何か策がおありかな?」

 

ルーリックが言葉に棘を含めてそう言う。

ふーん・・・俺も随分嫌われたもんだな。

 

「あるわけないだろ。そもそもこの辺の地理を俺はよく知らない。」

「ルーリックには何かあるのか?」

 

ティグルが尋ねるとルーリックは少し考えこういった。

 

「ティグルヴルムド卿が矢を五十本ほど矢を背負って山に入り五十人仕留めたら山を降りて再び五十本背負い・・・というのを繰り返すのはどうでしょう?」

「おもしろい案だな。俺は何人めあたりで敵に見つかり殺されると思う?」

 

とんでもないことを言い出したルーリックをティグルは睨みながらそう言う。

 

「それは最後の手段としましょう。」

 

リムアリーシャが呆れた目でティグルとルーリックを見ながら地図を広げる。

 

「さっさと終わらせましょう。長期化するのは好ましくありません。」

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