広い草原だった。とにかく広い。広いとしか言いようが無い草原だった。
しかしそれは逆を言えば、隠れられる場所が無いと言うことだ。
イェーガーは警戒を解かずに回りを見渡す。その時、召喚師に渡されている通信端末が音を立てた。
『・・・輩。イェーガーせんぱーい!聞こえますかー!』
「・・・リム、聞こえてる。だが、もう少し緊張感を持ってくれないか?こちとら未開の地にいるんだからさ。」
『あ、すいません。でも、先輩なら大丈夫かなぁって。』
「・・・まあいい。で?なんだ?」
『召喚院からの通知です。今回同行できるユニットなんですが、一体だけにしてください。と、言うことです。』
「それ先に言えよ!」
『す、すいません。だって急な指令だったもので・・・』
イェーガーはため息を吐いた。
アクラス召喚院も、もう少し早く言って欲しいものだ。
「仕方がない。ヴァルガスだけ準備しといてくれ。」
《へぇ。久しぶりに俺の出番か?楽しめるんだろうな?》
イェーガーの頭の中に声が響く。
声の正体は煌覇炎神ヴァルガスだ。ヴァルガスはイェーガーが初めて召喚した英雄で、その強さから【六英雄】と呼ばれている。イェーガーは彼とこれまで何度も危機を乗り越えて来た。ヴァルガスはイェーガーの持つ大剣ー覇炎剣ダンデルガに意思が宿っていて、イェーガーが呼ぶとヴァルガスは現実に顕現し共に戦う。
それが、召喚師であった。
「ああ。また、頼む。」
《へへ。いいぜ。手伝ってやるよ。》
『先輩、準備できましたか?そちらの情報については私達の方でも集めますので、それまでは可能な限りで調査してください。あっ!だからって無茶しないでくださいよ!』
「へいへい。了解だ。」
イェーガーは強引に通信を切り気づいた。
あれは・・・煙?と言うことは何かあるのか?まあいい。調査の一環だ。行くか。
イェーガーは煙の見える方へと歩き出した。
しばらく、歩くと城壁のような物が見えた。だが、それは丸太を組み上げただけの城壁で、かなりお粗末なものだった。
そしてそれだけでは無く畑や農家もちらほらと見えてきた。
城壁、畑、家・・・と言うことは少なくとも人が住んでる痕跡があった。って事か。まあ、作りはアレだが。
「もし、そこの方。」
突然声をかけられたイェーガーは驚き臨戦態勢をとりながら声のした方を向いた。
そこには、人の良さそうな老婆がキョトンとしてこっちを見ていた。
「どうかしたのかえ?」
「い、いえ。すいません。で、なんですか?」
「あんたは旅の方かい?」
「ええ…まあ。」
すると老婆は珍しそうなものを見る表情を浮かべてこういった。
「ほえー。若えのに大したもんだ。」
イェーガーは愛想笑いを浮かべた。
人・・・少なくとも魔物の類じゃないな。
「ここはブリューヌ王国のアルサス地方のセレスタって町だぁ。なんもねえとこだけどゆっくりしてってくれ。」
老婆は笑みを浮かべてそう言うと畑の方へと歩いていった。
ブリューヌ王国・・・?聞いたことが無いな。
「ヴァルガス、お前は?」
《いや、グランガイアは一通り歩いたがそんな国は聞いた事がねえ。》
「ふうむ。」
《とりあえず、街に行ってみたらどうだ?幸いにも言葉は通じるみたいだしさ。》
「そうだな。行ってみるか。」
俺はヴァルガスの言葉に従い目前に見える町ーセレスタへと歩き出した。