「あの、グラデンス様。どちらまでゆかれるのですか?」
セリアがたまりかねそう尋ねる。
イェーガーに通信がつながる数時間前、グラデンスは召喚院を出てグランガイア大陸のバリウラと言う地域を歩いていた。
「ふぉっふぉっふぉっ。カルやお前さんならわかるじゃろう?」
「・・・。」
そう尋ねるグラデンスをよそにカルは沈黙を保っている。
「え?カル、わかったの?」
「・・・一応、な。」
「ええ!ねえ、どうするの!?教えて!」
セリアはそう頼むがカルは黙ったままだ。
・・・何か変ねえ。こういう場合、カルはすぐに教えてくれるはずなんだけど。
セリアがそう思った時、グラデンスが歩みを止めた。
「着いたぞ。」
「っ!!ここは・・・。」
セリアはたどり着いた場所を見て絶句した。
そこは半年前、封神ルシアスを倒した場所―グランガイア封穴だからだ。
まさか・・・グラデンス様!
セリアが気づいたとき、空から明るい声がした。
「あっ!グラ爺だ~!セリアにカル君も!」
セリアがはじかれたように空を見上げるとそこには緑色の法衣を纏った少女が宙に浮かんでいた。
セリアはその少女を見て喜びの声を上げ名を呼んだ。
「ティリス!!」
ティリス―それは元ルシアスの神徒として半年前イェーガー達を導き四堕神を倒す手伝いをした女神だ。
ティリスはルシアス同様自由にゲートを開くことが出来る為ルシアス亡きあとはこの地にとどまりこの地に封じられている災厄を封印している。
「よう!女神さん!久しぶりだな!」
「うん!みんな久しぶり!元気そうでよかった!・・・ってあれ?イェーガーは?」
ティリスがそう尋ねる。セリアは少し慌てたがグラデンスが口を開いた。
「うむ・・・。ティリスちゃん、ちと厄介な事にあやつは巻き込まれての。ティリスちゃんの力を貸して欲しいんじゃ。」
そうグラデンスが言うとティリスは驚きの表情を浮かべた。
「ええ~!何かあったの!?」
「うむ。実はな・・・。」
グラデンスが事のあらましをティリスに伝えるとティリスは更に目を丸くした。
「ええ~!それって大変じゃない!!すぐに助けに行かないと・・・。」
そう言うティリスをカルが慌てて止める。
「おいおい。女神さん!女神さんがいなかったらここはどうするんだ?」
するとティリスがばつの悪い顔になる。
「そ、それは・・・。」
「ふぉっふぉっふぉっ。確かにティリスちゃんの気持ちはよーくわかる。」
グラデンスが好々爺然とした笑みを浮かべる。
「そこで、ティリスちゃんに相談なのじゃが。イェーガーの向かった世界へのゲートを開けることはできぬかの?」
するとティリスは難しい顔つきになる。
「うーん・・・。どこの世界かはわからないと。」
「わかる手段ならばある。」
不意に男の声が聞こえた。カル達がその声の方を見ると黒いマントを羽織った若い男がいた。
「アーク!」
ティリスが男の名を呼ぶ。
アーク、ティリス同様ルシアスの神徒で神々と人の争い時に人々をグランガイアから逃がすため六英雄を討った者だ。今はティリス同様災厄から現れる魔神を封じ込める役を担っている。
「ティリス、イェーガーの気配を感じるんだ。」
アークは言った。
「イェーガーの気配?」
「そうだ、彼の気配を数あるゲートから感じ取れ。そうすれば彼の居場所がわかる。」
アークは強い確信を持ってそう言う。
ティリスはそっと目を閉じ集中する。イェーガーの気配、かつて自分を支えてくれた恩人を救うために。
そして。
「わかった!ここよ!」
ティリスは目を開けそう叫ぶ。グラデンスが尋ねる。
「どうかな?ティリスちゃん。開けられそうかな?」
「うん!任せて!」
ティリスはそう言うと静かに唱えた。
『我が名において命ずる。かの大地に続くゲートよ、我が呼び掛けに答え顕現せよ。』
すると目の前に巨大な扉―ゲートが現れ静かに開いた。
「この先にイェーガーが・・・?」
セリアが尋ねるとティリスは頷いた。
「うん。・・・けど、すごくやな気配もしているの。」
「・・・アルトニクスか。」
カルが苦々しげに呟く。
「ふぉっふぉっふぉっ。ありがとうティリスちゃん。あの不出来な弟子は必ず連れ戻す。じゃからここはわしに任せてくれぬか?」
「おいおい爺さん!一人で行くつもりか?それはないぜ!」
穏やかに笑うグラデンスにカルがそう言いセリアも続く。
「そうです!私達もともに行きます!」
「・・・じゃが、相手はこれまで戦った中でも最強クラスの魔神じゃぞ?覚悟は良いのか?」
グラデンスがそう尋ねると二人は同時に答えた。
「もちろんだ!」「もちろんです!」
グラデンスは少し考えうなづいた。
「よかろう。二人ともついて来るがよい。」
「グラ爺、カル君、セリア。イェーガーを・・・お願いね。」
ティリスがそう言う。
「大丈夫よ。必ずあのバカを連れ戻してまた来るからまってなさい。」
そして三人はゲートをくぐった。三人の召喚師の介入が吉と出るか凶と出るかは誰にもわからなかった。ゲートを司る女神はそっと四人の無事を祈った。
だがそれすらも、魔神の強大な力に阻まれる。彼らの運命はいかに・・・?
次回からは対リュドミラ編に入ります。