「ヴォルン伯爵、リムアリーシャ殿。このテリトアールの主として、心から感謝申し上げる。じゃが・・・そちらの御仁は?」
テリトアールに帰還したイェーガー達を出迎えたのは初老の男性だった。ーユーグ・オージェ子爵。テリトアールを治める貴族だ。
ユーグは前回野盗討伐の依頼を出した際にはいなかった、イェーガーを示しそう尋ねた。
「俺はイェーガーと言います。訳あってティグルとともに戦う旅人です。」
イェーガーがそう答えるとユーグは怪訝な顔になりティグルを見る。
「ヴォルン伯爵?何故、旅人殿をここに?」
「それは・・・」
ティグルが答えようとした時イェーガーが遮って言った。
「オージェ様、これから話すことは事実ですので落ち着いてお聞き下さい。」
イェーガーはそう前置きすると自分が戦う理由について語った。
召喚師であること、魔神がいることも含めて全て、だ。
「・・・にわかには信じられぬ。魔神・・・本当にそのような者が?」
「信じてもらうのは難しいとは思います。ですが、事実なのです。もし、お望みでしたら召喚術だけでも行いますが?」
イェーガーがそう言うとリムアリーシャが厳しく言った。
「イェーガー殿。術の乱用は程々になさった方がいいのでは?・・・召喚直後に魔神が現れ一網打尽ということもあると思うのですが。」
最後の一言はとってつけたような感じであった。ティグルにはなんとなくリムアリーシャが最近よく力を使い果たし気絶するイェーガーを気遣っての一言だと思った。
当のイェーガーはそのことに気づかずキョトンとして言った。
「だけどそれ以外に手はないんじゃ?」
「いや、召喚術とやらは使わなくとも良いぞ。」
そう言うのはオージェだ。イェーガーはオージェを見つめる。
「恐らく以前までのわしならば戯言じゃと片付けていたじゃろう。それが例えヴォルン伯爵がおっしゃってもじゃ。」
ここで一度言葉をきり続けた。
「じゃが、イェーガー殿やヴォルン伯爵、そしてリムアリーシャ殿達の誠意ー確かに感じられました。その戦い、わしも力を貸そう。」
ティグルの表情が明るくなる。だがオージェは厳しい表情となって続けた。
「じゃが・・・イェーガー殿。あなたに一つお尋ねしたい。」
「・・・なんでしょう?」
「魔神とやらは我がテリトアールに対し被害を与えると思われるか?またその時、お主は我らを見捨てぬのか?」
オージェがそう尋ねるとイェーガーはフッと笑い答えた。
「ご冗談を。召喚師としての誇りに誓いましょう。俺は魔神の脅威からここにいる全ての人間を守りぬこう。」
「・・・誠か?」
「ラジカストの名にかけて。」
イェーガーはそう答えた。
かくしてティグルの元にテリトアール領のオージェ子爵が協力を示した。
ティグルの対テナルディエ対策は徐々にではあるが整っていき順風満帆に見えた。
だが、新たな敵が迫っていることにまだ誰も気づかなかった。