目を開ければ、そこはベッドの上であった。
リムアリーシャは目を覚まし、まず自分のお腹の上に重みを感じた。リムアリーシャがそこに目をやるとティグルの頭がのっかっていた。それを反射的にどけようとしてーーやめた。
まずは・・・現状を確認しなければ。
「あ?リーちゃん、目が覚めたか?良かった〜。」
右から心配そうな声がした。
リムアリーシャがその方向に目を向ける。そこには眠気を噛み殺しているイェーガーがいた。
「イェーガー殿・・・?ここは?」
「安心しろ。ここはロドニークだ。リーちゃん、体調はどうだ?」
「少し、疲れを感じる以外に不調は感じません。」
「そっか!それは良かった!ティグルがすぐに応急処置をしたおかげだな。」
イェーガーがそう言った時、リムアリーシャが尋ねた。
「エレオノーラ様はどちらに?」
「エレンさんなら少し休んでもらってる。ずっと、そこのねぼすけと一緒にリーちゃんの看病してたからな。『七鎖』とかいう奴らも全滅したみたいだし、しばらく暗殺者の心配は無いと思うぜ。」
「そうですか・・・。」
リムアリーシャは一度下を向くとポツリと一言漏らした。
「エレオノーラ様をお守りするはずが倒れてしまうとは・・・。不甲斐ない。」
「不甲斐ない・・・?」
イェーガーはティグルに毛布をかけながら尋ねる。
リムアリーシャは静かに頷く。
「エレオノーラ様をお守りするために倒れたのであればともかく、敵の攻撃に気づかずその一撃を受けて倒れるとは不甲斐なー」
「なあ、リーちゃん。」
イェーガーがリムアリーシャの言葉を遮って尋ねた。
「急にどうしたんだ?そんなこと言い出して。」
リムアリーシャはイェーガーを少しみつめると俯きがちに答えた。
「イェーガー殿は初めて私の前で召喚術を行使した時のことを覚えておいでですか?」
「ん?たしか、ダリマオンに襲われた時だったな。リーちゃんや兵士の人たちを守るために使ったやつだな。」
イェーガーがそう言うとリムアリーシャは頷いた。
「けど、それがどうした?」
イェーガーが尋ねた。
「私はあの時ほど自分が非力な存在であると思った事はありません。いえ、もちろんわたしが強いと自惚れていたわけではございません。しかし、私はあの時もっと強い力を望みました。一軍を預かるライトメリッツの将として、エレオノーラ様をお守りする身として。」
「・・・。」
イェーガーは静かに次の言葉を待った。
「ですが、此度も私はエレオノーラ様をお守りするどころか真っ先に倒れてしまいました。私は・・・エレオノーラ様の副官失格でー」
「リーちゃん。」
イェーガーはリムアリーシャの言葉を遮って名を呼んだ。
リムアリーシャがイェーガーの方を向くとイェーガーはため息をひとつ吐いて言った。
「ダリマオンの時もそうだけど、普通の人の力じゃあなんとかできない時だってあるさ。確かにリーちゃんは俺みたいに召喚術が使えるわけではないしエレンさんの様に『竜具』という特殊な武器を使えるわけじゃない。」
リムアリーシャがまた下を向く。
「だけど、だからなんだってんだ?」
イェーガーがそう言うとリムアリーシャはハッとして顔を上げた。
「『竜具』が無ければエレンさんじゃ無いのか?召喚術が使えなければ俺じゃ無いのか?違うだろ?そんなもの無くたって俺は俺だしエレンさんはエレンさんだ。そうだろ?
まあ、確かになんの運命の悪戯なのかは知らないけど俺は召喚術という力を手にしたしエレンさんは『竜具』という力を手にした。けどそれだけだ。だから、俺には俺にしかできない事があるしエレンさんにもエレンさんにしかできない事があるし当然ーーリーちゃんにもリーちゃんにしかできない事があるんだ。」
「私にしかできない事・・・?」
リムアリーシャがそう尋ねるとイェーガーはニヤリと子供の様に笑って答えた。
「自分が良くわかってることだ。まあ、それを教えてやるほど俺も親切じゃないぜ。」
けどとイェーガーは続ける。
「リーちゃん、覚えといて。さっきリーちゃんはエレンさんの副官失格だ、って言おうとしてたけど俺にはそうは思えない。エレンさんの副官はリーちゃんにしかできないって確信を持って言える。」
「それはなぜですか?」
「君たち二人は固い絆で結ばれている。俺にはそう見えたからだよ。」
イェーガーがそう言った時、扉が開いた。
「おお!リム!目を覚ましたか!」
入ってきたのはエレンだった。エレンはイェーガーを見ると顔を顰めて言った。
「イェーガー、お前まだ寝てないな?後は私が見ておくからお前も休んでこい。」
「・・・そうだな。休ませてもらうとしよう。」
イェーガーはそう言うと部屋を出た。
後は二人に任せておこう。