「おいおい・・・マジかよ。」
《屋敷とは聞いていたがな・・・》
イェーガーがティッタに案内されたのはこの街で一番大きい家であろうと言う屋敷だった。
田舎であるから質素な作りで首都にある一般の家と同じくらいだろうが、イェーガーが記憶している故郷の村長の家と比べるとその差は歴然であった。
「ティッタ。あんたの主は町長か何かか?」
「はい!ここにお住みになっているティグル様はアルサスの領主様です!」
ティッタは誇らしげに答えるが対照的にイェーガーは頭を抱えた。
おいおいおいおい!俺は礼儀作法ってやつが大の苦手なんだが・・・。
「・・・いいのか?一介の旅人なんか招き入れて?」
「ええ・・・。」
そう尋ねるとティッタは沈んだ表情となった。
「どうかしたのか?」
イェーガーがそう尋ねるとティッタはこういった。
「立ち話もなんですからこちらへどうぞ。」
そうしてイェーガーが通されたのは客室であった。
客室にはベッドと机があるだけで他には窓くらいしかなかった。
ちなみに窓からは町がみえた。
「ま、いろいろあったけど宿にありつけて助かったな。」
《全くだ。あの子が来てなかったら今頃どうなっていたか。》
沈みゆく日を見ながらイェーガーはそう言う。
「ここは神々の侵攻を受けなかったのか?」
《さあな。だがそんな所があるってのは聞いたことがない。》
ヴァルガスがそう言う。
もともと、イェーガーが住んでいる世界は神々の攻撃から生き延びたグランガイア人達がたどり着いた世界だ。それと同様にこの世界も神々の侵攻から逃げ延びた人々が着いた世界ではないか?
だがそれを確定できる証拠は今のところはない。
「まあ、焦っても仕方がないか。」
イェーガーがそう言った時、扉がノックされた。
「失礼します。」
ティッタがそう言って扉を開けた。
「お食事の用意が整いました。こちらへどうぞ。」
「ああ。ありがとう。」
「ところで・・・話し声が聞こえたのですが、どなたかとお話されていたんですか?」
イェーガーは少し慌てた。ヴァルガスとの会話を聞かれていたからだ。
ヴァルガスの声はイェーガー以外には聞こえず他人から見るとヴァルガスと会話している時のイェーガーは独り言を言ってるようにみえるからだ。
「気のせいじゃないか?」
イェーガーは動揺を悟らせまいと必死に感情を押し殺しながらそう言う。
「そうですか・・・?」
ティッタは怪訝な表情をしてはいるが納得はしてくれたようだ。
イェーガーは内心でホッと息をつきティッタについていった。
食卓に通されて今度はイェーガーが怪訝な顔をする番だった。
ここで領主と顔を合わせることになるのかと思っていたのだが食事はイェーガーに出されている一人分しかないからだ。
「ここの領主様は病か何かなのか?」
イェーガーがそう尋ねるとティッタは沈んだ表情となった。
これで二度目だ・・・。この子が沈んだ表情になるのは。
「どうしたんだ?」
「・・・お話しますのでお食事をどうぞ。」
・・・つまり食ってから話すってことか。
イェーガーは席に着き食べ物を見る。
スープにパン・・・肉に・・・野菜。怪しい物はないな。
イェーガーはそう判断すると食事を始めた。
「ふう・・・うまかった。」
イェーガーは久しぶりに満足していた。
出された食事はとんでもなく美味かったからだ。
「お口にあってよかったです。」
ティッタは笑顔を浮かべそう言う。
全く、俺と同い年くらいに見えるのに大した子だよ。
イェーガーは食器を手際よく片付けていくティッタを見ながらそう思った。
セリアもこれくらいおしとやかならなあ・・・。
イェーガーがそう思った時頭の中にセリアが浮かび猛烈に文句を言い始めた。
イェーガーは頭を前後に軽く振り想像を打ち消した。
「大丈夫ですか?」
その様子を見ていたのだろうティッタがそう言う。
「・・・大丈夫だ。ところで、そろそろ何があったのか聞きたいのだが。」
するとティッタは足元に視線を落とし向かいの席に座った。
「はい・・・。旅人さんは最近、この近くのディナント平原で戦いがあったのを知ってますか?」
「戦い?いや、知らんな。」
「・・・その戦いにティグル様もご参加されて捕虜になったんです。」
「捕虜?」
捕虜と言うことは人同士の争いか。
まあ、普通はそうだよな・・・。
ティッタは話を続ける。
「先日ジスタート王国の戦姫様から身代金の要求が届きましてその額が・・・。」
「高いのか?」
「はい。アルサスの領収に換算して約三年分です。」
「・・・それはそれは。」
イェーガーは唖然とした。
アルサスの収入が高いか低いかはともかく領収の三年分とはかなり高額だな。
「国や他の貴族達は?」
「いろいろとお頼みしてるのですが・・・。」
この反応はあれだな。ダメだったんだな。
イェーガーは静かに席をたった。
「すまないな。辛いこと聞いちまって。」
「い、いえ・・・。」
「と、いうのがティッタから聞いた事情だ。」
《なるほどな・・・。》
イェーガーは部屋に帰ったあと荷物を整理しながらヴァルガスにそう言った。
《で、お前はどうすんだ?》
「どうする・・・って何が?」
《助けるのか?》
ヴァルガスがそう尋ねるとイェーガーはきっぱりとこういった。
「んなわけないだろ。俺は召喚師であって正義の味方じゃない。」
《へぇ・・・。》
ヴァルガスは意外そうな響きを含めてそう言った。
というのも、イェーガーは今までにそう言う人の困りごとにめんどくさがりつつも首を突っ込み解決していたからだ。
「・・・できることなら手伝ってやりたいが、何ができる?」
《・・・戦姫とやらを倒すとか?》
「どれだけ強いかわからないのにそんなリスクを侵せるか。第一場所がわからない。」
《ま、そうだよな。》