「エレン・・・!」
ティグルが驚きに声を上げる。何故エレンがここにいるのか。何故、敵対していたはずのリュドミラとルジーナも共にいるのか。驚きと共に疑問が次々浮かんできた。
「ティグル。話は後だ。まだ、油断できない。」
エレンがこれまでに聞いた事がない程緊張した声音でそう言う。リュドミラが頷く。
「最強召喚師ってのも大した事ないのね。」
「アァン!?んだと、このチビ女!」
ルジーナがそう怒鳴る。リュドミラも額に青筋を浮かべて言う。
「なんですって!この、バカ男!」
「んだと!ーー」
ルジーナも負けじと言い返す。ティグルはそんな様子の三人を見て思った。
緊張感が無さ過ぎじゃないか・・・コレ。
「大丈夫かしら?」
不意に声をかけられその方に目を向ける。いつの間にかパリスが近づいてきておりリムアリーシャの容態を見ていた。
「・・・幸い致命傷では無さそうね。とりあえず、回復薬でーー」
そこまで言った時、地面が揺れた。
「くっ!!」
リュドミラとルジーナも言い争いをやめ目の前に意識を向ける。目の前で積み重ねられている岩がはね退けられてクロフォードが姿を現した。
「クソがぁ!下等な猿ごときが我に傷を負わせるだと!?ふざけるな!」
「ケッ、やっぱり生きてやがったか。」
「だけど、効果がなかった訳では無さそうだわ。」
エレンも同意する。
「ああ、奴の傷は深そうだ。今のうちにケリをつけるぞ!」
すると、クロフォードが怒りに叫ぶ。
「ケリをつける?下等な猿ごときが魔神たる我を倒せると思っておるのか!?甘く見るな人間!」
クロフォードは叫ぶと槍を構え突っ込んでくる。
「『
動じることなくリュドミラは唱え『凍蓮』を大地に突き刺す。次の瞬間地面が凍りつき同時にクロフォードの足をも凍らせた。
「なっ!?」
「魔神っていう割には頭が悪いのね。」
リュドミラが冷たく言い放つと同時にエレンが距離を詰め『銀閃』を振りクロフォードの左腕を斬りとばす。
「ぐうっ!!」
「はああああ!」
エレンは叫びながら再度自分の相棒を振りクロフォードの右腕を斬りとばし蹴り飛ばす。地面の氷が砕けクロフォードが吹き飛ぶ。
「ぐあああああ!」
「まだだ!」
吹き飛ぶクロフォードにルジーナが追い討ちをかける。
『太古より眠りし守りの巨人、悠久の時を経て再び起動せよ!』
「力を貸しやがれ!グランヴァース!」
ルジーナが叫けぶ。すると、瞬時に召喚陣が空に展開され巨人ーーグランヴァースが姿を現わす。
『
『
ルジーナの『勇技』とグランヴァースの『勇技』が同時に放たれクロフォードを空高く舞い上げる。
『
『
と、同時にトドメと言わんばかりの一撃が二人の『
「ガハッ!!」
クロフォードはなす術なく風に切り刻まれ氷に貫かれた。
「や、やったか?」
ティグルが呟く。その時、動かないと思われたクロフォードの体が動いた。
「チッ!しぶといヤローだ。」
ルジーナが不快そうに呟く。すると、氷が砕けクロフォードが立ち上がった。
「愚かな人間どもめ・・・。我を怒らせた事を後悔させてやろう。」
「へぇー。まだ動けるとは流石魔神様だなーオイ!」
すかさずルジーナが挑発する。たが、次の瞬間ルジーナ達は戸惑うこととなった。憤怒に満ちたクロフォードの表情が一変無表情へと変わったからだ。
「な、なんだ?」
エレンが訝しげに呟く。クロフォードは大きくため息をつくと言った。
「まさか、再び、この地において本来の力を使うことになるとはな・・・。」
「なんだと?おい!どういうことだ!!」
ルジーナが尋ねるとクロフォードは冷笑を浮かべた。
「答えるはずがなかろう。ーーまあ、良い。見よ!魔神本来の力を!」
クロフォードがそう叫ぶとクロフォードの体が禍々しい光に包まれる。光はみるみるうちに大きくなりそれと比例してあたりに漂うプレッシャーも大きくなっていった。
「な・・・ッ!?」
「これは・・・!?」
「チッ・・・!」
三人が絶句する。それと同時に光がはじけとぶ。あたりを衝撃波が襲う。と、同時にグランヴァースが動き三人を護った。だが、防ぎきれず衝撃波が三人を襲った。
「「「ぐわああああ!?」」」
三人が悲鳴を上げ吹き飛ぶ。ティグルはリムアリーシャとパリスをかばった。
「くっ!?」
かろうじて飛ばされる事は無かったがかなりの力であった。
なんだ・・・何があった!
やがて衝撃波が止む。
あたりは無残にも破壊され城壁はすでに無く兵士たちがあちこちで転がっていた。幸いにも死者は少ないようだがオルミュッツ兵のほとんどが負傷していた。
そして、その前を。先ほどまでクロフォードが存在した場所には見るもおぞましい怪物がいた。
その怪物は体に無数の顔のような模様があり、槍のような右腕と剣のような左腕があった。そしてその目は紅くひかり殺意をむき出しにしていた。
「ユクゾ!人間ヨ!我ニ逆ラッタコトヲ後悔シナガラ死ヌガヨイ!」
クロフォードが動く。エレンとリュドミラは反射的に『竜技』を撃つ。
『
『
氷と風二つの力が目の前の災厄に襲いかかる。クロフォードはニヤリと嗤うと二つの一撃を槍を振るい消しとばした。
「なっ!?」
エレンとリュドミラは驚いた。と、同時にガクンと力が抜け倒れる。『竜技』を使いすぎたのだ。
「くっ・・・!」
「こんな、所で!」
クロフォードはそんな二人を見やりニヤリと嗤うと剣を思いっきり振り上げる。
「!?」
リュドミラは反射的にエレンに覆い被さりエレンを庇った。
それは無意識のうちだったのかもしれない。自分と同世代の戦姫、友だちとなって欲しかった者、それを護るための咄嗟の行動であった。
「哀レナ・・・。ナラ二人纒メテ逝クガヨイ!」
クロフォードが剣を振り下ろそうとした時強力な力を正面から感じた。クロフォードがそちらに目をやる。
そこにはティグルが黒弓に矢を番えて放とうとする所であった。そして矢じりには強大な破壊の力が渦巻いていた。
「ホウ・・・オモシロイ。ウッテミヨ。」
クロフォードがそう言った時矢が放たれた。矢は破壊の意志を持ちクロフォードに向かう。
クロフォードはそれをーー正面から受けた。
「ッ!?」
ティグルは愕然としていた。目の前の光景が信じられなかったからだ。ティグルが放った矢はクロフォードにあたりそのままーークロフォードに取り込まれていった。
打つ手が無い・・・!!
「待て・・・!」
クロフォードに声をかけるものがいる。リムアリーシャだ。側にはパリスもいる。二人はクロフォードの正面に立っていた。
いつの間に!?
ティグルが驚く。リムアリーシャは弱々しく剣を振り上げて言った。
「エレオノーラ様に・・・手出しは・・・させない!」
「・・・。」
クロフォードはため息をつくと剣を振り下ろした。
リムアリーシャは諦め目を閉じた。
その時だった。
「俺の友達に、手を、出すなァァァァァァァア!」
聞き覚えのある声とともに人影が砦から飛び出し剣を弾く。クロフォードが驚きに目を開く。
『
飛び出した人物は続けざまに叫ぶ。剣先から龍の形を模した炎が放たれクロフォードを焼いた。
「クッ!!」
クロフォードは炎を避けるために下がった。リムアリーシャは自分の目の前に立つ人物を見て弱々しく声を出した。
「イェーガー殿・・・。」
人物ーーイェーガーは憤怒に満ちた表情でクロフォードを睨みつける。
「ホウ・・・。コノ者タチノ仲間カ。精々抗ッテミセヨ。」
クロフォードがそういうとイェーガーはダンデルガを地面に刺し二対の剣ーー『
「このクソ野郎が・・・。たかだか魔神ごときが図に乗ってんじゃねえ。本気で相手してやるよ。来い!」
イェーガー「俺のターン!!」