タトラ山地の激戦から3日が経った。
イェーガー殿はまだ目を覚まさないのでしょうか?
リムアリーシャはイェーガーの幕舎を後にしながらそう思う。
イェーガーは昨日の戦いー元々はライトメリッツ軍対オルミュッツ軍の戦いであった魔神クロフォード討伐作戦が終わり変身を解除するや否や気を失い倒れてしまったのだ。
パリス曰く、召喚術の行使は術者に大きな負担を掛ける。複数体のユニットを呼び出しただけでなく六英雄の力を束ねる【六輝武装】を使ったイェーガーの負担は想像を絶するものがある。
リムはイェーガーの幕舎を後にしながら思う。
何故イェーガー殿はここまでボロボロになりながらも力を貸してくれるのでしょうか?それほどまでに魔神が憎いのでしょうか?ですが日頃の発言にそのような兆候は見られませんし・・・。
そんな事を考えながら歩いていると意外な人物に出会った。
「リム。傷はもう大丈夫なのか?」
「・・・ティグルヴルムド卿。珍しいですねこんな朝早くに。」
リムアリーシャはそう言う。
ティグルは苦笑しながらこう言った。
「まあ、たまにはな。」
「・・・狩りに出ようとしていらしてたのでは?」
リムアリーシャがそう尋ねるとティグルは肩をすくめてこう言った。
「さすがにそんな気分じゃないさ。」
「・・・何かございましたか?」
リムアリーシャが尋ねるとティグルはうーんと唸り言った。
「まあ、色々な。・・・あの激戦が3日前の事なんてまだ実感が湧かないよ。」
ティグルはそう言って手に持っている黒弓に目をやる。
というのもティグルが早くに起きた理由は黒弓についてだからだ。
ティグルはあの瞬間確かにクロフォードを射ち倒した。だが黒弓については未だ不明な点が多すぎた。恐ろしいほどに強大な力がある事はわかったが未だにその実態は分からないままだ。ティグルはそれを突き止めようと弓を使って訓練をしていたのだ。
「ティグルヴルムド卿。」
リムアリーシャが呼びかける。ティグルはハッとしてリムアリーシャに目を向ける。
「・・・イェーガー殿はまだ目をお覚ましになりませんね。」
「・・・そうだな。でもきっとすぐに目を覚ますと思う。」
ティグルがそういうとリムアリーシャがティグルを見つめる。
ティグルは肩をすくめて勘だよ、と笑った。
「・・・そうですね。あの人ならすぐに目を覚まされるはずですよね。」
リムはそう言う。
私は・・・何を迷ってるのでしょう。
イェーガー殿が力を貸してくれる理由?そんなものはどうだって良いではありませんか。今、
今私がすべき事はーーエレオノーラ様、ティグルヴルムド卿、そしてイェーガー殿。この三方のために持てる全ての力を振るう事です!
リムアリーシャがそう考えていると2人の前に兵士が駆けつける。
「報告します。イェーガー殿の意識が戻りました!」
ティグルは顔を輝かせて言った。
「リム、言った通りだろ?さあ、イェーガーに会いに行こう。」
「ええ。」
リムアリーシャも頷く。
東の空から太陽が顔を出す。彼らの希望を照らすかのように・・・。