魔弾の王と召喚師   作:先導光

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蠢く闇

「了解した。テナルディエ公には仔細承知したと伝えられよ。」

 

ザクスタンとの戦闘後、若き黒騎士ーーロランを待っていたのはテナルディエの使者を名乗るものだった。

ロランは使者から手紙を受け取り目を通した後鋭い視線で使者を見抜きながらそう告げた。

使者は少し顔を青ざめながら頷くと逃げ出すかのように慌てて外へと出て行った。

 

「ロラン、テナルディエ公はなんと言ってきたのだ?」

 

そう声をかけるのは金髪ロングヘアーの若い騎士。ナヴァール騎士団副団長オリビエだ。ロランはオリビエの方に向き直り苛立ちを隠さないまま答えた。

 

「俺たちに賊を討伐せよとのご達しだ。」

「賊?」

 

オリビエがおうむ返しに言うとロランは頷いた。

 

「ヴォルン伯爵という貴族を知っているか?その男が反旗を翻しジスタート軍をブリューヌ国内に招き入れたらしい。」

 

オリビエの表情が一瞬驚愕に包まれる。が、それは一瞬のことですぐに冷静な表情に戻るとロランに尋ねた。

 

「俺たちが向かうのは良いとしてその間ここの守りはどうするんだ?」

「テナルディエ公が二国間で停戦協定を結ぶらしい。」

 

ロランがそう答えるとオリビエは少し訝しげな表情を浮かべた。

 

「アレならばそれくらいの事はするだろうが・・・。数はどれほど連れて行くんだ?」

 

オリビエのこの問いにロランは簡潔に答えた。

 

「全軍だ。」

「全軍だと!?この砦にいるナヴァール騎士団全軍でか!?」

 

オリビエが驚愕しながらたずねる。ロランはオリビエに答えた。

 

「そうだ。今回ヴォルン伯爵が引き込んだジスタート軍を率いているのは常勝無敗、一騎当千の戦姫らしい。」

 

ロランの言葉にオリビアは耳を疑った。

戦姫ーーその名はザクスタンとの国境であるこの地にまで届いている。一度戦場に出れば類い稀なる武勇や知略を発揮し戦場を縦横無尽や駆け抜ける英雄達。

 

「・・・本気か?しかし、何故戦姫がヴォルン伯爵などという田舎領主に力を?」

 

そう尋ねるオリビエにロランは答える。

 

「わからん。」

 

だが、と続ける。

 

「真偽はどうあれ我が国の領土を同盟国でもない相手が荒らしまわってるのであればこれを捨て置くことなどできぬ。」

 

その目に静かなる炎を燃やしながらロランは呟く。

若き上司のの怒りを感じながらオリビエは尋ねる。

 

「いつ出発する?」

「明日だ。」

 

黒騎士は短く答える。

 

そして、戦乱吹き荒れるブリューヌにもティグル達にも大きな転機が訪れようとしていた・・・。

 

 

 

一方 ーー

 

どこかの地下にて

 

1人の老人がいた。

長いローブをまとっており顔が隠れているため男性か女性かはわからない。その老人は二頭の竜の亡骸を観察していた。

 

「妙じゃな」

 

誰に言うでもなく老人はひとりごちる。

片方の竜は地竜の亡骸だ。こちらは真っ二つの状態で発見された。

老人の興味を引いているのはもう片方の亡骸であった。

それは飛竜の亡骸だった。しかしこちらは真っ二つではなくまるで内側から破壊されたかのような状態であった。

 

「この力の残滓・・・。『竜具』とは異なる。まさか・・・。」

 

老人が呟く。その時、老人の前に若い男が姿を現わす。

 

「ドレカヴァクの爺さん、呼んだかい?」

 

男は陽気な感じで老人ーードレカヴァクに声をかける。

 

「ようやっと来たか。お前に頼みたい事があっての。」

「へぇ?」

 

若い男は片眉をあげた。

 

「珍しいね。爺さんが僕に頼み事なんて、明日は槍がー」

「弓が現れた。確認して来てくれんか?」

 

男の軽口を遮るようにドレカヴァクが告げると男が驚いた表情に変わった。

 

「本当かい?爺さん。」

「まだ、可能性の範囲じゃ。じゃが・・・。」

 

ドレカヴァクは目の前に横たわる竜の亡骸を指差しながら告げる。

 

「この傷は『竜具』によるものではない事は確かじゃ。」

 

そう言われて男は竜の亡骸に目をやる。

なるほど、言われてみれば何かが違う。上手く表現はできないが残された力の残滓ーその源が異なるそんな気配だった。

 

「けど、いいのかい?爺さん?妙な連中もいるのに迂闊に動いちゃって?」

 

男がそう尋ねるとドレカヴァクは含み笑いを浮かべる。

 

「関係あるまい。弓が現れたのなら我らの宿願、果たされる日も近いということ。であるなら異界の来訪者風情に何ができようか。」

 

へえー。と、男は興味なさげに呟くとドレカヴァクに手を差し出した。

ドレカヴァクはその手に大量の金貨を握らせた。

男はニヤッと笑うとその金貨をーーひと口に喰らい尽くした。

 

「じゃあ、行ってくるよ。爺さん。」

 

男はそういうとその場から溶けるようにして消えた。

 

「ああ、精々気をつけてな。ヴォジャノーイよ。」

 

ドレカヴァクは虚空に向かって声を上げた。

 

こうして、悪意の輪は動き始めたのだ。

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