本編更新は今しばらくお待ちください。
はじまりは唐突だった。
何の前触れもなしにーーいや、前触れはあったのかもしれない。私達が気づかなかっただけなのかもしれない。ーー彼らは攻め込んできた。
ー蹂躙せよ!略奪を欲しいままにせよ!
彼らはただそれだけを声高に叫びながら進んできた。
私達は、どこかで期待していたのかもしれない。きっと国境を守る騎士達が彼らを撃退してくれると。そうでなくとも神様が助けてくれると。
だけど、
焼け焦げた臭いが鼻に付く。あちこちから悲鳴が響く。
だが私にとってそんなことは最早どうでもよかった。何故なら私の視線は目の前に立つ男に向けられていたからだ。
「ーーおい!!聞こえたんだろ!答えろ!此処は何処だ!?」
男が苛立ち紛れにそう尋ねてくる。その目に宿るのは圧倒的な破壊の意思。暴虐の力を目の当たりにし少女はある意味での恐慌状態へと陥っていた。
ーー殺される!助かったと、神様が助けてくれたと信じていたのに!
少女はそう思った。神様が助けてくれるなら少なくとも目の前にいる男よりもずっとマシな方を連れてきてくれるはずだ!
もうすぐ自分は死ぬ。そう思うと少女は言葉にしようのない恐怖に囚われた。
ーー死にたくない!やめて!殺さないで!
少女はそう叫んでいた。
「あ"?何言ってやがる?此処が何処か教えれば命まではとらー
ーー殺さないで!いやだ!死にたくない!
「おい!話を聞きやがれ!じゃなきゃ本当にーー」
男がそこまで言った時背後から慌ただしい足音が聞こえてきた。
「いたぞ!殺せ!」.
叫びとともに足音が近づいてくる。
男は振り向きざまに槍を振った。
「うるせぇ!黙りやがれ!」
「ガハッ!」
その一撃で接近していた褐色の兵士ーームオジネル兵は首をあらぬ方向へと曲げ壁に叩きつけられた。
・・・チッ!鬱陶しいな!クソが!
男はその場を後にしようとする。しかし、男を少女の泣き叫ぶ声が引き止める。
殺さないで、ただ一言、少女は叫び続けていた。
哀れな奴だ。
男はそう思い後にしようとする。
だがーー
男は再び歩みを止め泣き叫ぶ少女に視線を向ける。
それはただの気まぐれだったのか憐れんでの行動なのかはわからない。だが、男はただ一言少女に尋ねた。
「お前ーー」
名前は?
ーー私はーー
少女は泣きじゃくりながらも答える。男は静かに目をやるとため息を一つ吐き剣を腰に差し少女を肩に担ぐ。
ーーひっ!やめて!離して!
少女が叫ぶ。
我慢の限界だ。
「うるせぇ!死にたくなければ黙ってろ!」
男はそう叫ぶと少女を担いだまま地面を蹴る。
ただそれだけで男の体は空へと舞い上がり男は屋根へと着地した。
ーーえ?
少女は涙で濡れた顔で男の人背中に目をやる。
男は自分に向けられる視線に気づくが何も言わずに走り出す。
とにかく…今は此処から離れるか。このガキさえいなければ下の連中なんざぶっとばせるんだがな…。
男は移動しながらため息をついた。