UNKNOWN PROTOCOL -デジモンUP外伝-   作:宮塚慶

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Episode.2-4 撃滅竜タスクモン

「そんな! なんでシェルモンが!?」

 

 自身の愛する海の家を破壊しながら暴れるシェルモンの姿に、シオンは驚愕の表情を見せる。

 隣で同じく驚いた顔をしていたアルマジモンが、なんとか奮起して叫んだ。

 

「まずいよシオン! 助けないと!」

「……! そうだね、できる? アルマジモン!」

「やってみる!」

 

 既にパートナー関係が結ばれたかのような息の合い方で互いを鼓舞し、立ち向かう。

 アルマジモンが体を畳んで丸くなりながら突撃した。

 

「ローリングストーン!」

 

 その攻撃がシェルモンにヒット。

 しかし、背中の甲羅を向けて防がれてしまう。

 お返しとばかりにシェルモンから高水圧の一撃がお見舞いされる。

 

「ハイドロプレッシャー!」

「アルマジモン、避けて!」

 

 注意を飛ばすシオンだが、その声も虚しくアルマジモンは吹き飛ばされた。

 砂浜に叩きつけられ、ぐったりとしてしまう。

 

「大丈夫!?」

「うん……でも、凶暴化ってあんなに強くなるんだね。ちょっと驚きかも……」

 

 駆け寄るシオンに、アルマジモンは辛さを誤魔化すように感想を述べた。

 海の家を営業するシェルモンは元々温厚で戦いを好まない性格。

 なので凶暴化デジモンたちに店が狙われた際も対抗するのではなく、店を閉めてやり過ごすことを選んだ。

 本人も戦闘自体不得手だったはずだが、今の状態はとても手が付けられない。

 

「シオンちゃん! アルマジモン!」

 

 二人を心配するヒスイの声。

 続けて、ティラノモンが飛び出す。

 

「ファイアーブレス!」

 

 火炎の息吹が吐き出され、目の前のシェルモンへ直撃。

 しかし、それも体を引っ込めたシェルモンの殻に全て弾かれる。

 

「スイ! あの殻を突破しないと勝ち目がない」

「火力で押し切ろう! スキルカード発動! 『戦闘は火力!!』!」

 

 ヒスイはデジヴァイスを操作し、以前も使用したスキルカードに逆転の目を見出した。

 ティラノモンの体が赤く輝き、さらに威力を増した攻撃が放たれる。

 

「ファイアーブレス!」

「ハイドロプレッシャー!」

 

 炎の熱線に対し、シェルモンが水の一撃で対抗してきた。

 全力の火力が水により鎮火させられ、そのままティラノモンとヒスイを圧し潰す。

 砂埃と共に二人は弾き飛ばされた。

 

「きゃああっ!」

「スイちゃん!」

 

 様子を見ていたシオンが名前を呼ぶ。

 遠くへ墜落したヒスイは、彼女をギュッと抱き留めたティラノモンによって何とか意識を保っていた。

 それでも、身悶えしてその場から動けない。

 シェルモンの視線が二人の方へ向く。シオンは慌ててシェルモンの前に飛び出した。

 

「待って、シェルモン! ウチのこと分かる!?」

「グルルル……」

 

 焦点の合わないシェルモンの視線がシオンを捉え、その動きが一度静止した。

 行けるかもしれない。シオンは懸命に語り掛ける。

 

「助けてくれて、一緒に海の家を開いてくれて楽しかった! ウチ、シェルモンに感謝してる!」

「だ、ダメだシオン!」

 

 その無鉄砲な説得に、アルマジモンの方が危機感を感じていた。

 しかし彼女は止まらない。

 

「だから、正気に戻って! また一緒に海の家やろうよ!」

 

 両手を広げて、受け入れるようなポーズを取るシオン。

 だが、そこまでだった。

 シェルモンは大きく腕を振るい、そのまま地面ごとシオンを叩きつけようとしてくる。

 

「ガァッ!」

「っ!」

 

 シオンは慌てて飛び退いた。

 先ほどまで彼女が立っていた場所にシェルモンの腕がぶつかり、砂埃が視界を塞ぐ。

 思わず砂を払ったシオンに向け、シェルモンは叩きつけた腕をそのまま横薙ぎで振るってきた。

 

「嘘!?」

 

 一度は避けられたので油断していた。シオンが目を見開く。

 

「シオンっ!」

 

 彼女に直撃する寸前で、アルマジモンがその体を突き飛ばした。

 シェルモンの打撃がアルマジモンに正面からぶつかる。

 

「ぐあぁ!」

「あ……アルマジモン!」

 

 シオンが絶望の表情を浮かべた。

 

「う、ウチのせいだ。考えなしに飛び込んだせいでアルマジモンが……」

 

 足元が崩れるような感覚。

 ガクガクと膝を震わせ、今になって恐怖感が押し寄せてくる。

 アルマジモンのことだけではない。

 ヒスイとティラノモンも助けることができなかった。

 それ以前に、海の家から離れなければシェルモンの暴走を目の前で止められたかも。

 そもそも店を再開しようと言わなければ、悪目立ちすることはなかったんじゃないか。

 自分の興味や楽しみだけを優先し、周囲のことを考えなかったせいで。

 

「また、失敗したの? ウチは……」

 

 もう誰も傷つけたくないのに。

 

「シオン!」

 

 自棄になりそうだった彼女の名を、アルマジモンが呼ぶ。

 ハッとして視線を向けると、アルマジモンはよろよろと立ち上がりながらシオンをまっすぐ見ていた。

 

「君が来たおかげで、ボクたちはやる気を取り戻したんだ。この絶望的な世界でも、お店を開いて皆で笑顔になろうって」

「でも、ウチ……ワガママばっかり言って……」

「いいよ。君がそういう子なのは、ちょっとの間一緒にいただけで分かってるんだから」

 

 否定はしない。そんなアルマジモンの素直な感想に、シオンはフッと苦笑してしまう。

 アルマジモンも満面の笑みを浮かべた。

 

「だからさ、最後まで貫いてよ! シオンが今したいワガママは何?」

「ウチの、ワガママ?」

 

 そうだ。こんな時に自分を省みてメソメソしている場合じゃない。

 シオンは目の前で睨みを利かせるシェルモンへ目をやり、グッと拳を握った。

 

「……シェルモンを止めたい。敵わなくても、無茶でもなんとかしたい。それがウチのワガママ!」

「聞き届けたよ!」

 

 アルマジモンが力強く頷いた。

 その時。

 シオンの前に光の玉が飛び出してきた。ふわふわと浮かび、彼女の手の中に収まっていく。

 デジモン好きのシオンなら分かる。

 アルマジモンと互いの決心を確認した今、自分を導いてくれるものは。

 

「デジヴァイス! アルマジモン、行ける!?」

「無理でもやるんでしょ!?」

「ふふっ。もちろん!」

 

 アルマジモンはそのまま咆哮した。

 

「アルマジモン進化!」

 

 空から光の螺旋が舞い降りて、アルマジモンの体を埋め尽くす。

 巨大なエネルギーの波が押し寄せ、シオンの手にある緑色のデジヴァイスと呼応していた。

 次の瞬間、アルマジモンはデジヴァイスと同じ緑の体を持つ恐竜へと姿を変える。

 

「タスクモン!」

 

 成熟期デジモン、タスクモン。

 アルマジモンの時よりも鋭く逞しい視線でシオンを見た彼は、そのままシェルモンに向けて飛び込んだ。

 

「ホーンドライバー!」

 

 両肩の角を向けて突進。

 が、シェルモンは再び水撃を放って進行を妨害してくる。

 水に押し出されてタスクモンは前へ進めない。

 

「シェルモン! 君だってこんな戦いはしたくないんだろう!?」

 

 旧知の中であるアルマジモン、改めタスクモンが問いかける。

 その声にシェルモンは一度ピクりと反応したが、それでも攻撃を止める気配はなかった。

 進化して同格になっただけでは押し切れない。

 シオンはデジヴァイスを操作し、対抗策を探す。

 

「……ある。これだ!」

 

 先ほどヒスイがデジヴァイスからスキルカードを使っている場面を思い出し、見よう見まねで構える。

 

「スキルカード発動! 『ブーストチップ』!」

 

 液晶から飛び出したカードがデジヴァイス側面の端子にスキャンされ、そのままエネルギーとなってタスクモンへ放出された。

 文字どおりブーストされた力で、タスクモンは水圧を押し切ってシェルモンを強襲する。

 が、角の攻撃がぶつかる前にシェルモンは殻の中に閉じこもってしまった。

 ガキンッ! と刃がぶつかるも、ダメージを与えられない。

 

「待ってタスクモン! そのまま!」

「分かった!」

 

 シオンに言われるがまま攻撃を止め、タスクモンは立ち止まる。

 静寂。

 やがてゆっくりと、殻からシェルモンは顔を出した。

 

「殻の中だと視界が確保できない。攻撃が止めば、またすぐに顔を出すと思ってた!」

「そうか! なら――」

 

 タスクモンがその拳を構える。

 シェルモンをしっかりと狙った一閃が、そのまま顔面を捉えた。

 

「パンツァーナックル!」

 

 殻に防がれない完璧なタイミングで、シェルモンを殴り抜ける。

 勝利。シオンとタスクモンは互いに視線を交わして微笑んだ。

 

 ◇

 

 気絶し、ホログラム粒子の剥がれたシェルモンがようやく目を覚ました頃。

 すっかり日は落ち、海岸には真っ赤な夕日が浮かんでいた。

 

「シェルモン、起きた?」

「シオン? アンタ、グリーンシェードに行ったんじゃ……」

 

 目の前で心配そうに見つめるシオンへ疑問を向けるシェルモン。

 それから、シオンたちは事の顛末を説明した。破壊された海の家について話すのは心が痛んだが、隠しても意味のないことなので全て明らかにする。

 シェルモンも驚き戸惑っていたが、話を聞き終えると納得したように頷いた。

 

「店は建て直せばいい。最悪、ビーチパラソルと調理器具があればそこはいつだって海の家さ」

「ふふっ。シェルモンってば頼もしいね!」

「でも、アンタたちには悪いことをした。自分が暴走したなんて、今でも信じられないよ……」

 

 シェルモンは反省したように体を縮める。

 すると、店員として共に働くデジモン――サンゴモンとガニモンが口を開いた。

 

「そのことなんだけど、一つ気になることがあるんだ」

「どうしたの?」

 

 シオンが問う。

 

「シェルモンがおかしくなる直前、お店に人間の女の子が来たんだよ」

「人間!?」

 

 自分たち以外の人間。その存在に、ヒスイも驚いて話を聞く。

 もしかするとジジモンが召喚した他の救世主かもしれない。そうであれば、保護して状況を説明しなくては。

 

「でも、その人間が来てすぐにシェルモンが暴走しちゃって……」

「その子は? 巻き込まれたの?」

「いや、気づいたら彼女はいなくなってたんだ」

 

 サンゴモンとガニモンも状況を把握し切れていないようだ。

 それでも、人間が此処に来ていた。それは次なる目的ができたということでもある。

 

「じゃあ、ジジモンに話を聞いてからその子の手がかりを探そう」

 

 ヒスイが号令をかける。その言葉にティラノモンも同意した。

 新しい旅が始まる。

 その前に、シオンとタスクモンはシェルモンへ挨拶することにした。

 

「そういうワケで、ウチらは世界を救う素質がある者? らしいんだ。シェルモン、また留守にするけど大丈夫?」

「アンタたちなら、もっと多くのデジモンを助けられるよ。行っておいで!」

「ありがとう、シェルモン!」

 

 お世話してくれたシェルモンに送り出され、旅立ちの覚悟が決まるシオンとタスクモン。

 ホログラム粒子の影響で突如暴走する現象には、今のところ対抗策のようなものもない。

 シェルモンたちも安全とは言えないが、それ以上に各地で困っているデジモンがいるだろう。

 一同は調査に向けて今一度決起するのだった。

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