カンカンと鳴り響く踏切。
黄色と黒の螺旋に塗られた遮断棒。
澄んだ空気の中、線路特有の景色が目の前にあった。
季節は冬に変わろうとしており、暖かくもあるが寒さも出てきた頃。周りの木も、赤や黄色の葉をパラパラと散らして衣替えをしていた。落ち葉が線路のバラストの上に乗り、焦げっぽい茶色だったのが鮮やかな赤や黄色に塗り替えられていく。ただの学校の帰り道に彩りが加えられた。
そんな様子を観察していると、右からガタンゴトンという音が聞こえてきた。電車が間もなくやってくる合図である。
いつものことだったので、いつものように音を聞き流して家に帰った時のことを思い浮かべようと思考を張り巡らせようとした時、視界に動くものがあった。よく見てみると、それは幼稚園児と思わしき小さな子供だった。しかも、後ろには急いで追いかけている母親らしき女性が。あのままでは、母親が追い付かずに子供が轢かれてしまう。
思考よりも先に身体が動いていた。
子供を咄嗟に突き飛ばし、それと同時に右腹に鈍い痛みが走る。死に際の景色がスローモーションになって、ゆっくり流れ───視界に白い光が迸った。
────────
「……うあああああああ?!……………へ?」
俺の名前は
今は死者蘇生した高校生だけどね。
子供を庇って死んだと思ったら……なぜか暗闇に。一体ここはどこなのだろうか。
というかそもそも、なぜ俺は生きているんだ……?腕も足も問題なく動くし、電車がもろに追突した右腹になんら異常はない。逆に、少し体が軽くなった気がする。眠っていたから疲れが取れただけかもしれないが。
自分の身体に多くの疑問を持ちながら、座っていた身体を立ち上がらせる。暗闇だったので埋葬されて棺桶の中かと思っていたが、靴の音の反響具合からして広めの、鉄でできた部屋のようだ。
出口はどこだろう。
そう思い、辺りを見回す。後ろを振り向いてみると、そこに光の漏れ出ている隙間があった。細長い光は長方形を象っていて、明らかにそれがドアであることを表している。
そこに向かって歩みを進めた。取っ手を手探りで見つけ、下にぐっと押すと、ギィという金属同士が擦れる音が部屋に反響する。
金属の重みがよく感じられるドアを押し、ゆっくりと開いて行く。光の入ってくる量が比例して多くなり、眩しさに目を閉じた。
目が光に慣れ、徐々に視界が広くなっていく。
そうして、見えた景色は────
「……は?」
────果てしなく広がる、砂漠だった。
「一体ここは……どこなんだよ……」
今の気持ちを表すのに、絶望という言葉がよく似合うと思う。せっかく生き返ったのに、生き返った場所が砂漠……飴と鞭の差がすごい。
水平線まで続く砂漠から目を背けるために、辺りを見回す。俺がさっきまでいた鉄でできた部屋は、まあまあな大きさの四角い箱状の、まるで部屋だけを転送してきたかのようなたたずまいの建築物だった。
さらに周りを見回していると、今いる場所から左斜め遠くに工場のような建物があるのが目に入った。かなり大きく、俺が目覚めた鉄の箱の数倍はあるだろう。
「……行ってみるか」
他に行く当てなんてもちろんなかったので、とりあえずそこに歩いていくことにした。
「砂って歩きづらいなぁ……」
愚痴をこぼしながらもやっと辿り着いた。目の前に広がる工場の大きさは、あの鉄の箱の5倍はあるであろうサイズだった。
入り口を探すために壁沿いに歩いていく。空は快晴で、俺の気分とは真逆だ。
晴れた空を見上げて、空に憎しみを募らせた。
……待て、なんだあの丸い線は。あんなもの、地球で見たことないぞ?
俺が意識を失っている間に、何かあったのだろうか。それとも、ここは地球じゃないのだろうか。
ここで目覚めてから疑問が尽きない。もはや、ここが本当に地球かどうかも分からなくなってきた。
……とにかく、一旦工場に入ってみよう。
壁伝いに歩いていると、ドアノブの付いた扉を見つけた。錆びも付いておらず、まるで新品のようだった。もしや、最近新しくできた工場なのだろうか。その場合、中に人が居るかもしれない。
快晴な空を憎む気持ちが薄れていく。
ドアノブを捻り、ドアを開けた。
「すみませーん!だれ…か…………え」
工場の中に、人は誰も居なかった。
そこにあったのは────
人型を模った、鉄の兵器だった。