年内に完結させたい所感であります。
◆◆
…私の足取りは覚束なく、地面を上手く認識出来ません。
熱く激って震える手の先を操り、ポケットにスマホを突っ込んだ時には、私は既に寮内に到着し、またふとした瞬間には自室の扉に手を掛けていました。
絶えず迫り来る激情に視界を揺さぶられながら、私はベッドに倒れ込みます。
「〜…!」
意味を伴わない声が枕に溶けていきます。
こうやって枕に顔を埋めていると、くぐもった心臓の音が五月蝿く聞こえる。
それがなんとまぁ、心地の良いことか。
「フフフフフ…」
鼻歌混じりにカーテンを閉め切り、部屋の電気も消して。
そうして誰にも見つからない様にハットを脱ぎ去って、もう一度ベッドに飛び込みました。
胸中をを占めていた傷心はどこへやら。
この気持ちをなんと言葉にしたら良い物か。
あの正実の長たるツルギ先輩から、恐れ多くも制服屋の案内に加えて、『ありがとう』の言葉。
認められた、他ならぬ彼女に。
承認欲求の満足、自己肯定感の補強、賞賛の渇きの充足。
それが汚い欲望だと分かっていても、迸る感情を抑えることなど出来ようか。
万感の思いに震えて、未だに指がうまく動かせません。
「…明日…ツルギ先輩と…フフフフ」
手が伸びるのは、ハットを脱ぎ捨てて顕になった角。
先が僅かに赤みを帯びた漆黒。
ケアをする時間も取れず、節々が角張り、僅かにざらついています。
貴女は、この角を受けて入れてくれますか?
「…大丈夫、ですよね」
疑いは、どうやっても晴らせません。
一片の曇りを残して、しかしそれを考えずにはいられない。
やはり、私は。
失望が、軽蔑がどうしようもなく恐ろしい。
評価を、信頼を積み上げるごとに、その恐怖は膨れ上がっていく。
おかしな話です、恐怖を乗り越える為に、信頼を積み重ねていると言うのに。
コハルも、先輩達も、他の皆も。
大丈夫、きっと大丈夫。
そう言い聞かせて、私は布団を被ります。
頭の中にはあの手紙が、『許さない』の文字が焼き付いて離れません。
忙しなかった筈の指先は、夜の冷気によって既にその熱を奪われていました。