「君は平穏が好き、でもそれ以上に面白い事も好き。だからこうしないかい? ここで私を見逃してくれれば、その代わりに必ず面白いものを見せると約束しよう。縛りを結んでもいい」
淡々と、それが受け入れて貰える自信でもあるかのように呪力を振り撒いて子供の意識を飛ばして。
「正直言って諦めようかとも思ったんだよ。呪霊操術に特級呪霊、天元の因果も無くなって条件は揃ったものの六眼は無下限の抱き合わせだしそれ以上に変なのが出てきたからね。でもどっちかというとこっち側でしょ? 君。禪院の次期当主を見れば分かるよ」
その他に気配は無し。結界術のエキスパートだけあって、勝手に何か来るという事も無いだろう。
「ふぅん、遺言はそれで大丈夫?」
「困ったな、そう来るか……何が問題か聞いても良いかい? 擦り合わせで解決出来るならそれが1番良い」
「お前のギャグセン」
「は?」
ピキり、というよりは単純に意図が汲めなかったのだろう。お前の運命の人は今頃もう売れないピン芸人やってるんじゃない? 元相方でも乗っ取ってコンビ組み直せば良いと思うよ。
「笑いのセンスっていうかぁ、音楽性? 違うんだよねぇ」
「……なるほど、それはどうしようもないね……参考までに、どうしてそう思ったんだい? これが初対面の筈だが」
「もう活かす事も無いから参考も何も無いでしょ」
ぶっちゃけ一億総呪霊とか夏油とどっこいの文明破壊じゃんね。可能性が云々とか言ってるけど、自分が関わって極力デカい事したらオモロイんじゃない? みたいな思想が嫌。とにかくメントスとコーラの量増やせば良いと思ってる人気の無い配信者かよ。
みみななちゃんに指一本云々言われた時の宿儺の気持ちってこんな感じだったのかな、位の。それが目上の相手にものぉ頼む態度かぁ? みたいな。じゃ、死のっかってなる感じ。
「……この通り、見逃してもらえないだろうか」
そう思っていた所で。空中3回転の捻りを加えた見事なジャンピング土下座をかまされて……いや、違うっ! コイツこの土壇場で土下寝を敢行しやがった……! クソっ、なんだやれば出来るじゃないか!
「えぇー♡ あれだけドヤ顔でプロファイリングしておいてぇ♡ ハズして最後にするのがみっともない命乞いなのにぃ♡ そぉんな態度しちゃうんだぁ♡」
「お望みならこんな事も出来るよ」
反転術式により空中に浮遊しながら頭を下にしてコマのように回り始める。首を上手いこと使うせいで常にこっちを向きながらの高速スピン。ご丁寧に手の位置は半分くらいこっちに土下座するような感じでキープしているので、言ってみればこれは高速回転土下座だろう。なんだよ高速回転土下座って。
「訂正するねぇ♡ 案外ギャグセン高いじゃぁん♡ もぉ、しょうがないなぁ♡ 今回だけだよぉ♡」
「いやぁ、助かるよ」
くすくす、ははは。先程までの緊張が嘘のように楽しげな空気感。こいつ追い詰めたらどれくらい引き出しあるかな。やっぱり人間ちょっと詰めた方が良い味するんだよなぁ。
「それじゃこれをっと」
「ふぅん♡」
つみきちゃんを始め、その場に居た何人かに呪物を入れたりマーキングをして。なるほど、肉体や呪力を見ても残穢どころか呪いだとしか分からないよう余計なものでカモフラするんだ。うへぇ、そのミイラってもしかして子宮とかか? きっしょ。
「ふぅ、いやはや、他者との縛りっていうのは面倒だねぇ。こんな綱渡りにも挑まなきゃいけないんだから」
「回避しようとすれば出来た綱渡りで足滑らせて、股の間を強打しちゃった人が言うと説得力あるぅ♡」
「君の笑いのツボがなんとなく分かってきた気がするけど、そうやって狙いに行くほど滑りそうだ」
ウケ狙いの気持ちが先走っちゃうネタって滑りやすいよね。あと面白いだろーって押し付けてくる割におもんないネタとか。逆にうっかり天然の失敗とかマジでウケる事多いよな。こんな風に。
ぞぶりとつみきちゃんの
「んっ♡ くぅ♡ こくん♡」
しかりと飲み込んで。……なるほど、結界術で表層を封印した情報体……物理的に存在すると同時に物理的な物質では無くなっているのか。実在性と非実在とはいえ正負の重ね合わせは虚式にも通じるもの感じるが、なるほどコレが破壊不能の理由かな。で、取り込んで封印を解けば『中』という概念を侵食するように取り込まれる、と。
「ここで殺さずに見逃してあげるでしょぉ♡ おねぇに何かするのを黙って見逃してあげたでしょぉ♡ それから、呪霊操術については無干渉でいてあげる♡ これで3つ。土下座はおまけしてあげて2回分、それからその顔でピッタリだねぇ♡」
「……いやはや、まぁ縛り自体はクリア出来ているから良いしお釣りが来るんだけど、えぇ……これは一本取られたなぁ……」
上手く行ったと思った矢先に裏切られた感じの間抜け面って面白いよな。何処まで何を知られているかも分からない猜疑心、軽い恐怖に汗まで浮かべててマジで笑える。どうした? もっと笑えよ。
「くすくす♡ どうするぅ? もう少し取引していくぅ?」
「……やめておくよ。お札だって3枚までと相場が決まっているからね」
「あっ♡ 人の事妖怪扱いして酷いんだぁ♡」
「ははは、これは失敬。じゃ、私はこれでお暇するよ」
すたすたと早足に去っていくじゃくちゃんを見送る。あいつやる事多いし全国飛び回っててバイタリティ凄いよな。犯人の事件簿並みに忙しそう。
……さぁて、つみきちゃんはどうしよっかな。めぐみくんの顔が面白そうだし一旦このままお出しするかぁ!
理不尽な理不尽が恵くんを襲う……! ショックのせいで普通に原作と同じ感じの恵くんになります。あまりにも邪悪な妹が居るけど……じゃくちゃん相手の初手塩対応は自分に害を為せる可能性のある相手だと認識していたからですね。なりふり構わない土下寝の時点で脅威判定が無くなったので態度が緩くなっています。
昏睡時期ですが、原作では中3に上がって間も無くとあるもののその時にまだつみきちゃんが中学の制服を着ている、肝試しが原因等を鑑み正確には3月ごろのもう上がるの確定してるし上がったって事で良いだろ説を採用します。いやまぁ何が変わるって言ったら特に何も変わらないですが……進学とか就職とかどうなってたんでしょうね。
おまけ話ですが、顔しわしわにして縫い目解きながら上の口で「……こむぎ?」って言われてたら大爆笑しながら全面協力するルートに入っていました。キメラアント編完結2011年ってマジ?