何もかも記憶している訳では無いものの、有名な作品であった呪術廻戦のシナリオはなんとはなしに憶えている。確か芸人に満足させられた混沌厨が余計な事しまくるお話だったか……
とりあえず主人公が同い年だという事と、本来の流れで言えば小学生になった兄の前に白髪グラサンの人格破綻者がやってくる事は憶えているので許して欲しい。後はもうやたら人死にが出やすい世界観だという事と、戦闘力上位層相手だと本気で初見殺しとか分からん殺ししてくるって事だけ覚えておけば良くない? ダメ? ダメかなぁ……
ダメっぽいなと気が付いたのは、母親まで蒸発してから1月程度の頃だろうか。碌に家事も出来ない子供……というにはまぁ割と家事の出来る義理の姉がいるものの、それでもやはり子供であり。いやはや、通帳やら最低限の生活費だけは残ってたり、綺麗な蒸発だ事で。
本来の流れに比べてストレスの原因が1人増えていたにも関わらず、失踪する時期が変わらないというのはなんだか不思議な話だなぁ、なんて惚けてみる。
果たして禪院という家が関わっているかはさておくとして、少なくとも子供2人であればかろうじて2〜3年は生きていけるだろう金だけが残っている状態に。引き取り手などは存在せず、行政も声を上げなければ介入はしない。
「というわけでおねえ、おにい。役所に相談するべきじゃないかな?」
「は? やだ」
「もう、恵ったら……でも、お姉ちゃんも反対かなぁ。だって施設って家族バラバラにされちゃうんでしょ?」
7歳にしてはやたらと賢い義理の姉と、何もかも信じられないとでも言わんばかりの全てに対して髪型みたいな刺々しい態度の兄。行政に助けを求めようにも、身内が反対となれば勝手にするわけにもいかず。
「それに、パパだってママだってきっと帰ってくるもの、ちゃんとみんなで待ってなくちゃ」
「……」
子供を放置して、何処に行くのか言いもせずに1月。これが高校生の1人息子とかであればエッチなゲームあるあるとでもいうべきだろうが、小学校に通いたてのケツの青いガキだとすればないないでしか……いや、まぁこれまでも1週間程度なら平気で居なかった事を考えれば、その程度はあるあるなんだろうか……
よしんばあるあるだった所で、我が兄上がどう思うかについては一切影響を与えないのは言うまでもないので、結局の所そんな事はどうだって良い、重要な事じゃない。
重要なのは、おそらく近日中に恵くん(6)の前にグラサン白髪の不審者がやって来る事であり、その時私を観てどのような反応をするかという事である。
およそ2年前、存在を自覚した私の術式。名を『転輪呪法』。当然のようにとくさのなんちゃらなる兄上の術式とは異なり、投射呪法なるドブカスの術式とも違う
果たして六眼とやらが何を何処までどう見通せるかという話であり、確かパパ上をぶっ殺して最強に御成りあそばせた人格破綻者殿は術式すら見て判別していたような記憶もあるが故に警戒はせざるを得ないというものだ。
……いやまぁ、縫い目相手に魂的な勘が無ければ見抜けなかった事を考えれば大丈夫な気もする。所詮私が存在しなかった世界線の凡夫よ。まだ無抵抗の段階でうっかりぽっくりしかねなかったパパ上の方が怖かった。
じゃあ変な事しなくてもちゃんと恵くんのおかげで金持ち五条の庇護を受けれるな。勝ったぜガハハ。10年位のんびり気ままに生きさせてもらいますわ。あーあ、あとちょっと頑張っていれば一緒に楽に生きていけただろうに。おいたわしや母上殿。