「という訳で、幸さんにはどうかご足労いただきたく……」
「えぇー、別に等級とか要らないんですけどぉ。っていうか、小学生相手にそんなもの渡して、お仕事でもさせたいんですかぁ? じゅじゅつきてー? っていうのがあるのは知ってますけどぉ、それって憲法より優先されるんですかぁ?」
「いやはや、その、えぇと……」
何日かして。翌日辺りに白髪に連行されるかなぁと思っていたのだが、組織としてはやたらと早いレスポンスで幸と影の薄そうなメガネがやってきた。伊地知さんとは別の仕事出来なさそうな七三分けのザ役人という感じの男。
呪術総監部とやらが存在していて政府の中にあるという話はうっすらと憶えているものの、実際にどのような形態で運用されているとか、窓というのがあるのは知っているがどういうネットワークなのかとかは知らない。別に組織運営物語じゃなかったからね、原作。
そんな所からわざわざありがとう、じゃ帰って良いよ。そう言いたい所ではあったがわざわざ学校の放課後、先生経由でお呼び出しされてしまったので話を聞いた所どうも色々と騒ぎが起きていたらしい。
まぁ個性社会でトップヒーローが負けるよりは影響少なさそうだが、五条悟が敗北を喫したとなればそれなりに大きな影響もあるだろう。その相手が未だ小学校入りたての6歳児ともなれば尚更。
「五条さんも何度か襲撃を受けたらしく、総監部としては務めて早急に事態を収束させたいと……」
「あわよくば便利な手駒も欲しいって顔に書いちゃってるの、いけないんだぁ♡」
顔色を悪くするなよ、余計に信憑性が増すだけだぞ。まぁ小学生のガキなんぞどうとでも出来るというのは基本的に同意できる意見だが、それ白髪のガキ相手にも同じ対応したんか? バックの家が御三家か有象無象かで判定してない?
自分達に楯突くクソガキを抑えられる手札が手に入りそうともなれば欲も出るだろうけれど、別にしてやっても良いんだぞ? 国家転覆。卓上調味料をひっくり返す程度の気軽さで。その後の事考えたらやらないだけで、不利益が大きくなり過ぎるなら一旦袈裟着た塩顔に力添えしたって……いや、アレはどうなんだろうな……
「はぁ……ま、良いよ。で? 直接えらぁい人に会いに連れて行かれるの?」
「そのぉ、一度実力を確かめたい、との事で1級呪霊の討伐にご同行いただきます」
「ふぅん、別に良いけど、場所は?」
「東京近郊の村落で、ここから2、3時間ほどでしょうか」
「そういうのいいから、地図で見せてくれますぅ?」
「えぇっと……ここですね」
便利なスマホどころか携帯も持ち合わせていないこちらと違い、ガラケーながらも地図位出せるものをきちんと持っている役人風。というか富士の樹海じゃんね。
「そ、じゃあ立ってぇ」
「えっ、はい」
「はい到着ぅ」
手をぱんぱんと叩いて。あぁ、靴を履き替え忘れていたな。上履きが汚れないように多少の細工をする。
「えっ、はっ? しゅ、瞬間移動……? なるほど、すごい術式だ……」
「残念だけど違いますよぉ♪ で、詳しい場所はどっちですかぁ?」
「えぇっと……ちょっと電波が無いので……」
道案内も出来ないタイプの無能を晒されたと見るか、最初見た通りの印象で面白いと見るか。そういうものの見方って人生で大事だと思うんだよね。私は後者、だってイライラしたところで無駄なら楽しんだ方が良い。
「上から見たら分かるぅ?」
「上ぇぇぇぇぇぇえええ!?!?」
逆ジェットコースター。ある程度の高さまで上がったら床を固定して。空中展望台なら有ってもガラス張りの床は無いかもしれないし、高さが段違いなので多分稀有な体験だぞ、喜べよ。なんだ泣きそうなくらい嬉しいかそうかそうか。
「ほらぁ、ここからでも分かんないならもぉっと上の方にぃ」
「あそこです! あそこのちょっと色が違う所に村があってそこから1キロ位離れたあっちの方に呪霊が観測されています!」
人間必死になれば出来るものだ。縫い目のやつもこういうのが見たくて色々やっているんだろうな。ぱんっと音を立ててみれば、すぐに目的地に到着。
「結界はこのまま広げちゃってぇ、外から観測出来なければなんでも良いでしょぉ?」
「これは……帳? それにしては真っ白だ……それに呪力というより、まさか反転術式!?」
人の認知が出来ないようにさえするなら、別に正の呪力でも可能であり。反転術式で帳を作れば、結界内の3級以下の呪霊なら問答無用で蒸発する便利な虫除けにするのも容易く。生活圏内にハエみたいなのが飛んでるとか嫌じゃんね。
「ほらほら、苦しくなって出てきちゃったんですねぇ♡ 鳥のくせに最初から燃えてるなんて食べて欲しいんですかぁ?」
『この不快な結界は貴様かぁ! 疾く燃やし尽くしてくれよう!』
「これは、不死鳥!? こんな呪力量、1級どころじゃ」
へぇ、不死鳥。すごい大層なんだねぇ。元々呪霊なんて呪力があれば頭だけでも再生出来るのにそれって意味あるんか? ただの燃えてる鳥だろうに。そもそも呪霊だという時点で私の脅威足り得ない。
「ないで……す……が、反転術式の、アウトプット……」
「喋れて燃えるだけの害獣でしょぉ? メッってしたらおしまいですよね♪」
出来る人材で言えばもう居るだろ。どの程度の呪力量かとか、どの程度の射程かは知らないけれども。将来的に目の下の隈とか酷そうな……しょこたんだっけ?
「1級だろうがぁ、特級だろうがぁ、呪霊ってだけで特効の確殺手段があるなら全部ざぁこですよねぇ♡ こんなので実力を測るとかぁ、呪術師の人ってみんなよわよわなんですねぇ♡ かわいそぉ♡」
簡単だろ。一回死んでみるか生まれ変われば理解できると思うんだが、呪力をギュッてして正の呪力にした上で、にゅーって出したりびゅって飛ばすだけだぞ。精子飛ばすより簡単だわ。なんせ今の身体じゃ無理だからなガハハ。
最悪のモラハラセクハラジョークは一旦腹の中にしまっておいて、学校の応接室へ戻る。
「あ、戻ってきた……」
「あぁ、もしかしてさっきの場所に置いてきた方が良かったですかぁ?」
「い、いえいえ大丈夫です! それでは私は報告がありますので、また後日別のものがご案内に伺うと思います」
「えー、おじさんで良いよぉ? ほらじゃあ、またねぇ♪」
嫌そうな顔するなよ。美少女に会えて嬉しいだろ。
「はっ、僕が誰かに負けたからって、別に僕が弱くなった訳でもお前らが強くなった訳でも無いでしょ」
有象無象「「「グワー!」」」